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44.下がる視線

異様な光景だった

私もその一員なのだけれど

それはとても異様な光景


電車の出発時間まで

画面を見ながら時間を過ごしていた


両耳にはワイヤレスイヤホン

しかもノイズキャンセリング付き


ガタンと車体が揺れて電車は出発した

そこでふと視線を上げた


なんだかゾワりとした

言い難い何かが背中を這っていく


乗客は皆 視線が下を向いている


どこかで見た光景だった

どこだっただろうか


あぁ そうだ テーマパークだ


皆 現実世界を忘れて楽しみたい世界のはずが

小さな媒体をせっせと動かして

予約を取るのに必死だった


あの光景もゾワりとした

楽しむはずの空間のはずなのに

デジタルに支配されているそれ


参考書を開く学生の姿も見えるが

中には電子書籍を眺める者もいる


なんだろうか なんなんだろうか

このデジタルに侵されていく感覚は


何でもかんでもデジタル デジタル

当たり前のように広がるデジタル

あれもこれも 全てがデジタル


なんだか疲れる世の中になったもんだな


やれやれと息を吐いてから

私はまた視線を下に向けた

あれもこれもデジタルの時代。色々な申し込みや変更、解約、オンラインでできますよっていうのが、私としてはあまりしっくりこない。手元に紙で控えがないとどうも落ち着かない。

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