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族・月と太陽の交差点に潜む秘密  作者: ジャポニカダージリン
第2章
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欲しいもの

その後特に寄るところもなく自宅に帰ってきた俺達。

あれから2時間近く経つがリカちゃんからの返事は来ない。

はぁ...落ち込む....いいんだ、俺はリカちゃんとどうこうなろうなんて思っちゃいない。だからこれは良いことなんだと何度も自分に言い聞かせようと試みるのだが、どうにも心が晴れない.....うう、リカちゃん....

憂鬱な気持ちを抱えながら玄関のドアを開けると、


「ちょっとお兄ちゃん!!」


妹の優子が血相を変えながら大声で駆け寄ってくる。


「あ?なんだよ」

今は妹と話すような気持ちになれないのでめんどくさそうに答えると、


「ちょっと聞いたよ!!リカ助けたって話、まじで!?」


あ~、聞いたのか、おふくろか......

あの事件から数週間経つが、リカちゃんたっての希望で親友の優子には知らせないでと念押しされていたためこれまでずっと優子には知らせないようにしていたのだが、どうやら口の軽いおふくろがうっかり口をすべらせたみたいだね、だめだよなぁこういうの滑らす人って、我が母親ながら信頼が置けなくなるぜ。


「母さんに聞いたのか?」


「ちょっと、私まじでびっくりしたんだけど、え、ほんとにリカがさらわれてる走行中の車に飛び乗ったの!?」

俺の質問にはちゃんと答えずに自分の関心を押し出してくる妹、まあ、否定しないってことはおふくろなんだろな、そして話に尾びれがついている。

俺が乗り込んだのは赤信号で停車していた車なのだが.....


「まあな、停車中の車だったけどな」


「え、まじで!!うそでしょ、そんなの兄貴には絶対無理だって!!」


「何が無理なんだよ?」


「ムリムリ!だって兄貴でしょ!?ビビリの!」

そう言いながらも優子の俺をみるめにはいつもの蔑みとは違って輝きがある。

無理と言いつつどこか期待やリスペクトを含んでいるような。

ビビリということは認めよう、実際セナの掛け声がなければ何もできなかったのは事実なんだし。


「はぁ、じゃあもう信じなくていいよ、別に俺一人の力でやったわけじゃないしな」


「え、兄貴一人でやったんじゃないの?」


「え、いや、ほらタクシーのおっちゃんがいなければたどり着けなかったし、いや~、すげぇもんだよタクシードライバーってのも、俺が何もせずともマジでリカちゃんが乗ってる車まで運んでくれるんだもんな、うん、あれは凄い」


「ふーん,,,,じゃあ、それって凄いのってタクシードライバーってこと?兄貴はただ乗り込んだだけで、リカを見つけてくれたのはドライバーさんってことでしょ?」

失礼な、こっちは命懸けで戦ったってのにそれを乗り込んだだけだと……!?

しかし、そんなこと優子に話しても信じられないだろうし一文の得にもなりそうにないので俺はまあな、っとだけ答えておく。

タクシーのおっちゃんのおかげでリカちゃんを助けられたのは事実だし。

俺は会話を切り上げ、自分の部屋へ向かうべく階段を登ろうとしたら後ろから優子が、


「……ありがとね兄貴、リカを助けてくれて……」

と感謝の言葉を小声で投げかけてきた。

思いもよらない事で俺は一瞬なんて言ったかわからず、

「ヘッ?」


っと返すと、


「べ、別に兄貴が凄いと思ったとか全然ないから!!あーやだやだ、兄貴の顔見てたらだるくなってくるわ、早く行けよ!」


っと、いつものdisりモードで俺を睨みつけてくる。

これには俺もイラ、

「そーかよ、悪かった!」


そう言っておれは優子に背を向け自部屋に入った。


「なあセナ?」


俺はベッドに寝転びながら床でくつろいでいるセナに話しかける。


「はい?」


「俺って何が駄目なんだろうな……」


「どうしたんですか突然……」


「いや、だって、リカちゃんとも会話が上手くいかない、妹にだって見下される、というか女という女全てに嫌われてしまう、もう一生付き合うとか結婚とか無理なんじゃないかって思えてきたよ」

