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死神少女。  作者: 千尋
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勃発 その参

ふわりと心地よい風が辺りの草木を揺らしながら優しく吹いている。クラン帝国とハインツの国境線にある大きな川を挟んだクラン帝国山岳部隊駐屯地。


元は、この山岳一体はハインツの領土であったが度重なるクラン帝国の侵略において、今はクラン帝国領となり大きな川まで侵攻されている現状であった。


しかし、その山岳部隊駐屯地はとても静かであり物音一つ立っていない。警備巡回に行っているのか、いや、それでも数名の兵士が必ず残るはずである。


ふんふんふふふんふんふん♪

ふんふんふふふん♪


よく耳を澄ませてみれば、どこからが寂しげなメロディーが風に乗って流れてくる。


ふんふんふふふんふんふんふん♪

ふふふふふんふんふん♪


駐屯地の建物の屋根に、幼い少女の姿が見えた。ついさっきまではいなかったはずの少女。赤い服を着ているかと勘違いする位に返り血を浴び、その腕、顔、綺麗な亜麻色の髪の全てが兵士達の血で染まっていた。


両腕に少女の背丈よりもだいぶ大きな鎌を抱いて、寂しげに鼻歌を歌っている。無表情で生気のない眼をして。


「1103、降りてきて下さい。血を洗い流しましょう」


下からイヴァンナ監察官が、1103へと呼びかけている。1103はイヴァンナの方へと顔を向けると、小さく頷き素直降りてきた。そして、イヴァンナから手を引かれ、国境線の大きな川の浅瀬で着ていた服などを全部脱ぎ裸になると、イヴァンナは1103の柔らかな肌を傷つけないように丁寧に洗ってやった。


全身に浴びた返り血を綺麗に洗い流し終えると、イヴァンナが1103の亜麻色の長い髪を丁寧に拭いて乾かしてくれている。


先程から1103が東側の方をずっと見ていることが気になったイヴァンナはどうしたのか?と尋ねると、1103が東側の空を指さした。


「何か大きいの……来る」


そう一言だけ言うと、いつものメロディーを鼻歌で歌い始めた。イヴァンナ達、普通の人間にはない能力者特有の第六感という奴なのか。


何か不吉な予感がするイヴァンナをよそに、鼻歌を歌い続ける1103であった。

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