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第15話 電撃戦

お、お止めください不死王の君! 王弟様!

これはアストラル界の門! アーカーシャ―の虚空!!

そこに召喚陣を描くなど何が起きるか判りません!!

……ひぎっ!!??

…………一体何を召喚する……つもり……。

……………………ゴフッ……。


――古代ムール滅亡前夜

 電撃戦とは第二次世界大戦中にドイツがフランスに対して行ったのが最初と言われている。


 戦間期に編み出されたこの戦術はそれまでの戦争を一変させるほどの影響力を持っていた。


 そして戦後の研究により機動防御やエアランド・バトルで活用される基本戦術という位置づけになった。



「出発!」


 工場長の号令。


 走り出す鋼鉄の機械化兵団。


 これまでに生産した車両は300両以上になる。


 半分はエアランド・バトルの奇襲部隊。


 残りの半分を電撃戦に編成した。


 しかし50両ほどが移動中に故障して、短時間で修理不可能と判断し廃棄した。


 再編成した機動部隊はその数100両と決して多くない。


 機動部隊

 ├戦車――30両

 ├戦闘車――20両

 ├輸送車――15両

 ├自走ロケット砲――15両

 ├自走対空砲――10両

 ├燃料車――5両

 └修理車――5両


 人員はそれぞれの車両に5名は乗り、輸送車両には歩兵10名が乗っている。


 たった600名弱の攻撃部隊。


 これが大国ならこの30倍以上の車両を揃えるのであるがこれ以上数を増やせない理由があった。


 戦車は強力な大砲と分厚い装甲、そして不整地走破性の履帯で悪路を進む走る要塞だ。


 そのメリットの対価のようにデメリットとして燃費の悪さと故障率の高さがある。


 リッター0.2キロという燃料の悪さ。


 一般乗用車がリッター22キロ――つまり1リットルの燃料で22km走れる。


 それに対して戦車は200メートルである。


 これでも今積める最大のエンジンにできるだけ薄い装甲にすることで軽量化を図っている。


 それでこの燃費になる。


 そして計算上の走行距離は燃料タンクの容量600リットル分になるが、それでは全く足りないので外付けのドラム缶を二つ増設して計1000リットル。


 これで走行距離200kmになる。


 それが30両となると全車両が200km進むのに計3万リットルの燃料が必要になる。


 戦車だけでだ。


 それ以外の車両も合わせると総計7万リットルの燃料でやっと全車両が燃料満タンとなる。


 行く先々にガソリンスタンドがあればいいがそのようなものは存在しない。


 そのため燃料車両としてタンクローリーを5台用意した。


 この車両の積載燃料は最大2万リットル。


 それが5台なので備蓄燃料は10万リットルになる。


 これで機械化兵団は最低でも400kmは無補給走行が可能となる。


 最後に時間がかかるが飛行船による燃料輸送も手配してある。


 次の問題は稼働率だ。


 戦車はその重厚で質実剛健なイメージと違い故障率が高い兵器だ。


 言ってしまえば戦車とはベルトコンベアで走行する兵器だ。


 鉱業用のベルトコンベアでさえ時速は1km/h以下で1平方メートルあたり最大輸送量は10トン以下だ。


 それに対して戦車は40トン以上の重量物が時速40km/h以上で走る。


 これで壊れなかったら奇跡でしかない。


 そこでアルタが整備できる範囲の車両数約100両での作戦決行となった。





 ◆ ◆ ◆





『前方に敵のイクラが3つと傘が1つ!』


 レギオンのコロニー周辺は薄気味悪いところだった。


 赤い苔のような植物がどこまでも続いている。


 そして所々に高さ5メートルほどの岩の柱が建っていて、その表面も赤くなっていた。


 その柱に寄り添うように輜重レギオンが張り付いている。


 これで薄暗い曇り空ならばここは魔界なんだと納得できるが、実際は青く澄んだ空に白い雲が流れている。


 それがより不気味さを際立てる。


 柱の根元には輜重レギオンが3体いる。


 それを守るように砲兵レギオンと無数の小型のレギオン――労働レギオンだ。


 柱はレギオンの前哨基地のような役割がある。