俺は今落ち込んでいる。妹のdisりもそうだが何よりリカちゃんが俺を置いて友人達と行ってしまった事に。

現に俺は毎度そうなのだ、自分ではわからないがいつもどこか女性の嫌がるポイントをついて気づいた時には愛想を尽かされている。

あんなに親しいリカちゃんでもいざ集団会話になると俺はどんどん影に薄れて魅力は消え去っていく。

そしてその後にはなんて話をすればいいかわからなくなってしまう。

多分、俺は果てしなく魅力の底が浅い男なんだろう。


「そんな事ないですよ、健太郎さんはとても魅力ある人ですよ?」


セナはそう言うが、はっきり言って信じる気になれない。人語を喋ると言っても所詮はフィギュア、やはり人間の女の子に実際にモテなければどんな言葉も虚しく感じるだけだ。


「あー、そうかよ、ありがとな」


俺は不貞腐れた感じでセナにそう言う。


「なんですか、人に聞いておいてその態度は!」


「いやだってピンと来ないんだもん、俺が魅力的とか、じゃあどこら辺が魅力的なんだよ?」


「それは勿論勇気あるところ、思いやりのあるところ、それに、私達の声が聞こえるところです!」


「チェ、お前らの声が聞こえるところとかどうでもいいよ、それに勇気や思いやりって言ったって相手が面白くなければなんにもならないじゃねぇかよ」


「なんですかその言い方!!私達の声が聞こえなかったらリカさんだって助けられなかったんですよ!?」

セナは今の言葉がかんに触ったらしく、少し語気を強めながら詰め寄ってくる。


「あー、確かに悪かった、今のは言いすぎた」


「当然です」

フンッと鼻をならすセナ。


「けどな、セナ?」


「はい?」


「俺は33年間女性と付き合った事がない。それに一度だってお互いが信頼しあえてるって感覚になった事もないんだ、いつも女性の前では必死に会話を考えて、アセアセして、なんかもう全てが無駄に思えてくるよ、どうせ俺みたいな馬鹿には何を努力したって無駄なんじゃないかってさ」

言っててもう悲しみすら浮かんでこない。

そうなんだろうという確信が胸の奥に芽生えつつある感覚だ。

そう不躾に言う俺だが、


「それは違います」

セナはキッパリと俺の言葉を否定する。


「何が」


「それは健太郎さんに魅力がないからじゃないからなんです」


「そうなの……?」


「はい」


「じゃあなんだよ」


「それが健太郎さんの魅力なんです」

とセナ。

何を言うんだこいつは、女に気に入られないのが俺の魅力?一体何を言っているのかわからん。

眉をひそめて俺がセナを見つめると、


「いいですか健太郎さん?健太郎さんの優しさは何処までも相手の為に動こうとするところなんです。何処までも何処までも、限りなく目に見える人の為に動こうとするところなんです」


「はぁ……」


「だから一人一人にはその優しさが充分に行き届かずに少し物足りなく感じてしまったりするんです……」


「そ、そうなの…?」


言われてみれば俺は八方美人な節がある。いつも色んな人の顔色を伺ってほんとにやりたい事を出来ないような所が……



「けどそれって結局何も手に入らないってことなんじゃないか?元々器用でもなんでもないんだし……」


「それは違います、健太郎さんはいつか全てを手に入れるんです。知ってかしらずか、それは決まりきった事なんです」

お、俺が全てを手に入れる……

思わず俺はゴクリと唾を飲み込んでしまう。


「全てってなんだよ」


「全ては全て、欲しいもの全部ですよ!」


ま、マジスカ……セナが冗談を言っているようには聞こえない。俺にそんな力が……


「じゃあ、なんでも夢が叶うって言うのか?」

俺は目に期待を込めてセナをみるが、


「えーっと、それはちょっと違います。別に大豪邸に住めるとか有名人に慣れるとかそう言うことはちょっと……」


「は?なんだよ、それじゃあ欲しいもの全部って事にならないじゃねぇか」


「それはそうなんですけど、むぅ〜」


「どう言うことだよ!?」


「今はこれ以上はなんとも……言ってもいい事にならないと思いますし……」

そして黙り込むセナ。

なんだよなんだよ、またこれだよ、いつも大事な所を濁して結局俺は期待すかし喰らうんだよ、しかもこいつ頑固だから絶対話してくれないし、しょうもな、また訳のわからん話に乗せられてガッカリしちまったよ。


「あっそう、もうええわ、話すのしんどいから俺は今から動画見る、邪魔するなよ?」


「はい……」

そう言って俺はスマホに手を伸ばす。

チェ、期待させやがって。

スマホを手に取った瞬間ふとアリスの事を思い出し、彼女なら話しに付き合ってくれるんじゃないだろうかとLINEを送ろうとしたがそれもやめた、なんかカッコ

悪い気がしたから。

あー、どうせ俺には彼女なんて出来やしねぇ、もういいよ、一生彼女なんて出来ないんだろうな……




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