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第8話 地下洞窟

↑頭上注意!


↓足元注意!


――現場にある看板

 

『カン カン キン!』


 鉄器人らしく鉄のハンマーで鉱物を叩いて中身の確認をする。


「そっちの石持ってきて」


「はいはーい」


 いくつかの鉱物を見てはとりあえず『カンカン』と叩いたりナイフで傷をつける。


 だがどれもハズレだ。


 もしも《鑑定》とかいう便利スキルがあれば楽なんだろうけど――無いから総当たりで物色するしかない。


 地味な作業ではあるが鉱物を一つ一つ調べるのはけっこう好きだ。


 お宝探しのようで本物の山師になった気分になれる。


 そうなるとこの『お宝探し』は普通の人間にしか体験できないってことだ――いいね。


 銅鉱山から出てそれなりの山々を調査した。


 ありふれた鉱物のはずなのにまだ見つからない。


 そう思っていたら――。


「キラキラの板っぽいのありましたよー」と言いながら採掘ゴーレムがこっちへ来る。


「――お! 見つかったか! そこにワームの穴があるから気を付けるように」


「はーい」と言ってワームの穴を避けてくる。


 ワームを追い出してから鉱山周辺にはワームの穴がそこら中にある。


 落ちたら面倒だから気を付けないといけない。


 ま、よほどマヌケじゃない限り落ちたりはしないだろう。


 ――さて目的の鉱物なら表面がはがれるはずだ。


 ためしに表面の数百枚をペリペリと剥ぐと弾力のあるシート状の物が取れた。


 このキラキラと輝く鉱物は間違いなく『きらら』だ。



 きらら――または雲母と呼ばれる鉱物は古代中国では仙人が食していた仙薬と伝えられていた。 特徴は薄いシート状に剥がれること、薄くどこまでも剥がれることから『千枚はがし』と呼ばれるほどである。 工業的に価値のある特性をいくつも兼ね揃えているが、ありふれた物であり注目されることが少ない鉱物である。



 ――工業的にはマイカって呼ばれている。


 加工したマイカプレートはモーターの絶縁体としてとっても優秀!


