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令嬢の台詞 (公爵家客間 王子に対して)

「あら、殿下。先触れも無しにわたくしの家に急に来られるなんて、なにかあったのですか?

 どうして自分との婚約を解消した? だって、殿下にはあの可愛らしい男爵令嬢さんがいらっしゃるじゃないですか。婚約者のわたくしのことを五年も放っておくほど夢中になるお方が。

 え、違う? 事情があった? はあ、でもわたくしはその『事情』とやらは存じませんし……。わたくしにも、婚約を結んだ直後から五年も放置されるような空しい婚約を続けさせられるような低い女じゃない、という自負がありましてよ。そもそも、殿下がわたくしをそういう風に扱うから、この国の学園でわたくしはずっと他の方々にまで軽んじて見られていたのです。そんなわたくしが国母に相応しいと思います?

 自分が何とかする? ならば五年前に戻ってわたくしの立場を改善してください。わたくしを尻目に他所の女を寵愛していたせいで、幼い頃からずっと公爵令嬢として努力して積み重ねてきた功績は容易く崩されました。それでも公爵家の者として矜持を持って振る舞えば、プライドだけは高い高飛車な女、婚約者の地位にすがり付くみっともない女、……他にも色々言われましてよ。何故、殿下が傷付いたような顔をするのですか。その中でよく一年過ごしたと思います。……ですが、心は折れました。なので陛下に婚約の解消を申し出ました。

 ええ、そうです。たった一年でわたくしは殿下の婚約者でいることが苦痛になったため、当時の状況を理由に申し出ましたが、何故か『もう少しだけ息子のことを待ってほしい』と言われました。……この時点でわたくしの心は決まったのですが、婚約を解消できなかった以上は従うしかありませんから、二年目はひたすら心を殺して過ごしました。

 そして三年目は、わたくしを見かねた父が隣国の学園との交換留学を薦めてくださいました。わたくしはもちろん、大喜びで申請しましたわ。陛下と殿下に阻まれそうになりましたけど、見聞を広げる目的と隣国との友好関係を築くという名目で父が了承させて、晴れてわたくしは隣国の学園に二年間通わせて頂きました。楽しかったですわ……わたくしのことを影で嘲笑う者や軽んじて見るような者はいませんし、なにより大切なお友達がたくさんできました。戻ってきてからも、あちらの皆様と手紙でやり取りさせて頂いてますの。……ようやく学生らしい生活を送れて、社交場を楽しく過ごせるようになって、わたくし改めて思いましたの。『あの国に未練はないわ』と。

 え? 冷たい? ……それは二年の間にわたくしにお手紙のひとつでも送っていたら言える台詞ですわ。婚約者の義務としてわたくしは月に一度は殿下にお手紙を認めていましたのに、そのお返事すら一度も頂いていません。ちゃんと読んではいた? だからなんですか。わたくしからの手紙は読めば終わりでいいというお考えだったということですか? なら別にわたくしとの婚約を解消したところで、やはり殿下には何の問題はないでしょう?

 戻ってきて父を通して解消を再度申し出て、ようやく叶ったため、最終学年の五年目は晴れ晴れとした気持ちでこちらの学園に戻りました。……予想していた通り、わたくしの居場所はありませんでしたが。なにせわたくしの不在だった二年間、殿下は男爵令嬢と深く交流を重ねていたそうですから。けど、わたくしにはもう関係ありませんし、来月には隣国の学園に編入してあちらの学園を卒業すると決まっていますので、どうぞお好きに……ええ、わたくし、隣国の皇太子様の婚約者になりましたので、一家であちらに移住を……え? どうして? そうですね、どこからお話ししましょうか……。

 わたくしの母が隣国の皇族の産まれということもあって、皇太子様とわたくしは幼馴染みなんです。幼い頃はよく一緒に遊んでいました。仲も良いし、隣国との友好も兼ねて婚約のお話があったのですが、進めていた間に殿下との婚約が決められてしまって……父もわたくしも、あちらの家の方も当時は困惑しましたのよ。でも王命ですから、お互いに諦めたんです。直接お会いすることはなくなってしまいましたが、手紙のやり取りは続けていまして……留学のことを報告したらとても喜んで下さいました。本当に嬉しかったですわ……わたくしがあちらの学園に馴染めたのは、皇太子様のお力があったからです。わたくしの事情もお話していたので、こちらに戻る前にお心を頂いて、殿下との婚約の解消が叶ったら自分が婚約を申し込みたい、と……なので……。

 え? 浮気? そうでしょうか? そもそも殿下のお心は最初からわたくしにはありませんでしたし、わたくしも例え陛下に乞われても殿下との婚約を解消するつもりでしたから。どちらにも心が無くても、他の方と愛を育めばそれは浮気と言えるのでしょうか……?

 ……は? 本当はわたくしを愛していた? 実はあの男爵令嬢が禁じられている魅了魔法を使うらしいから内密に調べろと言われていた? わたくしの功績と肩を並べたくて? ……はあ、そうですか。

 反応が薄い? だってそうでしょう。あの方が魅了魔法を使用するのではということは、わたくしの父が半年で調査してもう対応済みです。知らなかった? ……五年も何をされていたのですか? 軽度だったけど彼女の魅了魔法にかかっていて、完全な解除に昨日までかかった、と……。そうですか。まさか、魔法にかかっていただけだから五年間のことは無かったことにして、わたくしと復縁しようということですか?

 …………………………………………………………。

 わたくし、そこまで自分を軽んじて見る方とは、婚約はおろか友好も結びたくありません。どうぞお帰りください」

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