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第4話 水力掘削

黄銅鉱のモース硬度は3.5~4です。

3の方解石より硬く、4の蛍石より軟らかい。

ナイフの刃で簡単に傷が付けられる強度です。


――いろんなモース硬度その3

 ダイアウルフに襲われてゴーレムが3割ほどやられてしまった。


 それでもなんとか銅鉱山に着くことができそうだ。


 3割損失のことを軍事用語で『全滅』と言うらしい。


 つまり我々は全滅したのだ。


 もっともゴーレムはコアが無事なら錬金術ですぐに修復する。


 だからと言って対策しないわけにはいかない。


 そこでまずはゴーレム達が喰われないようにトゲパッドを付けて、さらにヘルメットにトゲトゲモヒカンを追加して襲われにくくした。


 そしてダイアウルフが逃げ出すほどの猛毒魔獣マヌケモノを鉄の檻の中に入れてエサは無いことをアピールする。


 もちろんボウガンと槍兵ゴーレムも配置する――準備は万全だ。


 ちなみにその檻の中に一緒に入れられてしまった。


 アルタ曰く『マヌケモノは一度負けた相手には手を出しません』と言い切った後に『工場長も不死身ではないので檻の中が一番安全です』と過保護の名の下に放り込まれた。



 だから今は――。


 ――世紀末風味のゴーレム軍団が。


 ――鉄の檻を御輿のように担いで。


 ――『わっしょい! わっしょい!』と言いながら。


 ――獣二匹を運んでいる。



 信じられるか? こいつらさっき全滅したんだぜ。



 ◆ ◆ ◆



 石灰岩の採石場を後にして揺られること数十時間、日が暮れるころに銅鉱山と思われる所にたどり着いた。


「やっと着いた……もう無理……うぷ」

「モゥ……うぷ」


 早く出たいが檻にはまだ鍵がかかっている。


「工場長、安全のためにも周囲の拠点化が済むまでは檻から出ないでください」と看守ゴーレムに言われてしまった。


 さすがに夜の魔物に襲われたらシャレにならないからここは大人しく檻の中で一晩過ごすしかない。


「……うぅ……やむなし」


 おかしい、一応この中で一番役職は上のはずだ。


 扱いがひどすぎるぞ!


「モゥ……ゥ…………」と鳴きながらマヌケモノは寝てしまった。


 もう暗いことだし寝よう。



 ◆ ◆ ◆



 翌朝。


 申し訳程度で点いていた焚火が色を失い、朝日に照らされて鉱山が露わになる。


 樹木が所々生えているが、その山は青いコスモスのような花が生い茂っていた。


「ふふ、とっても幻想的ですね」そう言いながら近くにある青い花を摘み取るアルタ。


 そして耳飾りとして器用に右耳の所に取り付ける――『あ、女の子だ』と思ってしまった。


 思考がそれた集中だ集中。


 銅の鉱脈はこの山の崩れた崖の所で発見した。


 ところで銅鉱石を拾った場所と銅鉱山の距離が離れているのはなぜだろう?


 ふむ――推測であるがワームがえさ場を求めて移動する際についてきたのかもしれない。


 ようするにたまたま腹の中に入って、移動した先でうんこと共に出ていった……。


 うーわ、頬ずりしちゃったよ!


 おっと思考がそれた――糖分足りなくて集中できてないな。


 集中しなければいけない。



 銅はとても重要な資源なのだから――。


 われわれの大計画は飛行船の建造。 そしてソレを動かす高馬力のエンジンを開発することだ。 そのために地下資源を効率よく掘削することに苦心している。

 そうなると銅は最重要だ――鉄よりも耐腐食性が高いという性質は燃料の精製で必要になる。

 他の特徴として加工性や耐摩耗性に優れている。 長期的に見ればアイアンゴーレムよりも製造難度が低いブロンズゴーレムを量産できればゴーレムの摩耗問題も解決する。

 そして何よりも電気工学への道を切り開ける。 つまりモーターを開発することができるってことだ。 モーターがあれば磁力を発生させて磁力選鉱つまり砂鉄を効率よく集めて鉄の品質と生産性がさらに上がるってことだ。



 ――結論、銅は必要! 夢が広がりんぐ必要!!



 ぶっちゃけやる事は鉄鉱山と変わりがない。


 水と炎による大規模な掘削システムの構築――。


 ――岩石の粉砕。


 ――鉱物の選鉱。


 ――溶鉱炉で溶かす。


 これで銅の出来上がり!


