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第4話 空気銃

ぷは~ヒック! それじゃあこの世界の種族について教えてやる。

いいか、俺たちと体格が同じぐらいで耳が長く尖ってるのがエルフだ。

つまるところ俺たちヒュムとハイエルフのハーフだ。

次に小柄で耳が長く尖ってるのがドワーフだ。

つまるところハーフリングとハイエルフのハーフだ。

それから……。


――酒場で種族について語るおっさん

 遠くからやってきたと思われる怪鳥が工場都市の上空を旋回している。


 そして、あろうことか中央の城の蒸発した部分に降り立ち翼を広げて――煙を全身に浴びる。


 その大きさは翼を広げた状態で10メートルにはなる。



 煙浴――カラスなどの鳥に見られる行動。 工場の煙突や畑の野焼きの煙を利用してノミやダニ、寄生虫を除虫しているといわれている。 煙突から煙を出す古い工場の悩みの種であった。



 そして工場都市を見渡して最近採掘されたが用途が無く野ざらしにされた光る鉱物――水晶に飛びつき先ほどの城へと運んでいく。



 巣作り――ある種の鳥は巣に木の枝以外にも光る鉱物や貴金属を使い、異性にアピールする習性がある。



 次に食糧備蓄庫から採れたての大豆を、さらに今度は苛性ソーダから作った石鹸生産所を襲撃し石鹸を持ち去った。



 石鹸強奪――鳥には好みがあり米や野菜を狙う以外にも脂肪の塊である石鹸を狙う鳥もいる。 特にカラスは石鹸を食べることで有名である。 それにより工場や学校に備え付けられている衛生備品である石鹸はよく被害に遭う。



「このふざけるな! アホーー!!」


『アホ―アホ―』



 カラス語――カラスなどはオウムと同じ生体器官をもっているので鳴き声を複雑に駆使して40語以上使い分けれるといわれている。 またそれを応用してオウム返しのようなこともできるといわれている。



「ハッ! 工場長危険です!!」


 危険なのでトーチカ内に避難していたが、そこへフン攻撃をしてきた。



 カラスの逆襲――工場にお偉いさんが視察に来ると張り切った部長がカラスを追い返そうと躍起になると、部長の車だけをフン攻撃するほどカラスは知能が高い。 そして最終的に鳥害対策の専門家に全てを任せることになる。



 ――ってカラスじゃん!! どう見ても超巨大なカラスじゃん!!


「伝染病になるからフンは消毒しといてくれ」


「ハッ!」



 今の所被害は――。


「ぎゃーー」


 ――今捕まって上から放り投げられたゴーレムが一体、いや「おもしろ―い」とか言ってるから被害者ですらないな。


 たぶん金属ヘルメットが光ってたから狙われたのだろう


 あとは倉庫の石鹸や食糧庫の野菜類がやられた。


 その都度、連弩で撃退しているが射程が短すぎて届いていない。


 脅威とみなされずに巣作りし始めたようだ。



 こっちが弱いと思って高を括っているな。


「アイアン! 連弩では射程が短い! 新しく製造中の武器を――ぶっつけ本番で使う」


「ハッ! 空気銃を緊急配備! 急げ!」


「りょうかーい」と言い、ゴーレム達が先ほどまで製造していた武器を配備していく。


 空気銃というのは、エアソフトガンという玩具ではなく、狩猟で使う猟銃だ。


 この武器の歴史と原理は意外と古い。


 原理はだれもが思いつく吹き矢からの派生だと言われている。


 それを15世紀に成立した火薬銃に似せて、機械式で発射するようにしたのが最初期の空気銃だ。


 もっとも高圧空気を溜めるシリンダーの性能が悪かったのであまり発展しなかったのだろう。


 実戦で使われることはなかった。


 それでも加工技術の発展と共に改良が続けられて、ついに19世紀初頭に魔改造の国『江戸時代の日本』へとエアガンの玩具が伝わった。


 もちろん魔改造の国なので玩具を分解して改良して殺傷能力のある空気銃と発展型の連射銃を作り上げた。


 当時の火縄銃と違い火薬いらずの発射音がしない空気銃は暗殺に優れているとして幕府に製造と開発を禁止された。


 結局は火縄銃と同じ様に衰退した。


 それでもその魔改造空気銃を基にしたポンプ式は国内用の猟銃として人気があったという。


 だがこの工場都市には高圧の液体窒素がある。 ゴムもある。 高圧ガスタンクもある。


 だから液体窒素タンクから高圧力のガスをチャンバーという容器に溜める。


 液体は蒸発して窒素圧力は200気圧以上に上昇する。


 その圧力で発射されるペレットは数百メートル以上先の的に当てられて、さらに薄い鉄板をも貫通する射程と威力を持っている。


 時間が無かったから単発式だがそれでも数を揃えれば当てられる。


 ――さあ、武器はある。 後は倒すだけだ。




 ◆ ◆ ◆




 怪鳥の度重なる妨害に遭いながらも現代ライフルと見た目が同じ空気銃を配備していく。


 そしてライフルを肩にかけるゴーレム達が配置につく。


 ついに反撃に出る時が来た。


「――準備はいいか?」


 その問いかけに『準備完了!』と有線で各所から返事が返ってくる。


「――よし、作戦開始!」


『ハッ! 了解! 了解! 蒸気砲撃て!』



 スチームカノン砲――蒸気の力を利用した射出兵器は紀元前のアルキメデスの時代から存在した。 しかし火薬の利便性に負けて長らく見向きもされなかった。 だが第二次世界大戦初期に準備不足だったイギリスが苦肉の策としてホールマン投射機を完成させ実践に配備した。 それは船舶用のボイラー圧力で放射可能な対空砲であり、ドイツの航空機撃墜用として使われた。 しかし射程が高度600メートルと低く配備数に対して航空機2機撃墜の戦績であり、中期以降は通常の対空砲が配備されその役目を終えた。



