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54.虹追人(にじおいびと)は夢を捨てた
雨が上がった
車のフロントガラスの向こうに
大きな虹が見えた
ずっとずっと
虹に向かって
ひたすら真っ直ぐ
車は進む
けれども
距離は縮まらない
虹の麓には
宝が眠ってるなんて言うけれど
追えども追えども
たどり着かない
最初から埋まってなんかいないのに
一体 どこの誰が 吹聴したのだろう
車は走る
私を乗せて
運転手は何も話さない
私も何も話さない
何もない空間
言葉も何もない空間
冷めきってしまって
そこにあるのは
ただの依存
もう諦めた方がいいんだろう
ずっと夢見てきたけれど
きっともう 永遠に夢にはたどり着けないから
「じゃあね」
虹は消えていた
もう 追うものは無くなった
君との未来は
もう無くなったんだ
さようなら
儚い虹色
結婚に憧れていた。そんな時期もあった。




