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皇太子の台詞 (公爵家客間の隣室 令嬢に対して)

「なんだか悲劇の主役のような台詞回しで去っていったけれど、彼がやっていたことって調査にかこつけた、ただの浮気だったんでしょう? 愚かだよね、調査だって言えばバレないと思っていたんだから。

 そもそもはあの男爵令嬢が魅了魔法を使う『らしい』って話で、調べればすぐに『魔法自体が使えない』ってわかるから男爵家に令嬢の交遊関係について忠告するだけの、半年もあれば終わることだったのに。元娼婦の母親に仕込まれた話術は、さぞかし心地よかったんだろうね。きみに惚れて私から横取りしたくせに、いざ手に入れたら劣等感で一方的にきみに対して不満を募らせて、勝手に自滅したあの王子の耳には……。

 あ、やっぱり男爵令嬢が魔法が使えないことも、あの王子がただの浮気者だったことも、全部知っていて敢えて知らないふりをしていたんだね。彼はそれに気付かないであんな言い訳をしていたのか。本当に愚かだなぁ。いっそ本当のことを言った方が潔かっただろうに。

 きみは何も悪くないよ。現に私はきみの存在に癒されているのだから。……ただ、彼にとっては違ったってだけさ。

 え? なのに何故復縁を迫られたのだろう? って。恐らく婿入り先が気に入らないのだろうね。

 彼はさっき未定のように言っていたけれど、反対側の隣国の王女の元に婿入りが昨日決まったんだ。どうもきみと婚約していた頃から彼のを一目で気に入ったそうで、結婚させてくれと毎年頼んでいたそうだよ。でも彼はきみと婚約していたし、なによりこの国の王がそちらとあまり縁を繋ぎたくなかったらしいから、ずっとやんわりと断っていた。婚約の解消を渋っていたのはそれもあったのだろうね。でも息子の浮気が原因で、密かに息子の婚約者にと目をつけていて叶った令嬢を、貴族たちから軽んじて見られる、国母に相応しくないと思われてしまうような令嬢にしてしまったのだから、責任は大きいよね。きみ自身はとても優秀で、魅力的な女性なのに。……ふふ、照れているのかい? かわいいね。

 え、話の続き?

 相手は横恋慕で人から奪おうとする王女だよ。そしてそれを叶えようとする両親。ふふ、どこかの我が儘な誰かさんたちみたいじゃない? 本人には自覚無いみたいだけど。よく自分で言えたものだよね、我が儘を言わなかった、きみを愛していた、なんて。学園にいた頃は課題や仕事を全部きみに押し付けて、しかも自分達でしなきゃならない昼食の手配まで全部きみがしていたんだろう? まるで小さい王様だね。

 まあ、同族嫌悪もあると思うよ。でも、執着心は彼よりあるんじゃないかな。どうも彼専用の『部屋』を作って待っているって噂だし。お気に入りの男爵令嬢も連れて行けないのに、好みじゃない女性に束縛され続けるのは、彼にとっては苦痛かもね。同じようなことをしていたから、因果応報な気もするけど。

 まあ一番の理由は、婿入りしたところであの国は目ぼしい資源がない貧乏な国だから、かな。旨味が無いどころか、逆にこの国が搾取されていくだけだろうね。彼も今までのように自由で贅沢な暮らしはできないと思って、きみと復縁してこの国に残ろうとしたんだろうね。除籍は免れないだろうけど、あの国に行くよりはマシだと考えたんじゃないかな。

 すごいよね。きみに対して謝罪して自分の行いを省みるどころか、保身のために嘘を重ねて、きみを自分の不幸に巻き込もうとするなんて。しかも、婚約解消の報告は最終学年に上がった頃にはされていたはずなのに、昨日婿入り先が決まるまで彼からは一言も無かったんだろう? 厚顔無恥ってああいうのを言うんだろうね。

 ……それにしても、この国と共倒れにならないように考えなくちゃ。

 ん? ごめんごめん、なんでもないよ。

 さて。それじゃあ、そろそろ公爵への挨拶に戻ろうか。まさか元婚約者に邪魔されるとは思わなかったな。待っていたら突然きみたちが慌てて入ってきて、ここに押し込まれるもんだから驚いたよ。え? 見苦しくなんかなかったよ、毅然としていて、とても素敵だった。自慢の婚約者だよ、きみは……。


 おっと、公爵。いつからいらしたんですか? ええ、もちろん。婚姻するまでは彼女の体に指一本触れませんとお約束しましたからね。私も長年心にしまっていた初恋が叶ったのですから、逃したくありませんし。

 でも、彼女から触れられるのは致し方ないことだと思いませんか? おや、手厳しい」

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