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光の神の宝具(2)


 王冠の隅々まで聖魔力を注いでいく。

 台座も金具もネックレス部分もすべて丁寧に。

 魔力が満ちると進化のイメージが浮かんでくる。

 それを見てギョッとした。

 お、大きい……!

 

「あの、これは本当に進化させて大丈夫ですか!?」

「大丈夫。元の姿に戻ったらすぐに聖魔法で封印する。光の神の宝具だから、影を生み出せない[リー・サンクチュアリ]の中でしかできない」

「なるほど、わかりました! いきます!」

「うん、よろしく」

 

 ソラウ様と顔を見合わせる。

 私ならやってくれる、という信頼が伝わってきた。

 光の中で、この人がそばにいてくれるなんて心強い。

 なによりこの人に寄り添ってもらっているというのが眼差しだけで伝わってくるというのが、胸の中に溢れてくる不思議な気持ち。

 先程、シニッカさんたちに襲いかかった大蜂たちが消えた金色の小さな煌めきが私の体から溢れてくる。

 イメージに流し込むように聖魔力を注ぐと、一メートルくらいありそうな王冠が現れた。

 ソラウ様は手のひらを王冠へ向け、呪文を唱えて四角い線の箱を生み出して宙に浮く王冠をしまい込む。

 さらにそれを大きな空間を作り出し、中に取り込んだ。

 

「上手にできたじゃん」

「あ、えっと……え、えへへ……」

 

 ソラウ様に、褒められた。

 嬉しくて笑う。

 でも、急に膝から力が抜けた。

 ソラウ様が咄嗟に肩を支えくれて、ソラウ様の腕の中に抱えられて顔が熱くなる。

 え? なに? なんで顔が熱くなるし、体に力が入らないの?

 

「あ、あの、なんで……」

「魔力が空に近いんだけど、いったいなににこんなに魔力を使ったの? 君の魔力量が空になるなんて、普通に考えてあり得ないんだけど?」

「え? 私、魔力なくなってるんですか?」

「うん、宝具への細工の前になにかした?」

 

 ソラウ様の顔が近いし、声も耳元で聞こえて暴れ出したくなる感覚になる。

 ゆっくりとソラウ様の顎を手で押し返す。

 

「ちょっと、なに!? なんなの!?」

「わ、わかんないです! なんか、色々ダメなんです、わかんないですけど! ソラウ様の綺麗なお顔と声が近くて、なんか、なんかー!」

「なんかってなにー!」

「形容しがたいです! 初めての感覚で、どう説明すればいいのかわからないです! 安心感もありますけれど、でもなんか、どうしたらいいのかわからないです!」

「ハアーーーーー!? 意味わかんないんだけどーーー!?」

「なにイチャイチャしてすんですか、叔父様、リーディエさん!」

 

 マーキア様の叫びに顔を向ける。

 イ、イ、イ、イチャ、イチャ……!?

 

「い、ぃいいイチャイチャとかしてないけど!?」

「叔父様、とにかくロキア様――あと、セエラ嬢の体調も確認してほしいです!」

「あー……そうね」

 

 面倒くさそうな表情。

 舌打ちしなかっただけまし、かなぁ?

 とか思っていたら、杖を消すと器用にマントを脱いで私をそれで包み、木の根元に横抱きにして運んで座らせてくれた。

 

「応援が来るから、ここでゆっくりしてて。王子と女生徒の体調を見てくる。魔力不足は休むしかないから、眠れそうなら眠っていい。[リー・サンクチュアリ]の中は安全だし、なにかが君を害そうとしたら俺が守るから」

「え、う、あ……」

 

 また、顔が熱くなる。

 これはいったいなんなのだろうか?

 心臓が痛いほど鳴っている。

 俯いて、消えそうな声で「はい」と答えるとソラウ様の体温も気配も離れていく。

 ああ、なんて失礼な態度を取ってしまったのだろう。私ってば最悪……。

 

「リーディエ様、大丈夫ですか!?」

「シニッカさん! オラヴィさん! お二人もご無事ですか!?」

「はい、大丈夫です」

 

 反省していたら、二人分の足音が近づいてくる。

 顔を上げると安堵した表情のシニッカさんとオラヴィさんが駆け寄ってきた。

 お二人とも怪我もなさそうで安心する。

 

「ソラウ様が助けてくださいました。今は魔力が空に近いらしくて休んでいろと言われています」

「そうなんですね」

「ロキア様方も無事に見つかったんですね。お怪我などされていなければいいのですが」

 

 オラヴィさんが心配そうな眼差しをソラウ様の方へ向けた。

 マーキア様が抱えて目を覚ましたロキア様は、頭を抱えてソラウ様の質問に受け答えをしている様子だ。

 受け答えができるなら大丈夫かな?

 ふと、ロキア様の隣に横たわっていた少女が目を開けたのが見えた。

 ソラウ様が気づいて少女に声をかけると、彼女は目を大きく見開いて慌てて起き上がる。

 

「セエラ、大丈夫か?」

「ソラウ様!」

 

 ロキア様が起き上がった少女に気づくと、とても心配そうに顔を近づけた。

 なのに、少女はロキア様をまるで無視。

 近くでしゃがんでいたソラウ様に、飛びついた――ううん、抱き着いた?

 胸がぞわ、と妙な感覚に襲われる。

 ソラウ様に触らないで、と叫びそうになるけれど、ソラウ様が思い切り少女の顔面を両手で掴んで拒んだ。

 え、ええ……?

 私だけでなく、驚いた空気感がなんともいえないものに変わる。

 

「そ、ソラウ様、ソラウ様ですよね? あ、あの、わたしセエラ・ルアと申しまして……! ま、まず手を放していただけませんか!?」

「いいけど、こっちの質問に答えてくれる? あのネックレス、どこで手に入れてなにをして影樹を生み出したの?」

 

 少女がビクッと肩を跳ねさせる。

 その上で、ソラウ様の手に力がこもったのか「い、痛いです! 放して!」と少女が喚きだす。

 そうだ、あのネックレス……光の神の宝具!

 あの少女は、どうして光の神の宝具をあんな形で持っていたのだろう?

 やっぱり私を里から連れ出した聖女の……?

 

「お、おい! ソラウ・ティファリオ! いくら【聖人】とはいえ、侯爵令嬢への暴力は見過ごせない! 手を放せ!」

「質問に答えろ」

「言います、言いますから!」

 

 少女の顔からソラウ様が手を放す。

 私からはソラウ様の後頭部しか見えないけれど、ロキア様や少女の引き攣った表情を見るに怖い顔になっているんだろうな。



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