 アリ塚のように築城したそれには本来なら兵隊レギオンと弓兵レギオンが大量に潜んでいるはずだった。


 その大部分は南へと向かってしまった。


「飛行船で爆撃を開始すると同時に戦車による砲撃戦をおこなう」


『了解!』


 空から爆撃が始まり砲兵レギオンがいつもの様に物理障壁を展開する。


「よーし、戦車隊。あのイクラを狙って――撃てぇ!」


『撃て! 撃て!』


 前面に展開する戦車が一斉に火を吹く。


 一斉射で輜重レギオンを叩く。



 爆轟――それに巻き込まれてほとんどの敵と岩の柱が崩れ落ちる。



 輜重レギオンとは言うなれば魔物のタンクローリーのようなものだ。


 攻撃を受けると爆散する。


 本来ならアリ塚の中やコロニーの奥にじっとしているが、大規模侵攻の影響で常に食事をとり魔力供給をしなければいけなくなった。


「戦闘車両展開! いけ行け!」


「ヒャッハー! 全員降りろ! 攻撃だ!」


 爆風で吹き飛んだ小型の魔物を戦闘車両が備え付けの重機関銃で駆逐していく。


 デサント兵達も車両をおりて攻撃に参加する。



 ――数分で戦闘は終了した。



「忘れ物は無いな! ズラかるぞ急げ急げ!」


 そしてすぐに移動を開始する。


 これは魔物に包囲されないようにするためだ。


 電撃戦とは相手の奥深くに入り混乱させることにある。


 勇猛果敢に戦うのではなく相手の補給路や司令部、武器弾薬庫の破壊がメインになる。


 戦車は壊れやすく、武器弾薬も限りがある。


 だから成功させるには入念な計画と詳細な地図、攻撃目標は事前にスパイが収集する。


 そして戦いが始まったら航空機による支援爆撃で敵を一掃してから前進する。


 それほどまでに弱いのが戦車であり機甲師団になる。


 工場長は設計者として戦車が弱いと十分に理解している。


 無理はさせない。


 だから飛行船と無線を駆使して常に進路の確認と爆撃の要請をしていた。



 数分後に無線連絡が入る。



『こちら工場都市。さきほど敵3万ほどが急に動かなくなりました』


「わかった。そのまま持ちこたえてくれ」


『了解!』


 レギオンの兵站は物理的な距離を凌駕していた。


 長距離魔力供給によって無停止進撃できる幾千万の群れ。


 だがそれは魔力パスの繋がった輜重レギオンを撃破すれば容易に動けなくなるということでもある。


「この調子でイクラを潰しながら進むぞ」


「カルちゃん、他に赤いのはいる?」とアルタが無線で質問した。


『えーっと、東のちょっとした森を迂回した柱に5体……いた』


「よし、森を迂回する。燃料車は火炎放射で森を焼け!」


『了解です』


 森に平原に奇妙な柱。


 それらすべてに赤い、苔とキノコの中間のような植物が茂っている。


 この植物はレギオンの主食であり魔力供給の源であり、そして鉱物の外骨格の原料でもある。


 この植物は地中からはミネラルを吸収して、森からは魔素を吸い取っている。


 あとは光合成によってレギオンにとっての栄養を作り続ける。


 土地からミネラルが無くなると地面を掘りかえしてアリ塚のような石の柱を建てる。


 蟲達の前線基地であると同時に土中のミネラルを吸収し続けるためだ。


 そうこれは農業だ――魔蟲たちの農作業である。


 このほかにも巨大なイモムシのような魔物を飼育する畜産業も営んでいる。


 高度な社会を構築する真社会性の魔物それがレギオンである。



『ヒャッハー! 消毒だ、しょうどくぅぅ!!』


「撃てぇ! 撃てぇ! ――よし、爆発を確認した。すぐに移動だ!」


 工場長達は移動しては叩くことを繰り返す。


 高度な社会を混乱させるために叩き続ける。



 だが時速40km/hで5時間も動けば燃料切れになる。


 そして――。


「はぁ……はぁ……」


「アルそろそろ限界なんじゃないか?」


「いえ、まだだ丈夫です」


「いいや、燃料補給もしたいから一旦離脱しよう」


「……はい、わかりました……」


 生身での長時間の魔力行使は非常に負担が大きい。


 休息を交えないとすぐに倒れてしまう。


 だから一時的にコロニーの勢力圏から離れて燃料の補給を開始する。


「それじゃあ一旦戻るからカルが全体をまとめてくれ」


『うん、わかった……高度を下げて……下げて』


「アルすぐに戻るんだ」