 いまの工場都市はあらゆる設備が蒸気機関で動いている。 そして工場中にある圧力ボイラーのエネルギーを使い蒸気砲を撃つ。 放たれた鉄は怪鳥へと襲い掛かる。



『グギャアッ!』



 だが怪鳥は砲弾を避けてから急降下してスチームカノン砲に襲い掛かる。 だがそうやって降りてきたところ待っていた。 高度が下がったところに空気銃で武装したゴーレム達の攻撃が始まる。



『全弾撃て!』



 無数の弾丸をすべて躱すことができずペレットが突き刺さっていく。 そして動きが鈍くなったところへ圧力が再び上がったスチームカノンが何発も命中しついに地に落ちた。



『撃退を確認できました! 勝利です!』



 ――ふぅ、よかった。


 火薬が生産出来るまでの繋ぎとして何とかなりそうだ。


 だがやはりこの世界で生き抜くには威力が弱いな。


 もっと、もっと強力な武器が必要だ。




 ◆ ◆ ◆




 謎の巨大鳥を倒したという事でちょっと肉を加工して料理をしようと画策していた。


「久しぶりの肉料理だ! ワクワクするね」


「コウジョウチョウサマ、ワクワクしません……」


「――ひえっ!?」


 いつの間にかアルタが戻ってきていた。


 というか少々おかんむりの様だ。


「油田債権がひと段落して戻ってみれば何なんですか!! この惨状は!! これロックバードじゃないですか!!」


 ――このあと無茶苦茶怒られた。


 スライム戦以後、通信網がズタズタだ。


 ついでに煙によって視界不良なので工場都市の異変に気が付かなかったようだ。


 怒られたというより連絡が取れないことにご不満のようだ。


 とりあえず通信を復活させるために、次は音声無線機を作る――と言いくるめて強引に料理に参加してもらうことにした。




「――という事で唐突クッキングタイム!」


「工場長様絶対にぜーたいに通信機を作ってくださいね」


「ああ、分かってる。そっちは今なら何とか作れるからね」


 料理と言ってもトリ肉を焼くだけだ。


 それより高度な事なんてできない。


 だからトリ肉に油そして岩塩だけのワイルドな料理になる。


 そこでまずは採れたての大豆から油の抽出を始める。


「大豆を粉々に粉砕してからプレスすることで大豆油が手に入る」


「押しつぶせー………………全然でないよー」


「うん、知ってた」


 料理には興味がないが食品工業――つまり加工工場は辛うじて我らが化学と工学の領域だ。


 大豆油というのは圧搾機というプレス機の親戚で潰して油を搾りだす。


 ところが植物というのは頑丈な細胞壁でまさに実を守っているから油がほとんど出ない。


 そこで化学者たちは溶剤によって油を抽出する方法を思いついた。


「という事でガソリン系溶剤投入!」


「えぇ……」とドン引きのアルタ。



 脱脂大豆――大豆の圧搾抽出率は20%以下と低く、ほとんど取り出せない。 そこでガソリンの主要成分であるヘキサンという溶剤を加えることで70%以上の油を抽出できる。 その結果、大豆から実に90%以上の油を取り出せることになる。 もちろん一般人が初めて知ったときはドン引きものである。



「大丈夫だ。ヘキサンは70℃ぐらいが沸点だから低温加熱処理すれば蒸発する」


 そして加熱すると油の質が変化する可能性が高いので減圧工程を加えることで低温で除去できる。


「……うーん、健康に害が無ければ問題ありません。それより大豆の残りはどうするんですか?」


「たしか調味料の原料になった気がするけど、そっちは専門外だからわからないや」


 推測だが――他には家畜のエサや化学肥料の原料があり得るだろう。


「でしたら研究所で発酵実験の原料に使っていいですか?」


 ……でたな錬金術師の謎の実験癖。 よかったら納豆と豆腐と醤油を作ってください!


「それじゃあ、次の種まき用以外は大豆油と発酵研究用に利用するという事にしよう」


「はい!」とてもいい返事をする錬金術師。



 ――――――。



 さてと、どうにかこうにかトリ肉を切り出して、大豆油をひたした鉄板の上で焼いていく。


 途中で岩塩をいい感じに振りかけて、味付けは塩だけの焼き鳥ができた。


 トリ肉の塩焼きだ。


 どれどれまずは一口、んぐんぐ。


「う、う……」


「あの工場長様?」


「うまいんじゃ~~!」


 うまいんじゃ~~。


「岩塩でもうまいんじゃ~~」


 岩塩でもうまいんじゃ~~


「こ、工場長様、お気をたしかに!!」


 無理なんじゃ~久しぶりの肉なんじゃ~。



 トリ肉――おいしい。


※注意

エアガンは運動エネルギー0.98ジュール以上から違法銃になります。

とても低い数値なので安易な改造で犯罪行為になります。

ですから市販品を改造してはいけません。

また金属製の銃のような物はそれだけで銃刀法違反になります。

以上。

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