43.季節の変わり目にはご注意を
ずび…
ズビビびっ…
延々と垂れてくる鼻水と格闘しながら
脇の下に体温計を挟む
やっちまったなぁ…
具体的な数字を見たら
余計に動く気力がなくなるのはわかっているが
流石にこの繁忙期 無理矢理出社して
後々 あいつのせいだと指を差されるのは避けたいところ
電子音と共に体温計を引っこ抜くと
38.2度
はいアウト 完全にアウト
仕方なく職場に連絡を入れる
上司はお大事にと言ってくれたが
本心は実際のところどうなのだろう
この忙しい時期にと 顔を顰めて舌打ちでもしているのか
いやいやいや 今日やらなければいけない仕事を頼んだのだ
猫の手も借りたいぐらい急がしいこの時期に
嫌な顔ぐらいするに決まっている
38度と具合の悪い数字を叩き出した事で
脳みそは休め休めと警報を鳴らして
体はずんと重かった
休みたいのは山々なのだが 薬が何もない
一人暮らしでの高熱程 心細いものはないし
40度なんて数字を今後もしも叩き出したとしたら
たまったもんじゃない
それならば まだ動けるうちにと マスクを引っ掴んだ
保険証
お薬手帳
財布
家の鍵
よし 行こう
ふらふらの状態での運転は避けて タクシーを呼んで病院へ
運転手にもしもこの体調不良がうつったら
ごめんなさいとしか言いようがない
薬を処方され
結果はインフルエンザ
職場へ電話越しで再度報告したものの 幻聴だろうか ため息が聞こえた気がする
申し訳ありませんと伝えたが ゆっくり休めの一言がやけに刺さった
コンビニで何日か分の食料や飲み物を買い込んで またタクシーに乗り込んだ
あぁ だるい あぁ だるい
お客さん大丈夫かい?と聞かれたけれど
菌が飛び散るからなるべく話したくはないし
何せ口を動かすのもだるい
病は気から
はっきりと原因がわかると 余計に具合が悪くなる
代金を渡す手も心なしか震えていて
やっとの事で自室についた時には 熱が上がっている気がした
冷蔵庫に適当に買ってきたものを突っ込んで
腹の中にこれまた適当にゼリーを突っ込んで
最後の力を振り絞って薬を飲み込んだ
もう寝よう よし寝よう だめだ寝よう
ふらふらとした歩みでなんとか寝室のベッドに辿り着く
バタンと倒れ込んで 枕に顔を埋める
やばいなぁ インフルエンザなんていつ以来だろう
息は熱くて 少しだけ目尻に涙が溜まる
カチカチと鳴る秒針の音 一人なんて慣れていると思っていたのに
今はとても心細い
不意にスマホが鳴った
何事だと手に取ると職場の後輩からだった
「食べたい物とか飲みたい物とかありますか!?」
慌てたスタンプも一緒に送られてきた
自分で買ったから大丈夫だと返信する
「仕事は任せてください!休んでください!」
なんとも頼もしく育ったものだ
先ほどまで上司はきっと嫌な顔をしているのだろうなんて思っていたけれど
後輩のおかげか 少しだけ心が軽くなった
ありがとうの意味を込めてスタンプを返して
そのまま瞼を閉じた
一人暮らしで熱出すと、なんであんなに辛いんだろう。
あ、昨日からちょっと風邪っぽいです。。。




