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第1話 レンガ窯

三代目勇者は多数の仲間たちと第二次精霊軍十万人以上の大群が魔大陸に攻め入りました

勇者、聖女、魔導士、錬金術師、軍を指揮する将軍に軍師とても優秀な人材を連れて進撃しました。


そして殲滅しました。


唯一生き残った魔導士はその時の記録をすべて書物に書き残しました。

魔大陸に関する第一級資料と同時にあまりの内容に真偽が今でも疑われています。

それ以降、各国は魔大陸奪還を半ば諦めて内乱の時代に入りました。


――帝国の歴史について

 最初は何もなかった。


 それが一ヵ月で鉄採れるようになり、さらにもう一ヵ月で銅が採れるようになった。


 順調、とてもいいことだすばらしい!


 ……しかし規模が大きくなるという事は問題も大きくなるのは必然だ。


 今の問題はなんといっても燃料不足になる。


 なにせ鉱山を燃やすというクレイジーな事から、エナメル線を乾かすというスモールな事まですべて木を燃やして対応している。


 新しい事を試すたびに毎日トン単位で木材を消費していく。


 せっかく作ったモーターは測定器が無いから制御不能状態でまだまだ使い物にはならない。


 オーケーだからこの問題を解決するために、ちょっとそこまで炭鉱を開発しに行ってくる。


 だがしおかし、ここで現実という問題が立ちはだかる。




 第一の問題は食糧が尽きた。


 またしても食糧調達をしなければならない。


 まあこれに関してはいつものことだからなんとでもなる。




 第二の問題は調査に出ていたゴーレムが三割全滅した。


 つまり魔物が襲ってくるという事だ。


 話を聞いてみると視界の悪い森の中で突然《謎の集団》に襲われたという。


 ヒト型に近かったと言っているが要領が得ない答えばかりだった。


 ヒト型の魔物と言えばゴブリンとかが定番だろう。


 しかし連弩があまり効かなかったと言っていたからもっと別の魔物かもしれない。


 なんにしても視界の悪い森の中では不意打ちに対応できない。


 だから森を迂回して東の山沿いに南下して石炭がある場所に行く――という形になる。


 あとは現地調査をしながら方針を決めるしかない。




 第三の問題として矢の充足率が低下している。


 連弩による物量作戦は素晴らしい成果を上げているが連射兵器の弱点も露呈している。


 当たり前の話だが連弩は矢の消費が大きすぎて拠点の防衛そして隊商の護衛どちらも足らなくなっている。


 つまり矢の大量生産が必要になった。


 これも解決しなければいけない。




 第四の問題として石炭をそのまま使うのではなく木炭のように乾留してコークスにしないと燃料として使えない。


 つまりコークス炉を作る必要がある。


 そうなるといつもの様に、そのためのレンガを作らなければいけない。




 《食糧》集めて、《武器》作って、《レンガ》を作る。


 全部集まったら《計画》を立てて石炭鉱山目指して進撃だ。


 大まかに四つぐらい問題があるけど何てことはない、いつものことだ――楽勝だね。




 ◆ ◆ ◆




 始まりの街の一角に小さい丘のような建造物ができている。


 その前にはいつもの二人と多数のゴーレム達が建設作業をしていた。


 そしてついに建築物ができあがったのである。


「という事で声を大にして硫黄! ホフマン式レンガ窯の完成だー! イエーイ!」


「あまりはしゃがないでくださいね。それでも今までで一番大きな設備ができました」


 少し自慢げに誇っているブロンズ騎士風錬金術師のアルタ。


 彼女の錬金術でニョキニョキしながらこの大窯を作り上げた。


 このレンガ窯は中央に巨大な煙突が一つあってその周りを16に区分けされたレンガ窯で囲んでいる。 ちょうどピザのように区分けしてあり、一つの区画に1~3トン程度のレンガを積み込んで焼く事ができる。 順番に窯に火入れしていくことによりレンガを連続して作れるようになっている。 これにより火入れ工程、焼成工程、冷却工程、取り出し工程、そして積み込み工程、さらには補修工程を順番にローテーションすることができる。 燃料の投入も上から木炭あるいはコークスの粉末を投入することで効率よく常に一定の生産ができるようになっている。 計算上は年間1000トンはレンガを作ることができる!


 ――つまり最大毎日3トンのレンガが作れるってわけだ。 サンキューホフマン!


