プロローグ
とりあえず読んでみてください感想ももらえると嬉しいです。
「シャリー…」
僕がそう呼んだ女性は返事をする事はない。
美しい色をした金髪の髪と透き通るような白い肌はとても美しく見える。
しかし、彼女は決して目を開けることは無い。
彼女は既に死んでしまっているのだから。
彼女の名前はシャリエッツ・ネクロン。
内気で人当たりも良くない僕とは正反対の彼女は、成人してまもない頃からずっと僕とも仲良くしてくれるそんな女性だ。
僕は出会った頃から彼女に好意を抱いていた。
理由は単純明快で死霊術師の僕に唯一共に居てくれた人だったから。
でも、僕は彼女と一定の距離を空けていた。
僕と彼女では釣り合う所か僕と一緒に居るだけで彼女を不幸にしてしまうのではないかと考えていたから。
だけど、彼女は違った。
僕がどれだけ距離を空けてもその距離を詰めてくる。
僕はそれが不思議でつい何故僕と一緒にいるのかを聞いてしまった。
当時の僕は越えてはいけない一線を越えてしまった…この先の答えなんてみんな同じに決まっているじゃないか…と分かっていたはずなのに。
だけど、彼女は違った。
『一緒に居たいからいるの、何かおかしいかしら?』
この返事を聞いて、僕の中で何かが動いた。
今まで抑え込んでいたはずの感情が、恋慕という感情がより明確に…
だからだろうか思わず…
『あ、あの…僕の…えと…』
『なに?僕の?』
『こ、恋人に…な…なってくれませんか』
『恋人になってほしいの?』
『は、はい…あの…』
『そっか、でも駄目』
『あ…あはは…やっぱりそうですよね…』
『それはそうでしょ、だって君全然自分の事教えてくれないんだもの…名前だってまだ君から聞いてないのに、いきなり恋人になんてなれないよ』
『あ…そういえば…えと…サクリファイス・ネクロン…です…』
『ふふ…私より年上なはずなのにやっぱり君は可愛いね』
それから色々あって無事恋人になり、そして結婚もした。
彼女と過ごした日々は毎日が楽しく、何時までも続いてほしいとすら思っていた。
だけど…その日々の終わりはあまりにも早すぎた…
原因不明の病が彼女を蝕み始めたからだ…
医者に見せても何も分からず、死霊術師としてあらゆる死についても知っているはずだった僕でさえ到底検討もつかないものだった。
そして、その時は遂に来てしまった。
『シャリー…』
『サクリ…あなた悲しそうな顔をしているわ』
『だって…』
『悲しまないで…私は幸せだったの…一緒にいれた時間は短かったけれどそれでも私は幸せだったのよ』
『…』
『私のことを忘れてなんて言わない…言えないわ…私が悲しいもの…だけど…サクリにはあなたの人生を生きて…』
そんな…そんなことを言わないでくれ。
だって…僕の人生は。
『僕の人生は…君が…君がいなくてはダメなんだシャリー…』
『本当に…あな…たは………』
『シャリー…?』
そして、彼女は死んだ。
シャリーは一体最後に何を言いかけたのだろうか。
そんなことを考えてしまうほど安らかに。
無気力だった…全てがどうでも良くなった。
国の法律により一般人とカテゴライズされる人々は亡くなった場合、戦場で使う事は禁止されている。
そして、亡くなってから数日以内に火葬をして弔わなくてはならない。
だけど、僕はそれを拒んだ。
無駄であると知っているのに、有り得ないと分かっているはずなのに、シャリーが再び息を吹き返してくれるのでは?などという死霊術師らしからぬ考えを持った僕は、シャリーを連れ誰にも見つからない場所に身を移すことにした。
そこは誰も寄りつくことの無い森のさらに奥にある薄暗い洞窟で、まさに隠れるには最適な場所だった。
結果として言えば僕はここに来て正解だったと思う。
僕はこの洞窟内で普通に生活していれば知ることの無い、死霊術師が持つ一つの特性に気がついた。
それはほんの極小、気をつけなければ分からないほどの小さな感情。
『もっと…生きていたかった。サクリともっと過ごしていたかった』
確かに感じた。
