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第13話 銅の電解精錬

おお、おめーさんか。


その後、銅細工師としてうまくいったか――。


ってどうしたんだその腕は?


腱鞘炎で動かなくなったからクビになっただぁ!?


しょうがねえな――腕を使わなくていい仕事を回してやろう。


なーに同郷のよしみだ気にするな。


そうだなやってもらう仕事は『踏み車漕ぎ』だ。


――またしても仕事斡旋業の男


 衝撃のあるいは笑劇の出来事から落ち着きを取り戻すことができた。


 とりあえずこの件に関しては掘り返さないことにした。


 それでも作業場にくっころ系さまよってるヨロイが錬金術でいろいろ作るというシュールを通り越したシュールが目の前で繰り広げられている。


 顔の筋肉は制御不可能だが作業マスクでなんとか隠している。


 腹筋は鍛えるしかない。


 オーケー開発を進めよう。




 いろいろあって残りの開発項目は――。


『銅の電解精錬』

『磁力選鉱』


 ――の二つに絞られた。



 この《電解精錬》は始まってから結果が出るのにそれなりに時間がかかる。


 そこで先に銅の電解精錬をするために永久磁石モーターを作る。


 電解実験が始まればその間は時間が空くので、その間に磁力選鉱の開発を始める。


 ――という順番がいいだろう。



 という事で今日は永久磁石直流モーター、通称ダイナモを製造しようと考えている。


 ダイナモというのは本来なら発電機という意味合いが強い。 ただし今では自動車業界ではバッテリーへの充電と電子機器の稼働用の小型発電機といった方が知っている人が多い。 この業界特有の事情からコンパクトで量産性があり軽量であることが求められた結果、永久磁石とコイルを組み合わせたダイナモが採用されガソリンエンジン普及の立役者となった。 しかし近年、電子機器の消費電力の増加に合わせて交流オルタネーターへと主役が移っていった。



 そんなダイナモの製造は――。


 発電機用として頑張ってマキマキした自励式と違って、コイルをとりあえず9個ぐらい作る。


 出来たコイルをとりあえずローターにくっ付ける。


 あとは外側のステーターに永久磁石のNとSを交互に貼り付ける。


 量産性が第一のダイナモは構造がシンプルで作りやすいからステキ。


 ん?


 違うな構造がシンプルで作りやすいモーターをこれから開発するのだ。


 よろしい、では始めよう。



 ◆ ◆ ◆



 一日中マキマキしてなんとかモーターを数個作ることができた。


 やったこととしては量産性を第一にしてコイルを自動で巻き上げる水車式コイル巻き上げ機を作った。


 あとはネジで固定して組付けるだけでモーターができる。




 さてモーターができたという事はこれでやっと本題に入れる。


 《銅の電解精錬》というのは高校化学で将来に役立たなそうだなーと思いつつ学ぶアレだ。


 水の電気分解と考え方は一緒なのでモーターさえあれば電解精錬自体はさほど難しくない。


「とりあえず銅鉱山に平屋の工場を建てることから始めるか」


「いいと思います。製造工程の流れから溶鉱炉の近くでよろしいかと思います」


 アルタの提案通りに空き地の一角に電解精錬所を建てることにした。


 すぐ近くの岩の上ではモノが「モグゥ~~」と鳴きながら寝ている。


 果物以外になにか食べた所を見た記憶がないな。


 もしかして光合成でもしているのか?


 そんなことを考えつつも、最近は武装の強化が進んでいるからそのうち解放していいだろう、と別の事を考えてしまった。


 エンジニアはテイマーじゃないのだから魔物に執着する理由はない。


 こっちの都合であっちこっち連れまわすというのも実はあまり好きではない。


 もう少し装備が整ったら放してあげよう。



 アルタとゴーレム達が新しい工場を建設していく。


 多数のゴーレムによる力業の建設――ニョキニョキは見ていて面白い。


 見た目は平屋の倉庫みたいだが、そのほうが現代ぽくて少し気に入ってる。



 ◆ ◆ ◆



 さて工場の外観よりも中の装置の方が重要だ。


 電解精錬の理論は粗銅と純銅を交互に並べる。 そして分解槽に謎の液体に入れて電気を流す。 すると粗銅から銅だけが電気分解して純銅側につく。 電気分解したときにちょっとしたレア金属が分解槽の下に溜まる。


 錬金術があるからここまでスムーズに来たが実はけっこう無理難題なのが高校化学の理論だったりする。


 そもそも原始人に純銅を手に入れる手段がない。


 例えば純度99%以上の純銅を手に入れるために電気分解が必要。


 そして電気分解にはモーターが必要。


 モーターには純銅を使用したエナメル銅線が必要。


 いえーい! ループした!!


 だからここまで来るのに何百回と質の悪いモーターを作って改良して性能を上げ続けて、やっと電解精錬ができるという地味に時間のかかる方法を取らないといけない。



 それを省ける――これだから錬金術は最高だぜ!