「はい……わかりました……」


 そう言うと同時に映像が途切れた。





 工場長はゴーグルのようなのを外す。


 ここは工場都市ギルドの一室。


 アルタは遠隔操作でゴーレムを操れるが、魔力のない工場長にはそういった事はできない。


 そこでゴーレムコアを介して映像を送るゴーグルをつけていた。


 横で寝ているアルタを見る。


「きゅ~~」


 典型的な魔力切れの症状がでているので魔力が回復するという飲み薬――回復ポーションを飲ませる。


「んくんく……ぷはぁ。――ありがとうございます。工場長様」


 先ほどまで目を回していたのが少し良くなった。


「いいって、それより少し安静にした方がいい」


「はい、わかりました」


 そう言ってしばらくしたら寝てしまった。


 工場長は司令部へ行き、戦況を聞く。


「大混乱ですね」


「本当か!」


 各地からの報告を聞くと、電撃戦をはじめてから変化が現れた。


 レギオンは前進するグループ、後退するグループそしてその場で動かなくなるグループの3つに別れた。


 さらに一塊ではなくほぼランダムに全体で起きた。


 だから前進と後退で渋滞が各地で発生している。


 そこへ爆撃を繰り返すから予想以上に攻撃の勢いはないという。


「それなら手の空いた飛行船にもう一仕事してもらおう」


「わかりました。何を命令させますか?」


「戦車がまだ行っていない所の攻撃だ」





 ◆ ◆ ◆





『こちら空中管制。北部一帯の焼夷弾投下を完了。引き続き主要な拠点の爆撃を続ける』


 広大な赤い大地への攻撃を続ける。


 岩柱に重要な役割があると考え、そこを重点的に攻撃し始めた。


 何度目かのゴーグル越しの風景。


 ふと北を見ると黒煙が壁のようになっている。


 そして火災を消火するためにあの長距離攻撃の虫がホーミングレーザーを放つ。


 攻撃にも防御にもそして消火にも使える万能の力――魔法。


 おかげで次の獲物の位置が丸わかりだ。


「次は北西を攻撃する」


『了解!』


 工場長達は日常業務のように淡々と魔物を叩いていく。


 叩けば叩くほど魔力供給が滞るのか反撃や襲撃の頻度が減っていった。



 ――戦車砲が火を吹く。



 爆音が鳴り響き、輜重レギオンを10体倒した。


『工場長、弾薬の補給を要請します』


「もう弾切れか――カル戦闘が終わったから補給を頼む」


『うん! わかった』


 インフラの整った国を攻めるのならば途中に給油所や弾薬庫がいくらでもあっただろう。


 しかし広大な自然しかない魔大陸では途中での補給は不可能だ。


 そこで飛行船の一部に補給船を入れることで弾薬と燃料供給を可能にした。


『補給完了しました』


「よし、次は最後の大物、この虫どもの女王の討伐だ」


『了解!』






 兵站網をズタズタに引き裂かれ、穀倉地帯も破壊され、攻勢に出た本隊も混乱をきたしている。


 数が減ったとはいえ1000万もの集団を維持するための巨大なエネルギー供給システムが崩壊した。


 どれほど強大な力を持っていても石油の供給が止まれば軍隊が動かなくなるように、レギオン達も魔力供給が滞っては無力である。


 レギオンの女王は恐怖していた。


 ドラゴンなどの魔物は捕食のために襲ってくることはあるが、被害はせいぜい数百から数千体程度だ。


 種全体が脅かされることはない。


 そもそも捕食されることが前提だからこそ膨大な数を揃えることでリスクを軽減している。


 だがこの敵は違う。


 執拗なまでに輜重レギオンを狙い撃ちし、行動できないように空爆を欠かさず繰り返す。


 そして食糧である赤い植物を丹念に燃やし続ける。


 こいつらは我々を絶滅させる気だ。


 気付いた時にはもう遅い。


 女王には対抗する手段がもう残っていなかった。






「あれが魔物の巣か、アル何か分かるか?」


「そうですね。中から魔力供給をしているのが感じられます。たぶん大量の赤いのがいます」


「それなら一発でも当たれば大爆発をひき起こせるはずだが――ちょっと時間がかかりそうだな」


 連日連夜の爆撃に対抗してレギオンのコロニーは周囲を完全に覆う物理障壁を展開していた。


 これを崩すには地下から爆発させる坑道作戦が有効だろう。


