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祝石細工師リーディエの新婚生活  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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祝石細工師としての喜び


「まあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜! リーディエ様、わざわざ届けにきてくださったの〜〜〜!?」

「あの、はい。ちゃんと依頼書で依頼してくださったので……」

 

 その日の午後、ハンナ奥様に依頼されたルビーの祝石(ルーナ)の指輪とサファイアの祝石(ルーナ)のイヤリングとタンザナイトの祝石(ルーナ)のネックレスをそれぞれケースに入れて王と貴族街のティフォリオ公爵家本邸にやってきていた。

 時間は夕刻。

 ハンナ奥様は今日の夜会の準備中だったそうだけれど、私が手渡した装飾品を受け取ると満面の笑顔。

 すぐにルビーの指輪を右手の人差し指につけて、うっとりと眺めた。

 

「これをつけていくわ! ああ、本当に嬉しい! 大事に使わせてもらうわ! 本当にありがとう! まあまあ、よく見ると小鳥の細工が施してあるのね? 可愛いわぁ。ワタシがインコを飼っているのを誰かから聞いたの?」

「え? えーと、いえ、その……そういうイメージが浮かんだので……」

「まあまあああ! リーディエ様はワタシが小鳥を飼っていうのを知らないのに、小鳥の細工を施してくださったの!? 天才!」

「あ、いいえ!?」

 

 え、小鳥がお好きだったの?

 ここにきての新情報。

 しかし、なんとなく私の手柄にされるのはなんか違うと思うの。

 

祝石(ルーナ)と台座やリングに魔力を満たすと、その装飾品が望む形に進化するんです。ハンナ奥様のところへ行く子だから、ハンナ奥様のお好きな小鳥の形になったのかもしれませんね」

 

 そう言うと、ハンナ奥様が一瞬眉を寄せて悲しそうな表情になった。

 あれ、と思ったらドバッと涙を流し始めてしまう。

 奥様、と侍女の皆さんが大慌てで駆け寄る。

 ええええええ!? 私なにか余計なことを言いました!?

 

「ううううう、赤マルちゃん、赤マルちゃんんんん! ワタシのところに帰って来てくれたのねぇぇぇぇ」

「赤マルちゃん?」

「十年ほど前にハンナ奥様が飼っておられた赤カナリアのお名前です。小鳥は寿命が長いのですが、十一歳で亡くなった三代目ですね」

 

 三代目なんだ。

 ネーミングセンスについては、まあ、それはそれで可愛いかな。

 しかし、大泣きしてしまったのでお化粧が崩れてしまい、周りの侍女が「ハンナ奥様、お部屋に」「夜会までお時間が……」と声をかけて残りの二つの装飾品が入ったケースをメイドさんが大切に抱えて二階に持っていく。

 応接室に残された私と、一緒に来てくれたシニッカさんがポカーンと見送ってしまった。

 

「おばあ様が大暴れしちゃってごめんなさい。初めまして、リーディエ様」

「え? あ、は、初めまして」

 

 その応接室に入ってきたのは私と歳の変わらなさそうな男の子。

 立ち上がって頭を下げると、ニパー、と満面の笑顔でソファーに腰をかける。

 また座るように、と促され、ソファーに座り直す。

 だ、誰?

 

「現公爵ルディ様のご子息、マーキア様です。旦那様と第一夫人ジェリー様のお孫様ですね」

「お孫様」

 

 旦那様、そういえばお孫さんまでいるんだっけ。

 はああ……と感心してしまう。

 目の前に来たのはそのお孫さん、なのかぁ。

 

「ソラウ様の……甥っ子さん……? に、なるんでしょうか?」

「はい。自己紹介が遅れました。マーキア・ティファリオと申します。叔父上のお弟子さんなんですよね? 聖魔力もお持ちだとか」

「は、はい。初めまして」

「こちらこそ。どうぞ今後とも懇意にしていただけますと幸いです」

 

 よくよく考えればここは王と貴族街のティフォリオ公爵家本宅。

 跡取りのお孫様がいても不思議ではないんだ。

 あれ? それじゃあ現公爵様や、現公爵の奥様もいらっしゃるということでは?

 本宅内の別邸だから、まさかお孫様がいらっしゃるなんて。

 

「祖父には会われているんですか?」

「あ、今はソラウ様のお屋敷でお世話になっております。旦那様には週末食事会に誘われているのですが、ソラウ様が『忙しいから』と行けておりません。……お世話になっているので、行きたいのですが……」

「お一人で住んでおられるから、寂しいんでしょうか。ソラウ叔父上は研究優先でお祖父様のことは蔑ろにしがちですから、リーディエ様がお祖父様に会いに行ってくださると喜ばれると思います。ぜひ会いに行ってあげてください」

「は、はい」

 

 それもそうですよね。

 今週は旦那様のお屋敷に遊びに行こう。

 ソラウ様は夏の中期になるまで戻られないと言っていたし、こうしようと思っている、という報告を手紙を出しておこうっと。

 

「――ところで、リーディエ様は聖魔力をお持ちなんですよね?」

「え? はい」

「治癒魔法師や王宮魔法師には興味ないのですか?」

「え?」

 

 治癒魔法師や、王宮魔法師?

 首を傾げると「そちらの方が給与も多いし、多くの人に感謝されるではないですか」とのこと。

 なるほど?

 

「別に……興味ないですね……?」

「興味ないんですか?」

「そうですね。今の生活は充実していますし、自分が作ったものを……あんなに喜んでいただけて――」

 

 思い出したのは先ほどの子どものようにはしゃぐハンナ奥様。

 間もなく階段を下りてくる足音がして、侍女が応接室の扉を開くとハンナ奥様が飛び込んできた。

 

「リーディエ様~! さっきはごめんなさーい!」

「わあ!? え!? いえ!?」

 

 マーキア様が目の前にいるのに、ハンナ奥様に抱きつかれて驚いた。

 先ほど崩れたお化粧が元に戻っている。

 

「赤マルちゃんのことを思い出してつい……。でも、ああ言ってもらったらこの指輪がとても愛おしくて愛おしくて。大事にするわ。効果切れしても、また祝石(ルーナ)にして使い続けるわ」

「あ……」

 

 そうか。

 祝石(ルーナ)はいつか効果が切れてしまう。

 そうなったら細工も元に戻ってしまうのだろうか?

 そこまで考えたことがなかった。

 帰ってきたソラウ様に聞いてみないと……。

 ああ、私まだまだ知らないことがあるんだ。

 祝石(ルーナ)細工師としてやっぱり未熟者なんだな~~~!


「リーディエ様、本当にありがとうね。ワタシ、今日の夜会でいっぱい自慢してくるわ!」

「あ、あの、じゃあ、私、お届けしましたからこのままお暇いたします」

「ええ、また依頼させてね!本当に、本当にありがとう」

「――はい」

 

 未熟者だけれど、こんなに感謝してもらえる。

 私、やっぱり祝石(ルーナ)細工師になって、よかった。




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