 耐熱性が高く絶縁体ってこともあり真空管やコンデンサの謎の部品として使われてきた。


 もっとも樹脂で固めて筐体の中に隠されるから一般人にとっては電化製品に使われる謎の電子部品の中にある謎の素材でしかない。


 とりあえず目的の鉱物は見つかったことだしさっさと帰ろう。


「アルタさーん、モノ―帰るよー」


「わかりました団長、あともう少しで追い払えるので少々お待ちください」


 そう言いながらお邪魔物と戦闘中の鉱物調査団副団長殿――対するはあのダイアウルフ。


 そして部下たちは接近戦になったときのために肩にはトゲパット、そしてヘルメットにはトゲによるモヒカンスタイル。


 世紀末味あふれるゴーレム達が『ヒャッハー喰らいやがれ!』『オラララララ!!』と叫びながら連弩を放っている。


 この新しい弩は『連弩』という三国志時代に諸葛亮が改良したものを再現した兵器だ。


 そして防御用に馬防柵みたいに有刺鉄線の柵を設置した。


 前回やられたのは狭く岩陰の多い場所で単発式のクロスボウで戦ったからだ。


 数が少なく簡単に避けられてあっという間に全滅した。


 そこで今回の遠征のために連射式の連弩そして馬防柵を用意した。


 広くて見晴らしのいい場所のみを選んで移動してきた。


 襲ってくるお邪魔物に対して『パシュッパシュッパシュッ』と音を立てながら矢を連続して出す連弩。


 1分間に50発以上発射するこの兵器を50台ほど用意した。


 つまり戦術はこうだ――当たらぬなら、当たるまで増やそう、諸葛弩よ。


 このためにチェストを量産して物資を大量に運べるようにしてある。


 大量の矢が面で魔物に襲い掛かる。


 狙い撃つ事をやめて散布射撃をおこなうことで回避不可能な攻撃を繰り返しダイアウルフにダメージを与え続ける。


 例え避けることができても地面に刺さった矢は次の回避を邪魔をする。


 一本また一本と矢が刺さっていく。



 何度か接近して得るものが無いと悟ったダイアウルフは「ワオーン」と遠吠えをしてから遠くへと去っていく。



 こんな事をずっと繰り返している――あいつら全然学習していない。


 たぶん一匹狼のタイプが単独で襲ってきてるんだろう。


 しかも風上から来ているからモノがいることに気づいてないんだよね。



「矢の回収も終わりましたので出発しましょう」


「ああ、それじゃあお手柔らかにお願いするよ」


 もはや諦めの境地に達しはモノは「モゥ……」と鳴きながらオリの中に入る。


 来た時と同じように鉄のオリに揺らされて銅鉱山へと向かう――うっぷ吐きそう。



 ◆ ◆ ◆



「工場長、見てください。青い花がきれいですね」とすぐ近くの丘を指していう。


「そうだねアルタ君。ちょっとそこで休憩したい――ッ!!?」



 そう言って丘の方に近づいた時――。


 突然

  地面が

    崩れて

      オリを

        担いだ

          ゴーレムと

              一緒に

                滑り落ちる。



 鉄のオリは斜面を滑りゴーレムは地面に押されて砕けていった。


 「ノオォォォォォーー!!!!」

 「モォォォォォォーー!!!!」



 …………


 ……



 気が付いた時には暗い洞窟にマヌケが二人になっていた。


「イててっ……暗いな――洞窟か……」


 モノも「モゥ……」と鳴きながら辺りをキョロキョロしている様子。


 よく見ると檻にしがみついていたゴーレムが一体だけ残っていた――残りはいない。


「わーお……すごかった!」と喜ぶゴーレム。


「モモゥ……」と鳴きながら地面にうなだれるモノ――。


 よし、落ち着け。


 こういう時のために緊急チェストがある。


 中には松明や食料そしてお手製ポーションが入っている。


 まずは火を点けて現状の確認だ。



 ◆ ◆ ◆



 松明の明かりが辺りを照らす。


 どうやらワームの巣を転げ落ちて、天然の洞窟に出てしまったようだ。


 不幸中の幸いなことにワームの魔物はいない。


 さて来た道を戻ろうにもかなりの勾配と滑りやすい地面になっている。


 さきほど入口の方から聞こえたアルタの声によると『錬金術で階段を錬成しながらそちらに行きますので待っていてください』とのこと。


 ――それまでここで待つほかない。




 ただ待つのはもったいない。


 この天然の洞窟ならば鍾乳石のような天然の鉱物が手に入る。


「という事でゴーレム君にはこの辺一帯を調べて鉱石を採ってきてもらいたい」


「はーい、さっきの続きですねー」と言いながら鉱石生命体が功績を上げるために鉱石を取りに行く。


「ああ、そうそう――洞窟内では絶対に上を見上げるなよー」


「なんでー?」とゴーレムが疑問にを呈して首をかしげたその時。


『コツン』とちょうどヘルメットに小石が当たる音がする。


「上からノックだよ?」と言いながら目の前のゴーレムが忠告を無視して上を見上げる。


「――ッ!!?」


 次の瞬間、崩落した岩盤の一部がちょうどゴーレムの顔面にめり込んだ。


 そして頭部についていたゴーレムコアとヘルメットが足元にまで転がってくる。


 こうして最後の生存ゴーレムがやられてしまった。


 とりあえず目の前のコアを拾い上げる。


「このように洞窟の天井は案外脆いから、坑道とかで上見て事故になるケースがあるんだよ」


「わーお頭つぶれたー」と相変わらずの反応。


 モノはというと「モガモガモガ……」と震えながら頭に手を当てて守っている――鉄のオリの中で。


 安心感を与えるために落ちているヘルメットをモノに装備してあげた。


「モォ!」と驚きながらも喜んだ。


 『スンスン』と匂いを嗅いでから――松明を持ちオリの外に出ていった。




 ――ってなんでやねん!?


 これだからマヌケモノはマヌケで困る!


 どうする連れ戻すか?



 …………。



 ……。



 ――静寂。





 『オォォォヒュオォォォォ』とうめき声のような音。



 そして突然、洞窟内に風が流れる。


 これは洞窟内で気圧差により生じる風の流れで、洞窟内の複雑な形状が少々恐ろしいうめき声に聞こえるだけだ。


 つまりどこかに出口があり酸素が供給されているってことだ。


 モノが向かっていった先に出口があるのだろう。




 ――――!




 遠くで『カン……カラン』という音が響く。


 こ、これはさっきの風で小石が落ちた音だろう。




 ……! …………!




 今度は『カタ……カタカタカタカタ……』と音がする。


 ……こ、これは落ちた小石の音が反響しているだったらいいな……。




 ――――静寂。




 無音の大合唱で鼓膜が静止する。


 動かないで救助を待つのが正解だ。


 だけどモノがいなくなるとアルタお母さんが悲しむ気がする。


「――しょうがないな」


 連れ戻しに行くとしよう。


 暗がりの洞窟の奥の奥。


 多分あるだろう出口まで――。



ウッド{ ▯}「雲母って結局何なの?」


ストン「 ▯」「両手に持ってジャンプするときの必需品だよ」


ウッド{ ;◎}「嘘だ!!」


ストン「 ▯」「豊富なエピソードがあるけど科学の発展と共に純粋な資源になった鉱物だね」

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