 できた銅から頑張って銅線を作る。


 頑張って銅線巻いてモーター作る。


 頑張ってモーターで発電してなんかいろいろ作る。


 いえーい! 10行以下で終る簡単な開発だ。


 拠点化が出来るまでもうしばらく待つとしよう。


「…………モォ」



 ◆ ◆ ◆



『ガチャン』という音が鳴り、ようやく檻から出所することができた。


 あれから丸一日使い拠点化してようやく青空の下に立つことができた。


 隣には務所暮らしの仲間マヌケモノ


 やっと外に出れて安堵した様子だ。


 さっそく岩の上で日向ぼっこをしようとするマヌケモノの肩を掴む。


 言わなければいけない――言葉は通じずとも同じ体験をした仲だ。


 たぶん理解してくれるだろう。


 だから思ったことを伝えることにした。






「帰りもよろしくな!」






 「モェ?」と最初は意味を理解していない様子だったが、徐々に自らの運命を察したのか――青ざめていくマヌケモノ。


「ゴーレム達、逃げ出さないように見張っておいて」


「はーい」といつもの調子で答え、3体ほどがマヌケモノの監視をする。


 旅は道連れ、世は無情。


 よし、これで帰りも安全だ。





 ◆ ◆ ◆





 何カ所かボーリングマシンで土を採取したところ、青い花の下には確実に銅鉱脈が存在することがわかった。


 もしかしたらこの花がこの世界の《銅草花》なのかもしれない。


 銅草花――大陸に咲く花であり、土中の銅を吸収成長する。 その特徴的な性質から銅が露出する土地に群生するという性質である。 土中の銅イオンが高濃度で銅草花以外育たないと言った方がより正確である。 山師たちの間ではまことしやかに『銅草花の下には銅が眠っている』と言い、一攫千金を夢見る者たちが銅脈を探して掘り返しているという。



 ――そうなると、この花を目印に調査をすれば銅鉱脈を大量に見つけられるかもしれない。


 あてもなく放浪するよりよっぽど現実的だ。


「工場長、いま表面の土を掘り返していますが――かなり時間がかかると思われます」とアルタがいつもの問題を提示してきた。


 鉄鉱山は岩肌が多く表土があまりなかったが、この山は表土に厚く覆われている。


「人力だと時間がかかりそうだな――たしか水源がすぐ近くにあるんだっけ?」


「はい、近くに川が流れています。一応川までを有刺鉄線とトラップで囲っています」


「オーケーじゃあその川の水を使って掘削をしていこう」


 この銅鉱山は鉄鉱山より倍以上の範囲があると思われる。


 根拠は青い花の群生している領域。


 さすがにゴーレムの手が足りないのでごく一部を開発範囲として柵で囲った。


 その川はたぶん《始まりの街》の中央を流れている河川へと繋がっていると思われる。


 川幅が広くゆったりと流れるのでうまく船を作れれば効率よく運搬ができそうだ。


 だが今は船問屋という江戸時代ではなく、青銅器時代という最先端の掘削開発をしなければいけない。


 船を作るとかはもう少し余裕ができてからだ。


 なーに、目の前に豊富な水があるのなら――物理学と物量で解決すればいいってことよ。



 ◆ ◆ ◆



 ローマ人も納得の水道橋を川から鉱山までニョキニョキと錬成していって、花畑まで伸ばしていった。


 これからやる事を考えると少々忍びないが――生き残るためだ一気にやってしまおう。


「それじゃあ――水を流せーー!!」


 そう大声で合図を送ると「了解でーす」と相変わらずの間延びしたゴーレムの返事。


 そのすぐ後に大量の水が水路を流れて銅鉱山の土砂と青い花を洗い流していく。


「ああ……すべて洗い流してしまうのですね」と少し悲しそうなアルタ。


 その傍らには青い花をいれた植木鉢――なんでも街に戻ったら育てるという。


 いま実行しているのは銅鉱脈を露出させるために、いらない土砂を洗い流す水力掘削というプロセスだ。


 水力掘削――歴史上古代ローマ時代に確立されたこの掘削手法は表土を洗い流す水力掘削、岩石を加熱する火力掘削そして岩を砕く水力破砕の3つのプロセスに分けられる。 彼の大帝国が繁栄したのはまさに英知を結集して『人力に頼らない生産方式』を編み出したことよる。 それにより余剰人員で強力な軍隊を作り上げ、その軍事力を維持することができた。

 この一大鉱業で培った水道技術が後の100万都市ローマ誕生の原動力となったという説すらある。



「よーし、三日三晩土砂を洗い流したらその次は山を燃やす火力掘削だ」


「はい、すでに大量の木材と燃料代わりの木タールの準備は整っています。」


 銅というのは空気中の酸素や水と反応して複雑な化学変化を起こして酸化する。


 新品と古い10円玉の色が全然違うのと同じだ。


 だから自然界の銅鉱石ってのは硬い岩盤の奥にしかなかったりする。


 ようするに表面の表土には溶けだした銅イオンは含まれていても産業として活用できるほどではない。


 という事で――もはやお馴染みの《火力掘削》で岩盤を砕いて銅鉱石を大量に集める。


 さあ盛大に山を燃やそうじゃないか!

ウッド{ ▯}「銅草花ってなーに?」


ストン「 ▯」「シソ科Cu耐性植物ニシキナギナタコウジュだと思われる。なお正確には何なのかよくわからない。学名:Elsholtzia splendensあたりだと思われるけど、中国語のサイトとにらっめこするのに作者が飽きて調べるのやめちゃった」


ウッド{ ▯}「おい作者~~」



ウッド{ ▯}「水力掘削ってなーに?」


ストン「 ▯」「水力掘削(Hydraulic mining)はハッシング(hushing)とも呼ばれていてなんと近代でも行われているホットな掘削法」


ウッド{ ;◎}「え……!?」


ストン「 ▯」「古代は上から下にたれ流し、近代は横から圧力で放射するタイプ」


イメージはこちらのpdfを参考にどうぞ

https://web.archive.org/web/20110303180205/http://www.parkweb.vic.gov.au/resources05/05_0685.pdf


ストン「 ▯」「全部人力の日本ではなじみがない方式だね。戦国日本でこれやっちゃうとココに鉱山ありますって宣言するようなものだし、川下の被害が甚大だからしかたないね」




前に銅草花調べてたら3日経ってたというのは内緒 _(:3」∠)_

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