「電解槽はできたことだし――それじゃあ粗銅と純銅板を交互に並べて――」


「工場長、こんな大きい銅板は僕らじゃ持てないよー」


 しゃべるメットが事実を指摘した。


「なるほどメットちゃんの言う通りだ――よし、クレーンみたいなのを作ろう」


「くれーんですか?」


「ああ、作業現場では必須の重機だな」


 まあクレーンといっても別に油圧や電動クレーンを作るわけじゃない。 もっと古代人向けの――人力クレーンみたいなの! 構成は単純で動力に《踏車》そして持ち上げにロープと滑車を使うだけだ。 クレーンの概念の歴史は古く紀元前のギリシャにはすでに存在している。 そのぐらい古くから現場のパートナーとして活躍していたのがクレーンだ。



 ◆ ◆ ◆



 ありものの材料ですぐにクレーンができた。


 でき上った《人力クレーンみたいなの》は踏車というよりはハムスターのコロコロを彷彿とする形状である。 コロコロの横にはいわゆるウィンチというロープが巻かれたものが付いている。 そこからクレーンらしく木の長い棒そして先端に滑車までロープが張っている。 もちろんロープの先端にはフックが付いていて踏車をゴーレムが歩いて回すとフックが上がったり下がったりする。



 ――ホントに人力!


 で、このクレーンみたいなのはプーリと滑車を組み合わせれば最大2トンは持ち上げられるはず。


 水車で回すという案もあったが、アレは急には止まらないので却下になった。


「ということでクレーンみたいなので銅板を持ち上げてみて」


「がんばりまーす。コロコロ~ころころ~」


 そう言いながら助手ゴーレムが前に歩いていきフックを上げていく。


 そして精錬用の銅板を持ち上げる。


「おお、上がったな!」


「私達の文化にはないものですね」


 そう青銅の錬金術師が言う――いわくチェストや魔法そして身体強化などなど持ち上げるコストが低い文明らしくこういったものは発達しなかったそうな。


 それにしても端から見ると一日中コロコロ内で歩き続けるとかシュールだな。


 古代人の過中にはコロコロのなかで歩くことに生涯を費やした人とかもいるのだろうか?


 おっとまた古代に思いを馳せてしまった、集中集中!



 この銅板の陰極、陽極両方とも5㎏ぐらいだ。


 ただし交互に20枚は配置するから最終的に100㎏になる。


 これを筋肉で解決するだって!? ナンセンス!


 それに作業中の電解槽は《謎の劇薬》で満杯になる――たとえ脳筋でも手作業厳禁だ。


「工場長、あとは電解槽に劇薬をいれればいいのですね」


「その通り、洞窟から採ってきた青い結晶を出してくれ」


 銅の電解精錬には電解液が必要になる。


 この電解液を《硫酸銅》といって何とか見つけなければならない。


 だがすばらしいことに地下洞窟で手に入れた『蒼きカルカンサイト』こそがその硫酸銅の塊である。


 ということで集めた青い結晶から硫酸銅を繊細にそして知的に取り出さなければならない。


「よーし全部水に放り込め!」


 カルカンサイトは水溶性だ――だから湿気の多い国では保管が難しいと言われている。


 水に溶けだすことでとても体に悪そうな青々とした電解液になった。


 猛毒で触ると火傷するから耐薬品作業手袋は必須なんだけど。


 そんな都合のいい物がないので代わりに耐薬品ゴーレムつまりストーンゴーレムに作業を任せる。


「それではアルタさん純銅と粗銅を交互に並べてモーターを――つながってるな」


「本当にうまくいくんですか? あと漏電? の心配があるので十分に離れてくださいね」


「イエスマム、化学式は正しいから大丈夫なはずだ。よし、水車を回せー!」


 水車でモーターが高速回転しだす。





「……今のところ変化はないな」


「工場長。いつまでかかるー?」


「だいたい10日ぐらい――だからその間は違う作業をする予定だ」


 10日後まで体育座りをするつもりはない。


 その間に『磁力選鉱しようぜ』計画をすすめる。


 これで鉄の生産量が上がれば鉄と銅の開発は一区切りといったところか。


 さあどんどん開発を進めよう。

ストン「 ▯」「なんと9万字を突破しました!」


ウッド{ ▯}「パチパチパチ、ところでこの微妙に覚えにくい作品の題名ってこのままでいくの?」


ストン「 ▯」「元々題名があらすじポイほうが読んでくれるらしいよって理由の題名だからキリがいい段階で変えるって」


ウッド{ ▯}「ちなみにどんな題名?」


ストン「 ▯」「『ファクトリー・マネージャー ~自重しない工場都市開発記~』って感じにするらしいよ」


ウッド{ ▯}「ファクトリー・マネージャー英語で工場長。ああ~そうだね~そのものだね」


ストン「 ▯」「もっといい題名を思いつかなかったら10万字達成で変えると思います。今後ともよろしくお願いします」

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