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第11.5話 旅立ちの前夜

アンリはついに人界へと旅立つ時が来た。

苦悩するアンリ。


そんな転生した一人の少年の一夜の物語

  魔界 ドラガルフォン朝魔界帝国帝都『アザルカント』 魔界帝国軍最高司令本部要塞 【ダインヘイム】

 帝国軍最高統制機関であり戦時になれば大本営が設置される城塞である。

 帝国軍最高司令部は帝国軍総帥にして大元帥である皇帝が統帥権を持ち軍令、軍政を統帥し軍の要職にある将軍達の助言を受け指揮・運用されている。

  有事は帝国軍大本営となる。

 現在の大本営構成員は大元帥たる皇帝リリューク、皇帝のもう1人の弟にして摂政元帥ミヒャル・サタンデモス= ドラグ・ドラガルフォン親王、帝国宰相 アガレシア公爵、内務大臣バルバトス、軍務大臣オロバス元帥、帝国軍統合参謀総長 カイム元帥、帝国軍統帥本部総長 セーレ元帥、全軍幕僚総監キマリス元帥、憲兵総監ロノエ上級大将、中央情報院最高統括官 マルファス上級大将、皇帝首席副官 アイゼル・マリード=ザルク・ヴァンティス中将の役10名と皇太子アンリマンとその配下あわせて5の計17人である。

  首席副官ヴァンテイス中佐以外とアンリの部下となったカガリ、アリッサ、メリッサ、リーネ以外はドラガルフォン朝帝国建国以前から帝国の中枢層に位置する【ゲーティア門閥】の当主である。

 有能で勇猛果敢な将軍から冷静沈着で奇計機略を弄する参謀であるが彼らは【魔族の中の魔族】を自称している者も多く互いに牽制することも多く軍議はあれるとゲーティア門閥であるがゲーティア閥には否定的なユノアの父 アガレシア公爵が愚痴をこぼしていた。

 確かに皇帝臨御の場であるため大本営軍議場で騒ぎ立てる将軍は居ないが緊張感が走っている。

  アンリも無関係では無い。

 今から6人で人界に赴くのだ、こうして大本営の議場に将軍の1人としてこの場にいる。

  自分たちが皇帝より与えられた使命だ。こなせなくてどうするんだ?

  転生前だったら誰かに頼って逃げていたかもしれない。前世は自分に勝ち目がない勝負はしないし投げ出すか誰かのアドバイスを受けてその通りにしていた。

 今は考えなければいけないんだ。


「大丈夫ですよアンリ様……」

「あ、ありがとユノア」


 アンリの緊張している気持ちが伝わったのかユノアが俺の手を握ってくれた。その手には強い決意を感じた。

 必ず成し遂げると強い意志が。


「これより陛下の勅令に基づき元皇族にして逆賊アンドレアスとその軍門に下った叛徒征伐のご奉勅を下します。地上征伐軍総司令官にして皇太子アンリマン殿下、陛下のご奉勅を賜ってください。」


 アガレシア公爵の声が議場に轟く。


「御意、アンリマン・サタンデモス=ドラド・ドラガルフォ、。逆賊アンドレアスとその一党の首を取って参ります。」


「うむ、アンリよ頼んだぞ。必ずや叛徒を討ち滅ぼしてくれ」


 父リリューク帝の声にもう一度「御意」とアンリは答えた。

 その声は大本営にいる将軍、大貴族、そしてユノアをはじめアンリの臣下には勇壮に聞こえたのか大本営司令部中から拍手喝采が聞こえる。


「さすが我らが皇太子殿下だ!」「帝国万歳!」「我らが魔族の誇りを汚す者に死を!」


 ーー逆賊とはいえ実の伯父を倒すことになるんだぞ。歴史上ではよくあるだが俺が自分の手で肉親を手にかけるのにここの連中(ヤツら)は喜べるんだよ…。


  アンリの心中は決して口には出せない感情で揺らいでいた。


「アンリ様!ユノアは共にアンリ様と戦えて嬉しゅうございます!」

  ユノアをはじめカガリ、メリッサアリサ姉妹、あの戦闘が嫌いなリーネでさえもアンリを称賛のまなざしで見つめている。

  そんな目で見ないで欲しい。賞賛もしないで欲しい、虫唾が走る。和やかな表情をした父と叔父 ミヒャル大公の顔を見た時は憎悪の気持ちで溢れた。

 ーー お前たちの実の兄弟を俺が手にかけに行くのに何で損表情が出来るんだ。


 形容しがたい思いがアンリの心に渦巻く。


「……そうか、ありがとうユノア。」


 それが湧き上がる許嫁の瞳を見つめたアンリが出せた唯一の言葉だった。


 ✦︎✦︎

  帝国に逆らう叛徒を倒しこ帝国を救済することが栄光と信じて親族同士でも平気で殺し合いをしてきた歴史をドラガルフォン朝以前から行ってきた魔界帝国だ。

 アンリの前世での趣味は歴史だ。日本史、世界史、マイナーと言われる様々な時代の歴史を調べ学んだ。アンリが秘術でこの世界の基礎知識を得て以降も自分でドラガルフォン朝とドラガルフォン朝以前の魔界帝国を調べた。アリサからも魔法を学ぶついでに魔界の歴史を学んだ。

