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第16話 岩塩が伏線だと・・・

エレメンタル――古代魔法王国ではレイスと呼ばれていた。

魔力の塊に近いが一説には人の残留思念と言われている。

精霊教会では明確に悪霊の一種であるモンスターに分類される。

そのせいで精霊の一種とする学派と長い間対立している。


――エレメンタル・レイス闘争

 

 製紙工場では紙の繊維――紙粉が発生する。 だからこそ換気ダクトを通り集塵機へと集めた。 だがもしスライムなどが換気口から内部に侵入して風の流れが悪くなっていたらどうだろう? むしろ1トンほどの重量の魔物が安全率1しかないダクトを這いずり回たらどうなるだろう? さらには集塵機へと落ちた衝撃で装置が倒れたらどうだ? その際に紙粉が工場内に大量に舞ったら?


 …………。


 ところで火元は何だ? 紙粉が浮遊すれば粉じん爆発の条件としてあり得るだろう。 しかしロール紙を切るだけの作業場の火元とは何だ?


 こういった着火源の特定は不可能だ。 それでも推論は可能だと思う。 例えば金属のカッターと定規がこすれた時に火花が散れば発火する可能性はある。 他にはブロンズゴーレムが紙と接触して静電気発火の可能性も十分にあり得るだろう。 

 何にしても粉じんが煙のように舞っていたら爆発の理由としては十分だ。




「――という脳内工場シミュレーションの結果が出たんだがどう思う?」



「工場長、そんなことよりこれからどうするかを考えましょう」


「あ、はい」


 そう、いまだに船をまともに動かす手段がなく困っている。


 ロープを近くの樹に巻き付けようとしたが、水流の速さから衝撃で転覆する可能性があると判断し止めることにした。


 なにせ鋼鉄の平板なんだからしょうがない。


 体力の温存のためにオールで漕ぐのもやめてしまった。


 スタミナ切れで魔物と対峙したらその時点で終わりだからだ。


 ――つまり体力の温存をしつつ頑張って船を動かさないといけない。


 そうなると換気用のプロペラに踏み車を取り付けるのはいいアイデアな気がする。


 しかし試そうにも辺りは薄暗くなってきた。


 すでにランタンの火を灯している。


 暗闇の中ボートを漕ぐのは危険だ。


 さてどうしたものか?



「工場長、北の森にアレがいます」


「――ッ!?」


 薄暗い森の合間から木漏れ日のような光が差している。


 その光の中心に目をやると、ゆらゆらと球状の人魂が漂っている。


 北の魔物――いや、アレは本当に魔物なのだろうか?


