ふわふわノネズミくん
秋も深まる、ある小さな森に
なかのよい2匹の動物たちがおりました。
森の中で、いちばん大きなクマくんと、
いちばん小さなノネズミくんです。
クマくんは、大きな体に、強そうな太い爪をもっています。
ノネズミくんは、強そうなものは、
なに1つとして、もってはいませんが、
柔らかな、かわいらしいフカフカの毛並みをしていました。
クマくんは、ノネズミくんの
フカフカの毛並がうらやましく、
ノネズミくんは、強そうなクマくんが、
うらやましくもありました。
ふたりは、そんな友だちが大好で、
大切に思っておりました。
あるひ、クマくんがいいました。
「ノネズミくん。もうすぐ冬がやってきそうだよ」
「そうだねクマくん。ことしの冬は、とくに寒そうだ」
「そうだ! ノネズミくん。ことしはいっしょに、冬をこさないかい? あったかい真綿が、たくさんとれたのだよ」
にっこりと、ほほえみかけますと、
ノネズミくんもうれしそうに、こたえました。
「ちょうどよかった。ぼくも、たくさんクルミをひろったから、クマくんを誘おうと、思っていたんだよ」
そこでふたりは、いっしょに冬を、すごすことにしました。
「のみものと、たべものは、ここにおいておくからね」
ノネズミくんがいいました。
「真綿はここに、たくさんあるからね。寒くなったら、とりにくるんだよ」
いいながら、ふたりはベッドにもぐりこみます。
クマくんのとってきた真綿は、おひさまの、
とてもいいにおいがしました。
ノネズミくんのひろったクルミは、たくさんあって、
ふたりでも十分冬がこせそうでした。
ガタガタガタ、ごとごとごと……冬のあらしが、
クマくんの家をゆらします。
クマくんは、すこし目をあけました。
けれど、部屋のなかは、とてもあたたかです。
ノネズミくんも、ぐっすりねむっています。
クマくんは、ほっとして、もいちど眠りにつきました。
どれくらい眠ったでしょう。
クマくんは目をさましました。
外がなんだか、にぎやかだったのです。
「ううーん。もう春なのかな……?」
おきあがって、窓の外をみますと、
外は雪で、まっしろです。
まだ夜もおそいのでしょう。
まっくらな夜空には、
かわいらしい小さな星たちが
たくさん、またたいています。
「なあんだ。まだ、冬だったよ。スープでも作ろうかな?」
いいながら、ノネズミくんをみました。
「あっ! ノネズミくん!?」
ノネズミくんがいません!
いつもねているはずのベッドのなかに、いないのです!
クマくんは、まっさおになりました。
もしかしたら、ベッドからおちたのでしょうか?
下をさがしましたが、いません。
もしかしたら、たべものをとりに台所にいるかしら?
台所にもいません。
「もしかして……もしかして……」
いやな予感が、クマくんをつつみます。
「もしかして、寒いからって、ぼくのベッドにはいったんじゃ……」
そうなるとおおごとです。
小さなノネズミくんなど、
クマくんのおしりでペチャンコ……。
「うわあぁあぁあ……」
あわてて、ベッドをひっくりかえします。
真綿のつぶは、どれもノネズミくんにそっくりです。
「ノネズミくん……ノネズミくん」
ひっしで、なみだをこらえながら、さがしました。
しかし、いません。
ああ、よかった……。
いいえ、よくはありません!
クマくんは、それから家中をひっくり返して、
さがしましたが、ノネズミくんはかげもかたちも、
みあたらなかったのです。
「うわあぁあぁあ……ノネズミくぅ~ん!!」
外にむかって、さけびました。
へんじはありません。
こうなったら、さいごの手です!
コートをはおると、クマくんは外にとびだしました。
となりのヘビさんをおこすのです。
ドンドンドンドン!!
クマくんは、ひっしにドアをたたきました。
するとなかから、みどりいろのヘビさんが、
大あくびをしながら出てきました。
「どうしたの? クマくん。春はまだまださきだよ?」
「た、たいへんなんだ! ノネズミくんがきえたんだ!」
「な、なんですって!?」
ヘビさんは目をまるくします。
「それは、たいへん! したくをするから、まっててちょうだい!」
ヘビさんは部屋へと、はいっていきます。
「…………」
ヘビさんは、寒がりです。
服を、何枚も何枚もきるのですが、
クマくんは、そんなにまってはいられません。
「おーい! ヘビさん! ぼくは、となりのガマガエルくんの、ところへいってみるよ!」
「分かった……うわ……」
ゴロゴロゴロゴロ……。
たっぷり着こんだヘビさんが、転がり出てきました。
「あとから、いくから……」
いいながらゴロゴロゴロゴロおくへと、
きえていくヘビさん。
「ん……。わかった」
クマくんは、ヘビさんの家を出て、
ガマガエルくんのところへいきました。
次回『あたたかいクマくん』お正月配信です。
それでこの話は、終わりとなります。
良ろしければ、最後まで、お付き合いください♡