  どのページも【弟が帝位簒奪を計り叛乱したため族滅】【兄弟同士の争いが多いため後継者と有能な男性皇族以外は処刑】等など永遠と続く皇族同士の虐殺の歴史は絶えない。


「アンドレアス叔父上を殺せなんて僕には無理だ。」


 アンリは1人自室で呟く。ユノアをはじめ仲間たちは明日の人界転生の儀式で忙しい。こんな時誰か自分を慰めて欲しい。前世でも困難があれば悪い考えばかり行き詰まり病んでしまい底に堕ちてしまう。

 前世からの悪い癖だ。ベッドに倒れこみまた悶々とする。明日が旅立ちの日なのにそんなのことも忘れてしまうほどに。


 コンコンッ。自室のドアを叩く音に続きメリッサの声がする。

「入ってもよろしいですか?」

「メリッサか?どうぞ?」

「失礼します」


 いつものメイド姿で灯りが消えたアンリの部屋にメリッサが入ってきた。いつもと同じ声色でアンリに話しかける。


「アンリ様、今は何も考えずメリッサのもとに体をお寄せくださいませ。」


 静かだがそこにはたしかにアンリを心配する口調だ。まるで姉がこれから危険な場所にいく弟を心配する様だ。


「大丈夫だメリッサ、俺は皇太子だ。叔父上、いや逆賊アンドレアスは必ずゥ!?」


 アンリのセリフを遮るようにメリッサはアンリに抱きつき頭を撫でる。


「無理をしないでください殿下、術式によって心の壁が読めなくとも私には読心術を嗜んでいるので少しは読めますし声色で分かります。逆賊となられたアンドレアス大公殿下はアンリ殿下の実の叔父上にあられます。陛下は本当は殿下にこのような汚れ仕事をさせたくないよう思われています。将軍の誰かに征伐させたいと思われています。ですが、アンドレアス大公殿下を倒せるのはアンリ殿下、貴方様しかいないからです!」

「俺だけしかいない……。」

 メリッサは強く激しい口調でアンリに自らの想いを告げた。その声は今にでも泣きそうな彼女の真の想いであろう。

 父であるリリューク帝は自らの弟を実の息子に手にかけさせるのだ。平静を装っているリリューク帝が容易にアンリの母であるドロテーア皇后に甘え泣き叫ぶ事も出来ない事を考えるとアンリの胸中は辛い。


「ユノア様へは今回わたくしの行き過ぎた行為はユノア殿下のお許しも得ております。アンリ殿下どうか身も心もわたくしめにおまかせください。」

「待ってくれ!?ユノアの許可?」

 メリッサがアンリの部屋に来るのは計画的なもののようだ。

 曰く、本来であれば『許嫁である私があの方の心を癒さねばなりませぬがアガレシア家の儀式をせねばなりませんのでどうかメリッサ様お願いします』とユノアに泣きつかれたそうだ。

 許嫁としての責務を果たす。おしとやかだが責任感とプライドが高い彼女が頼めるとしたら侍女頭のメリッサだけだろう。


  ユノアとメリッサの気持ちを察した、いや、仲間と両親の気持ちもだ。


  アンリの性格はみんなが知っている。それでも送り出すのはアンリの持っている能力(大帝権能)無くしてアンドレアスの叛乱を終わらせることが出来ないからだ。


「私もアンリ様には戦いなんて行かせたくはありません!ドロテーア皇后陛下も同じにございます!」


みんながこの戦いを早く終わらせたいしこの300年間は起きていない同族同士の殺し合いなんて嫌だし誰が親しい者を喜んで死地に送りたいものか。


「メリッサ…ありがとう。今日は僕と同じ部屋で話でもしながら寝ようか。前みたいにさ」


前と言っても3か月前になるが秘術を受けたアンリに【幼年時代】がないので仕方がない。


「ありがとうございます。アンリ様、このメリッサ安らかにアンリ様を癒して差し上げます。」


アンリとメリッサは布団の中に入り明日のことを考え互いの身を寄せ合い時に語らい時にはお互いの肌を触り人の温もりを知った。


そして静かになった。


逆賊(アンドレアス)を倒すための人界転生の日となる明日を迎えた。



 

久しぶりの執筆です!

本当はこの話で人界転移させようとしましたが上手く描写がかけずアイデアも降りてこないので間章を挟まして頂きました!

ちなみに夜のシーンは皆様の想像にお任せします

どうか新作を読んでくれたらうれしいです。

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