「レイスが一体か……」


「すぐに数が増えるでしょう――静かにやりすごします」


 そう言いながらランタンの火を消す。


「アルタ、後ろに……」


「……ん」


 レイスとゴーレムは相性が最悪だ。


 両方とも物理攻撃が効かない性質に加えて、レイスは魔法で攻撃してくる。


 そうゴーレムだけを確実に倒せるということだ。


 だからアルタは申し訳なさそうに背中に隠れている。



 ――人魂が増えたな。



 このレイスの生態はよくわからない。


 しかし川を渡ることができないと思われる。


 判っているのはそれだけだ。


 ヴァンパイアが流水の上を移動できないのと同じように飛んでくることができないようだ。


 未だによくわからない魔法とか魔素という要素が流水で流されるのかもしれない。



 ――また増えた。


 5……50……100。


 増え続ける人魂によってまるで北の森が輝いてるかのようだ。






 ………………。


 …………


 ……。





 夜が過ぎ去り、空が青く染まる。


 それから一睡もできずに警戒し続けたが襲われることはなかった。


 近づかなければどうという事はない。


 と、名言風に言ってしまえばそれまでだが極力北には行きたくない。


 魔法を扱えない以上、対処のしようが無いからだ。





 ◆ ◆ ◆





「よっと、モノこっちこれるか?」


「モァ!」と鳴いてからポンツーンを跨ぐ。


「それでは次の桟橋を作りますね」


 そう言って分割したポンツーンの一部をインベントリに収納して目の前に出した。


 今は桟橋ベルトコンベアという謎の方法を使って湿地帯というよりドロ沼を移動している。


 あれから運よく沼地に流れてくれた。


 ここは川の流れがないから安定してくれる。


 そして特に魔物もいないので安全に移動することができた。


 昔みたバラエティー番組にある浮島を走って渡りきるという企画と似たようなものだな。


 とにかく地道に前進するしかない。



 この沼地は生物が死滅しているのか死の沼と形容してもいいぐらい生き物がいない。


 たまに泡が吹き上げて不気味な印象だ。


 腐った匂いも漂っている。


 身体に悪そうだからマスクとゴーグルもしっかりしている。


「この調子だと今夜は沼の上で野宿だな」


「仕方がありませんね」


「モァモァ……ふぁ~」


 モノも疲れてきたようだ。


 それからできる限り東に進んでから休息することにした。


 休むためにポンツーンの配置を組み替えて真四角に近い島にする。


 そして中央で焚火をする。


「ふぅ、表面がコンクリートで助かったよ」


「本当ですね――暗くなる前に陸地が見えたので、明日の朝には沼を抜けられると思います」


「たぶんゴーレム達もこちらに向かっているはずだから明日には合流できるだろう」


「はい、そうですね」


「そういえば西の湖とこの沼って昔は存在しなかったんだっけ?」


「はい、当時は森も湖もなく――運河が続いていました」


「うーん、なんで湖が出来たんだろう――不思議だ」



 ――ピチャ、ピチャ。



「――ん? なんか音が……」


 辺りを警戒したその時、『ザパッ!』と何かが浮島に上がってきた。


「これは小型のバイパー! スワンプバイパーです! 毒を持っているので気を付けてください!!」


「キシャァァァァ!!」


 沼からヘビ型の魔物が口を開き威嚇しながら飛びついてきた。


「くっ! おりゃ!!」


 たき火の木材で沼に叩き落す。


「どんどん来ます!!」


「暗くてよく見えないな――くそっ! もっと松明をくれ!!」


「わかりました――な、囲まれています!」


 光量が増えて辺りを見るとスワンプバイパーがぞろぞろとこちらへやってくる。


「うげ、きもちわるぅ……」


 それでも何とかちぎっては投げちぎっては投げ蹴散らしていく。


 たぶん沼に足をとられた相手を一方的に攻撃する魔物なんだろう。


 安定した足場の上だとそれほど脅威でもないな。


 アルタは重金属なのでこの手の敵にはとても強い。


 ただ本人が非戦闘員なので上手く捌くことができない様子だ。


 こればかりはしょうがない。


「あ、そうだモノは大丈夫か!」


「モゥ! モゥ!」


 バイパーを叩いては放り投げ、叩いては放り投げ。


 毒牙に刺されようが気にせずに一方的に攻撃し続ける。


 毒耐性魔物にとってバイパーはザコでしかないようだ。


 すげーな最弱と言っても相性によっては一方的に勝つんだ。



 ――数時間後。



「ぜぇ……ぜぇ……ん?」


 結構な時間戦い続けていたらバイパー達が何かにおびえるように逃げていった。



 その方角を見るとゆらゆらと人魂がいくつも並んでいる。



「まさかレイス! 南側には居ないと思っていたのに……工場長逃げる準備を――」


「んん~~? いやアレは違うぞ。あれは――」



「あー工場長みーつけたー!」


「二人を発見! 発見! 総員集合せよ!」


 どうやらランタンを片手に持ったゴーレム達がすぐそこまで来ていたようだ。





「工場長―!」


 そう言ってランタンを振るゴーレム。


 しかし足元の沼からガスが噴出したと思ったらゴーレムが炎に包まれた。


「わー燃えてるーすごーい」と自身が燃えていてもなんとも思わないゴーレム。


「な、天然ガスか!!?」


「引火したら危険ですね。すぐに火を消します!」


 それから松明とランタンの火を消して天然ガスの火柱を頼りにゴーレム達と合流するために歩き始めた。



 ◆ ◆ ◆



 合流を果たしてなんとか天然ガスの火を消すことに成功した。


「――天然ガスを有効利用するとしたら何でしょうか?」


「飛行船の浮力に使える。それ以外にもガス溶接とか生産能力向上にも役に立つな」


「それでは容器に入れて研究所で成分を調べましょうか?」とアルタが提案してきた。


「そうだな。ボーリング調査の器具を使って穴をあけよう。ガスを取り出したら穴を塞いで次の計画を立ててからどうするか決めよう」


「わかりました。それでは準備を始めますね」


 そう言ってボーリングマシンでどんどん穴を掘り下げていく。


 数時間して穴からガスを取り出す準備が完了する。


「それでは行きますよ」


「オーケー」


 ――ゴゴゴゴゴゴゴ。


 ん? なんだ? 何かが上がってきている?


「なあ、アルタちょっと嫌な――あ!」


 言い切る前に地面から『ブシャーー』と黒い液体が噴出した。


「キャア!?」と驚くアルタ。


「これはまさか石油なのか」


 天然ガスではなく石油を掘り当ててしまった。


 というかなんでこんなところで石油が出るんだ!?


 一体どうなっている?



 岩塩ドーム――結晶化した岩塩は強固な不浸透性地層となる。 岩塩ドームとはそんな岩塩の層が地殻変動や地形の圧力によりドーム状に上へとせりあがったものを指す。 その結果、水も油も通さない岩塩の塊が同じく不透性の岩盤とぶつかる場所に石油や天然ガスがとどまる。 そうしてできた油田として有名なのがメキシコ湾海底油田となる。 強固な岩盤の上に築いた都市の真下に岩塩ドームが形成されていた場合、その周辺に油田があるのは特段不思議な事ではない。



「工場長! どうします!」


「ああ! そうだった。これは体に悪いからすぐに都市に戻るぞ!」


「わかりました。とりあえず容器に入れたら穴を塞ぎますね」


「そうしてくれ!!」



 石油か……まずは都市に戻って体勢を立て直すとしよう。


 石油を扱うのなら計画を練ってからじゃないとダメだ。


 だが5年はかかるだろうと覚悟していた計画が一気に前倒しになるな。


 ああ、夢物語のような脱出計画がやっと現実味を帯びてきた。


 あと少し、あと少しだ。


 そう未来に希望を持ちながら都市へと帰還する。





 第四章 完


 ――次章 石油の時代へ続く。


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