 しかしそのための準備にも時間がかかる。


「戦車部隊も砲撃に加わってあの巣を攻撃するんだ。アルはいったん戻ってきてくれ、動きがあるまで休息だ」


「わかりました……」


 そう言って工場長はゴーグルを外した。


 昔体験したVRゴーグルをしている感覚に似ている――そう思った。


 ずっと瞑想していたアルタが目を覚ます。


 そしてぐったりして倒れ込む。


「な! 大丈夫か!」


「いえ、まだ大丈夫……です」とくらくらしながら言う。


 いつもの様に回復ポーションを飲ませる。


「ぷはぁ……大丈夫です。ちょっと休憩すれば……すぐに…………ふにゃ」


「とりあえず横になって休むんだ」


「……はい、おやしゅみ……」そう言って彼女は寝てしまった。


「ふぅ……」


 彼女が寝たのを確認してから無線室に向かい状況の確認をする。


「報告を」


「はい、およそ半数の魔物が動かなくなりました。その影響で散発的な戦闘しか起きていません」


「なるほど、そいつはよかった」


 300万以上が行動不能になる。


 前哨戦と合わせれば実質500万以上を倒したことになる。


 もはや物量差は完全に覆った。


「なにか変化があったら連絡してくれ」


「ハッ! 了解です!」と無線担当が答える。


 工場長は考える総数に対して半分も倒していない。


 あの赤いのは大量に巣の奥にいる。


 それはコロニー内部には残り半数分の輜重レギオンと膨大な備蓄が残っていることを意味する。


 逆にいえば一発でも鉄と火薬を叩きこめればこちらの勝利だ。





 ◆ ◆ ◆





 レギオンのコロニー群への集中爆撃が始まって数日。


 一大攻勢に出た700万の大群は電池が切れたかのようにそのすべてが動かなくなった。


 もはや攻める力もなく守りに戻ることもできない。


 そう判断したから残存魔力をすべてコロニーの障壁へとつぎ込んだのだ。


 無線連絡によりそのコロニーに異変があったと連絡を受けた。


「アル大丈夫か?」


「もう十分休みましたので問題ありません」


「それか。それじゃあ最後を見届けよう」


「はい」


 そう言って二人は北の戦場へと意識が向かう。







 爆撃部隊と戦車部隊による攻撃、それに輸送船から随時追加の砲兵部隊が加わる。


 100門、200門と戦列に砲兵が加わっていき、ついに1秒たりとも尽きぬ攻撃へとなる。


 それでも障壁はまだ破れない。


「なにか変化があったのか?」


「あれを見てください」


 そう言われて傘のような障壁をよく見ると一瞬途切れたり再展開したりを繰り返している。


 寝ることも休むこともなく膨大な魔力を消費し続ける。


 その負担は時間が経てば経つほど増していく。


 痛覚がない魔蟲もついに限界を迎えた。


 攻城戦3日目にして防壁が消失した。



「一斉射撃てぇ!!」



 その号令による集中砲火によってコロニーが火の海、鉄の雨に晒される。


 そのうちの一発が奥深くの輜重レギオンに命中。


 火薬庫に引火するかの如く魔力の連鎖暴発が起きた。



「ヴォオオォォォォ!!」



 女王を中心とした強力な統制力を持つ魔物の社会は、その女王の断末魔と共に消滅したのだ。


 それは大地がうねり、閃光を発した。


 そして巨大な柱状にコロニーにあった全ての物質を天高くへと舞い上げた。


 それにより50万トンもの土砂岩石が周囲へと飛び散る。


 その衝撃波はすさまじく、遠く工場都市で農業をしていたモノ達にも聞こえた。


 あとには巨大なクレーターだけが残った。


「やったか……」


「終わったのですね……」


 魔大陸での生存に適した物量の魔物・レギオン。



 生物として機械に抗ったが敗北――。



「ヴォオオォォォォ!!」


「んなっ!?」


 土煙の中から這い出てきたのは女王。



 生きていた!?



 青白く輝く!



 残った魔力を集中させて。



 放つ!!



 ――魔力の奔流。



 その魔力の光線が前面に展開していた戦車部隊に直撃する。


「退避! 退避!」


 30両の戦車部隊はすべて破壊された。


 身体を引きずりながら出てきた女王は下半身が吹き飛びもはやタマゴを産めない。


 これは怒りだ。


 ただ怒りに任せての攻撃だ。


 また輝く!