彼女の思いを、彼女の願いを死して尚魂は未だここにあるのだと。
それは僕の次の行動を決定づけるには十分すぎるものだった。
「絶対に生き返らせてみせる…」
そこから僕は只管に研鑽と実験を重ねていった。
そして…
「出来た…」
死霊術師としての命題『死者蘇生』には届かなかった。
だけど、それでも僕は、人体の完全再現をした人造人間を作製することに成功した。
「長かった…」
そしてもう一つ僕のオリジナル魔術…いや、これは最早魔法の類だ。
死んだ者の魂を人造人間に移植する魔法。
シャリーの遺体とシャリーと瓜二つの人造人間を並べ僕は魔法を唱える。
「シャリー、今から君をこの世に呼び戻す…『魂魄回帰』」
すると、シャリーの遺体が強い光を放ちそれが収束すると拳より一回り大きい光の塊がシャリーの身体から浮き上がる。
それは僕が作った人造人間の上まで動きゆっくりと馴染むように溶け込んでいった。
「成功…か?」
手応えはあった。
だけど、魂を移す実験はしたことが無い。
頼む…成功していてくれ。
僕がそう願っていると…
「あ…」
「シャリー?」
「サクリ…」
………
…成功だ。
成功した…僕の名前を呼んだシャリーの瞳にはしっかりとした自意識が感じられる。
長かった…ようやく…
「この…」
「ん?どうし…ぶべっ!?」
「サクリのバカー!!」
「ちょ、ちょっとシャリー落ち着い…ぐはっ」
な、なんでシャリーはここまで怒ってるんだ?!
「何してるのよ!私言ったわよね?あなたの人生を生きてって…どれだけ私の事が好きなのよ…私は向こうでゆっくりとしてたの…」
ああ…昔の…いや、いつものシャリーか。
「それは嘘だよ」
「…」
「シャリーが本当に未練も無く死後の世界に行っているなら、僕の術式は成功するはずがないんだ」
そう、僕が使った魔法は相手の魂が未だ現世にないと成功するはずのないものだ。
「…じゃない」
「…」
「当たり前じゃない!サクリともっと一緒に居たかったに…決まってるじゃない…」
身体を震わせながら俯いてしまったシャリーを僕はそっと抱きしめる。
もう長い事感じることのなかったシャリーの温もり、そしてしっかり動いている鼓動を感じる。
「…僕もだよ。シャリーと一緒に居たかったし、何より君が、君の魂が望んでいたから僕は諦めなかったんだ」
「ありがとうサクリ…もう一度あなたに会えるなんて思わなかったわ」
「僕は絶対に会う気だったよ。君の事を愛しているからね」
「そう…私もあなたを愛してるわ」
これでようやく前に進めそ…
「ところでサクリ、私が一度死んでから一体何年経ってるのかしら?というよりここは何処?」
「えっと…ここは森の奥の洞窟で、今は何年なんだろう?100年から先は覚えてないや…」
「…100年以上も洞窟で過ごしてたの?」
「う、うん…」
あ、あれ?少し不穏な空気になってきたような…
「そういえばサクリ、少し痩せたかしら?食事はちゃんと取っていたの?」
「ま、まあ最低限は…」
「嘘をつかずに言いなさい」
「…川の水と森に生えてた果物だけです」
「そういえばあなた100年以上は生きてるのよね?」
「は、はい…」
「普通は死んでいると思うんだけど、一体何をしたのかしら?」
「状態保存魔術を改良して不老化してました…」
「そんなことできたの?というかそれ何となくだけど危険よね?」
「…えっと」
「危険よね?」
「一歩間違えれば…その…死ぬかもしれないです」
「はぁ…」
あ、怒られるかも…
「怒らないわよ」
「え?」
「だって私の為に頑張ってくれたんでしょ?」
「う、うん…でも命を粗末にするなって言われるかと…」
「もうやってしまったことでしょ?それとも何かしら?怒ってほしいの?もしかして、これからまた何かしでかす気かしら?」
「しません!」
「ならよろしい」
うう…シャリーが怖いよ…でも、懐かしいなあ。
これからどうしていこうか?
そんなことを考えながら未だ僕達は離れる事はなくしばらくお互いの存在を感じ続けた。