「ところでどのレンガを焼くのですか?」


「レンガも種類が多いからね。日干しレンガから高炉用耐火レンガまでいろいろある。だから欲しいレンガを作らないといけない」


「それで各鉱山や周辺の土地からいろいろな土を持ち帰ってきたのですね」


「そういう事」


 一般的な赤レンガは鉄が豊富に含まれている。


 だから鉄が酸化してアノ特徴的な赤色になる。


 逆に高炉用のレンガは鉄分少なめで白に近い色をしている。


 さて耐火レンガを作らなければいけないんだけど細かなノウハウは知らない。


 それでもどのような材料が必要なのかはある程度知ることはできる。


 なにせ名前から材質が割れているのだからヒントとしては十分だ。


 欲しい耐火レンガの名前はアルミナレンガあるいはマグネシアレンガになる。


 アルミナはもっと南の赤道直下ぐらいじゃないと見つからないだろう。


 という事で代わりにマグネシウムを見つけ出さないといけない。


 だがまたしても運がいいことに開発した鉱山からマグネシウム豊富な鉱石が手に入った。


「というわけで、手に入れたのが《ドロマイト》になる」


「たしか石灰岩採掘場で採れた石ですね」


「イエスその通り、毒重石というヤバいやつとは違うところで手に入った。このドロマイトは見ての通り石灰石と似ていてカルシウム分が途中でマグネシウム化したもの、とか言われている」


「それでは謎の石灰石ですね」


「ははっ、そんなところだな」


 マグネシウムを豊富に含んだドロマイトならいい感じの耐火レンガになってくれるはずだ。


 ただそれでも懸念はある。


 耐火レンガというのはその性質上どうしても高炉レベルの高温に耐えないといけない。


 つまり一般的なレンガ用のホフマン式レンガ窯ではうまく焼成できない可能性が高い。


 本来なら電気炉なんかでありったけの電力を使って超高温で作るはずだ。


 だから比較的低温のレンガ窯では上手くできない可能性が高い。


 ではどうするのか?


 ここはやはりいつもの錬金術で錬成するのがいいだろう。


 失敗しても別に構わないのだ。


 成功したら自動化によってアルタの負担が減る。


 失敗したら別の方法を考える。


 それだけの話だ。




 ◆ ◆ ◆




 その後、レンガを1号窯に積み上げて入口を閉じた。


 上にある小さな投入口から発熱した木炭を投入して火入れした。


 後は翌日に2号窯、その翌日に3号窯と火入れしていって全16号窯すべてに火入れをおこなう。


 焼成には1週間はかかるだろう。


 つまるところ8号窯に火入れしたときに1号窯のレンガが焼きあがるってことになる。


 取り出しに1日、補修に1日、積み入れに1日――そうやって11号窯に火入れしたときに1号窯の準備が整う。


 アクシデントがあっても1週間ほどあれば何とか解決できるだろう。


 毎日問題が発生したらさすがに困るがそうじゃなければ十分に対応できるはずだ。


 ん? 毎日問題が発生するのはいつものことだから気にしてもしょうがないか。


 それに炭鉱に遠征に行く関係から問題が発生してもスグには対処できない。


 ……まあ爆発しなければ別にいいか。



「さて、焼きあがるまで1週間はかかるから、その間に食糧と武器の問題を解決しよう」


「わかりました――ただ今日はもう遅いですので明日からにしましょう」


 言われてみるともう夕方になっていた。


「もうこんな時間か――ふぁ~……そうだね今日はもう寝るとしよう」


 あまり居つかないギルドの寝室で少し寝るとするか。


「それでは私は中央のお城に行きます。夜は危険ですので何かありましたら鐘を鳴らしてください」


「了解マム」


 ギルドの屋上には開門時とかに鳴らす鐘を設置してある。


 何かあったときはそれを鳴らすことにしている。


 アルタはその不死の体から特に寝ることもなく作業をし続ける。


 今は中央の城で最近手に入れた青い花のガーデニングと怪しい薬草の栽培をしている。


 実益を兼ねた趣味ってやつだ。


 だがたぶん本当は別の要件もあるんだと思う。


 ただ、ねほりはほり尋ねる趣味はないので深くは追及していない。


 それよりも寝る前に石炭の掘削計画を練りながら明日に備えよう。


謎のガーデニング


アルタ「こっちは毒消し草……こっちは痺れ草」


アルタ「この青い花はどんな効能があるのかしら……うふふ」


~~~~


工場長「はっ! 何か悪寒を感じた。今日はもう寝よう――そうしよう」


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