「避けろ避けるんだ!」


「ひゃ!?」


 二度目は光線というより光弾。


「ば、爆撃! みんな爆撃開始!!」


 上空のカルが指示を出して、女王への爆撃が始まる。


 しかし爆風を意に介さず前進を続ける。


「爆風ではダメージがないな。ロケット部隊テルミット弾を撃て!!」


『了解! テルミット砲撃て!』


 自走ロケット砲による攻撃。


 テルミット反応による燃焼反応が女王を襲う。


「ヴォオオォォォォ!!」


 3000℃の熱攻撃は外骨格に多少のダメージを与えたが、溶かしきるほどではなかった。


「こ、工場長様。戻りましょう。放置しても私たちの勝ちです」


「ああ、わかってる。けど――」


 虫の息と呼べる魔物の女王の最後。


 それを無視して安全な後方へ引き下がるのは簡単だ。


 しかしそうしてはいけない。 そう感じたのだ。


「対空砲部隊。徹甲弾を装填してあの大物に一斉射撃を開始する! さっさと弾を込めろ!!」


『りょ、了解すぐに準備します!』


 高射砲とは高高度の敵に対して高速で砲弾を撃ちだして航空機を落とす兵器だ。


 そのため弾頭の発射速度が高く破壊エネルギーもそれに合わせて上がる。


 当然のように装甲の貫通力が高まり、ついには戦車の装甲を打ち抜くことができるほどになる。


 第二次世界大戦中に対戦車砲が効かない分厚い装甲の戦車を対空砲で撃退する出来事があらゆる国で起こった。


 しまいには「対空砲で戦車を攻撃するのは邪道だ」に対して「戦車を撃退できない対戦車砲を製造するのが間違いだ」という笑い話ができるほどだ。


 工場長はそういった逸話を知っていたわけではない。


 ただ弾丸のエネルギー計算をしていたらその事実に気付いただけだ。


「撃て撃て! 高射砲で撃ちまくれ!」


 高射砲から撃ちだされる超高速の徹甲弾が女王を多方面から叩く。


 そしてその中の一発が魔力の源である魔石を吹き飛ばした。


「ヴォオオォォ…………」


 魔力操作ができなくなった女王は他のレギオンと同じく動かなくなり、砲撃と爆撃の嵐の中で沈んでいった。


『目標沈黙……かな。動く敵は……もういないよ』とオドオドしながらカルが言う。


「これでやっとおわったか」


「ふふ、工場長様、それはフラグです。さ、車両の整備をしてから戻りましょう」


「そう言われると――それもそうだな」


 こうしてレギオンのコロニーを一つ破壊することに成功した。












 工場長達は遠隔操作してるだけなので気付いていないが北部の大部分がレギオンの青い血で染まっている。


 一部の昆虫類と哺乳類の最大の違いに血の色にある。


 哺乳類の血が赤いのは赤血球のヘモグロビンの鉄分が酸化しているからだ。


 つまり酸化させて酸素を運ぶ。


 それに対して一部の昆虫の血が青や緑なのは銅由来のヘモシアニンが酸素と銅イオンと結びつけて運ぶ――それで青色になる。


 北の平原には無数のレギオンの死骸から青い血が流れる。


 その銅成分によりこの地には一般の植物が育ちにくい環境へと変貌していく。



 そして数年後にはあの青い銅草花が一面に咲きほこる。


 そこで一大決戦があったとは思えない。


 青い幻想的な平原へと生まれ変わる。


やっと戦いは終わりです。 長かった……。


あと1話プラスエピローグで終わりです。


最後にレギオンの元ネタを掲載しますね。




軍勢で群がる――軍隊アリですね。


夜に行軍をする――軍隊アリですね。


橋を作る――軍隊アリっすね。


同族と戦わない――これも軍隊アリやね。


兵隊が比較的小さい――アルゼンチンアリだよ。


いかだを作る――ヒアリだね。


蟻酸を振りまく――アリ全般だ。


目が退化している――アリの特徴っす。


農業をする――ハキリアリですね。


畜産業をする――これもハキリアリだ。


鉱物の骨格で覆われている――やっぱりハキリアリですね。


前線基地を作る――なんとハキリアリです。


巣を築城する――シロアリなんだなぁ。


お尻から魔法をぶっ放す――デイダラゴミムシですね。神リー!


エネルギーを蓄える――ミツツボアリですね。


飛ぶ――羽アリだね。


だいたいこのような元ネタになっております。


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― 新着の感想 ―
[一言] レギオン戦勝利! 先読みの巫女さんはエンプレス・ゴーレム見て卒倒したけど、 一番やばいのは進化や変異を待たずに生態を変化させるパパの方なんだよなあ…
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