雨の降った誕生日
高校の卒業式に「頼りがいがない」と振られた主人公。そんな主人公が自信をつけるために大学生活でいろんなことに挑戦していく。今回はなんと主人公の誕生日。しかし、天気はあいにくの雨でなんだか不吉な予感がする。
⚠かなり暗い描写を含みますのでご注意ください。
「せっかくの誕生日なのに、雨が降って残念だな。」翔は玄関の扉を開け、僕を招き入れながら言った。
「そうだね。お邪魔します。」翔の家の広さに驚き、少し緊張しながら言った。
僕は今日、誕生日ということで、翔の家に招いてもらった。梅雨生まれの僕の誕生日は、いつも雨舞台であまり好きじゃなかったけど、今日は翔に祝ってもらえるということで楽しみにしていた。
「手土産として、お饅頭を買ってきたんだけど、ご両親は?」使い古したリュックから翔の両親に渡そうと買ってきた安物の饅頭を取り出して尋ねた。
「ああ、夜まで両親二人とも仕事でいないから、俺が渡しとくな。自分の家だと思って自由にしていいから。」翔は饅頭を受け取り、大理石で作られたキッチンに置きに行きながら言った。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」緊張が解けた僕は、せっかくなのでリビングを探索してみる。すると、きちんと整理された棚の中にたくさんの賞状やメダルが保管されているのを見つけた。
「これは何?」僕は賞状を指さしながら、聞く。
「それは、俺がサッカーとか、習字でもらった物だな。あとは……」翔は説明をする。賞状の山を前に、越えられない高さを実感し、僕の心を何かが渦巻くのを感じた。
僕はその感情に気づかないふりをして、翔と最新のゲーム機で遊んだり、誕生日ケーキを食べたりして、
時間をつぶした。疲れた体をふかふかのソファーに沈めると、翔が部屋から何かを取り出して来て言った。
「誕生日おめでとう!これ誕生日プレゼント。」翔は、ラッピングされた箱を僕に渡す。
「ありがとう。開けるよ?」翔に感謝を伝えながら、箱の中身を確認する。すると、高級そうな青色のシルクのハンカチが出てきた。
照明の柔らかな光を受けて、青色のハンカチは静かに輝いていた。けれど、その青は、不思議と澄んだ水のようで、冷たい感触がした。
「こんな、高そうなの受け取れないよ。」翔にもらったハンカチを突き返す。
「いいんだよ。実は俺、『医者の息子』でお金に困ってないから。でもこれはバイトして……」
翔は、恥ずかしそうに笑いながら僕の前にハンカチをもう一度差し出す。でも僕は翔の『医者の息子』という言葉を聞いてから、もう笑えなくなっていた。
「翔はいいよね。チートキャラみたいで」劣等感に支配された僕から、我慢していた言葉が洩れ出る。
「生まれながらにイケメンでお金も持ってて、運動もできて、才能が有って……僕のこと協力したいって言ってたけどほんとは馬鹿にしてんじゃない。」
「お前、どうしたんだよ。」翔から笑顔が消え、困惑の表情を浮かべる。
「気付いたんだよ。大学生になって、インスタとかサークルとか挑戦してみたけど結局、翔が凄いだけで。才能がない僕なんかが努力しても全部無駄なんだって……」涙ながらに吐き捨てる。
「無駄なわけないだろ。お前が挑戦していること自体が、すげえことなんだよ。」翔は僕に向かって必死に訴える。でも、この時の僕に、翔の気持ちは届かなかった。
「翔は自分自身に絶望して、眠れない夜を過ごしたことはある? 翔に僕の気持ちは分からないよ。もう僕に構わないで」
涙ながらに目の前のハンカチをたたきつけ、家を出て行った。僕は雨でずぶ濡れになっていることも気づかずに、無我夢中で走った。家に帰っても今日の雨は、一日中降りやむことはなかった。
まずはここまで読んでいただきありがとうございます。
今回は「才能」や「劣等感」をテーマに書きました。かなり暗いシーンがあり、泣きながら書きました。
これから、主人公と翔は仲直りすることはできるのか?次回もお楽しみに




