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王子の台詞 (公爵家客間 令嬢/公爵に対して)

「待ってくれ! 私は本当にずっと君が好きだったんだ! 幼い頃交流会で見かけて、それ以来……だから父に頼んで婚約者にしてもらったんだ! ……そうだよ、私が頼んだから隣国の皇太子との婚約話が流れたんだ。知っていたよ、だけど本当にきみを好きになってしまったから!

 だけど……私には……皇太子のような魅力も無いし、当時から優秀だった君の隣に立っても恥ずかしくないような功績も無くて……。え、だから自分を貶めたのか? って、そんなわけないだろう!

 ……あの男爵令嬢が禁じられた魅了魔法を使うらしいと聞いて、もし自分が対処できれば、小さいことだけどきみの隣に立つ自信がつくと思ったんだ……。そうだよ、ずっと自信がなくて……きみを遠ざけてしまった……蔑ろにしていたつもりはなかったんだ……。きみへの手紙も、贈り物も、ずっとあれこれ考えて選んでいたら、気付いたら時期を逃してしまって、渡せないまま……。そんな自分をどうにかしたくて、男爵令嬢に調査のために近付いたんだけど……。

 え、なら最初にそう言ってほしかった? けど、内密にと言われていたから、仕方なく……。いくらでも言い様はあったじゃないか、って……。だけど、彼女に悟られるわけにはいかないから……わかるよね?

 耐性は付けていたんだけど、長く側に居すぎたからやはり魅了魔法にかかったみたいで……実は三年目からの記憶はどこかぼんやりしているんだ……。でも! きみからの手紙を読んだときだけ思考が晴れて、やはりきみだけだって……。本当に、本当に二年間寂しかったんだ! だけど返事でそんなことを書いて情けなく思われたくなくて……迷っているうちの……時間が経ってしまって……。

 え、だからなに、って……今更遅い、って……そんな……でも、ああ、そうだ。遅い、ということは元は私のことを好いていてくれていたんだろう? だったら……え、婚約者になったから、そうしていただけで、実はずっと幼馴染みの皇太子が好きだった……? 初恋が叶うから幸せ……そんな……私だって……きみが初恋なんだ……やっと叶ったって……だから私は……自信を持ってきみの隣にいたくて……それで……。

 え……功績とか関係なく、隣にいたら違っていた……そんな……。なら……私が五年間してきたことは……無駄だったのか……?

 待ってくれ! もう一度! 一度だけでいい! やり直したいんだ! 愛してるんだ! 行かないでくれ!!」




「……ああ、どうして……どうしてなんだ……。

 公爵! どうしてなんだ! あなたがあの男爵令嬢のことを私に話さなければ、こんな……!

 え? 私に頼んだつもりはない……? 私が勝手に判断して調査に介入してきた……? た、確かに公爵から私にやってくれと言われていない、しかし!

 ……どちらにしても娘を蔑ろにしなければ動けなかったのなら、娘に対する愛情はその程度だったのでは、って、そんなわけない! 私は本当に彼女を愛していて、だから!

 え……皇太子は彼女と交流しながら、しかも悟られないように半年で調査し終えた……? 待ってくれ、公爵が調べたのではないのか? 違う? ……私と同じように皇太子自ら男爵令嬢に接触して……? 皇太子は……それでも彼女との交流は欠かさなかった……のに、何故、私にはそれが出来なかったんだ? そ、そんなことを言われても……。

 違う……違う! その程度の愛だったわけじゃない! 私は! 私は本当に彼女を愛していたんだ!

 ……その身勝手さが幼い恋人たちを引き裂いたのだとわかっていても……?

 ……ああ、わかっていたよ。あの交流会には皇太子もいて、その隣には彼女もいて、二人は互いに思い合っていて、笑っていた。私は彼女のその笑顔に一目惚れして、彼女が欲しくなったんだ……。彼女の相手が隣国の皇太子といえど、自国の王命を一介の貴族が断れないと思ったから、父に頼んで彼女を婚約者にしてもらった。幼い頃から優秀な令嬢だということもあって、父も母も喜んでいたよ。あまり我が儘を言わなかった私が初めて頭を下げてお願いしたというのも大きかった。

 ……なるほど……私はあなたに試されていたのか……。娘を想い人から奪った私が、本当に娘に相応しいかどうかを……。功績が無くても娘を心から大事にしていたなら違っていた……? ははっ、同じことをさっき彼女にも言われたな……。

 ……そうか……私は最初から間違っていたのか……。

 私がこれからどうなるか? ……さあ、もう父も母も私の行いにすっかり呆れてしまったから……弟を後継者にして、どこか適当な国に婿入りさせるらしい……。

 ……彼女が隣国に行く前に、最後に、私の気持ちを綴った手紙を送りたいのだが……どうか、どうか捨てずに彼女に渡してもらえるだろうか。

 ……ははっ、確かに……私からの頼まれごとに応える義理はあなたには、もう無いな……」

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