反省会
どれくらい歩いただろうか、行き交う人やひっきりなしに連なる店から流れてくる様々なBGMやら渋谷の賑やかな雑音に打たれながらさっきの違和感について考えるが一向に答えは出ない。
足人との会話で俺に何か落ち度はあったか?ふと頭に浮かぶ足人の親戚みたいな変わらない関係ってのは今後もリカちゃんとの良好な関係が続くって事だから変じゃないよな?彼女に惚れている俺としては内心心が少し痛むが……まぁ考えても仕方ない。リカちゃんだって参考書選びたいから二人についていったわけだしそんな変なことは言ってないはず。セナきっともっと会話上手になれってな意味であんなことあったんだろう。そう割り切る事にした俺だが、街を見回しても特にお目当てのものもないので心が何かに動くこともなく、ただただ人の多さの中に埋もれて行ってしまうような感覚になってくる。
人が多いのに孤独が全身を包み込むような寂しさを感じる。
「おい、セナ?」
俺は堪えきれずカバンの中のセナに向かって話しかけると、
「はい?」
お、返事した
「退屈なんだけど、もう帰ろうか?」
返事したセナに若干の安堵感を感じながら俺がそう尋ねると、
「それじゃあ最後にもう一度スタバによりましょうよ!」
っとセナ。
マジか、二度目だぞ?どんだけスタバが好きなんだよ?
そう思いながら俺は頭に浮かんでくる疑問符に頭を悩ませていると、
「今度はハクリューさんとヤドランさんも交えて会話しましょうよ!」
っとセナ。
あー、なるほどね、確かにハクリューもヤドランもずっとバッグに入ったまんまでなんも喋ってないもんな。セナとは何故かあーだこーだ言いながらもよく人前でも会話するけどハクリュー達とは部屋と職場以外ではあんま喋らないんだよな、それはセナがおしゃべり好きで呼んでもないのにしょっちゅうカバンから出てくるってのが大きいんだが、そうだよ、ハクリュー達と反省会開けばいいんだ、これならスタバにもう一度行きたくなっちゃうね
「わかった、いいぜ、ならスタバ行くか!」
俺はせっかくなのでもう一度スクランブル交差点前のスターバックスに腰をおろして休憩を取る事にした。
今度はフラペチーノではなくアイスコーヒーブラックを一つ注文し、再び2回の席の一つだけ空いていたカウンター席に腰をかけ、コーヒーの隣にハクリューとヤドラン、セナを置く。
いやぁ、堂についてきましたね、なんかあんまり恥ずかしさを感じなくなってきましたよ、慣れれば慣れるもんだ。
セナ曰くこういう混雑した場所では他人はセナ達の会話を意識出来ないみたいだしね。
「あーっ、しんど、人多いだけでなんも楽しくないわ渋谷」
俺が紙のストローでコーヒーを飲みながら口を開くと、
「そうでしょうか?私は魅力的なお店がたくさんあってとってもワクワクしましたけど?」
っとセナ。
「そっか?」
「はい!雑貨や小物屋さんが色々あって見てるだけでキュンキュンしちゃいます!健太郎さんに似合いそうな帽子屋さんとかもあったし」
どうやら話はせずともカバンからしっかり街を見ていたらしいセナはそんなことを言う。
ならちゃんと主張すればいいのにね、そしたら店に入ってやったのに。
そう一瞬思う俺だがいや待てよ、逆に良かったと思い直す。
コイツ買い物に付き合わされると非常に長いんだ、だからセナと会話しなくて正解だったわ。雑貨とか興味ないし。
しかしそれを口にすれば空気が険悪になるのはわかりきっているので俺は相手を変える事にする。
「でだ、お前達はどう思ったよ?さっきの会話、聞いてたんだろ?」
再びコーヒーを喉に流し込みながら俺はずっと気になっている事をハクリューに尋ねると、
「うーむ、これはなんとも…」
となんとも歯切れの悪い返事。
「なんともって?」
俺は気になるのでオウム返しのように聞くと、
「そうだね、僕の意見としては大失敗だったと言わざるを得ないかな」
「えっ、なんで?」
予想外の返事にうっかり驚き声をあげる俺、慌てて周りを見回すが……どうやら誰も気に留めてないようだ。
「なんで大失敗なんだよ…?」
俺はこっそりハクリューに再び話しかけると、
「そうだな、思うに君は知らず知らずのうちに足人君のペースにハマっていたように思う」
「な、なんだ?足人のペース?どう言うことだ?」
「つまりだね、健太郎にライバルは多いというわけだ、それにうーん、あの軽やかさに淀みのなさ、同じ土壌に立てば今の健太郎にはどうやっても太刀打ちできそうな力関係を感じるな」
とハクリューは言う。
「ライバル?どう言うことだ?リカちゃんの事を言ってるのか?それならお門違いもはなはだしいぞ?俺は元々彼女とどうこうなろうと言う気持ちはさらさらない、ただ仲のいい近所のおじさん、そんな関係でいいじゃないか?」
言ってて胸がズキズキするがこれは本当の事だから仕方ない。そもそも俺がリカちゃんのような高嶺の花子さんに恋心を抱いている時点で犯罪急の過ちであるのにそれ以上に罪を重ねようなど恐ろしくて想像だな出来ないね
「ハクリューさん、だから言ったじゃないですか、健太郎さんには何を言っても無駄なんだって!」
っとセナがハクリューに話しかける。
何が無駄なんだよ腹立つな〜
「もうなん度も説明してるけど俺は33歳、彼女は17歳、この意味分かる?犯罪なの、あっちゃいけない事なの、彼女の今後の未来を考えると俺みたいなピークをすぎた男が彼女の時間を占有していいわけはないのよ?お分かり?」
俺は少しイラつきながらセナに説明してやると、
「むぅ〜、確かにそうなんですけど……」
っとおしだまるセナ。
否定せんのかい!ちょっとは否定してほしい気持ちもあったのに!
若干イラつきが増し、セナに怒鳴りそうになるがここはセナは悪くない。
なのでムカつきを流すためコーヒーに手を伸ばそうとすると、
「健太郎さんの馬鹿……」
そう言ってセナはバッグに入っていってしまった。
なんだよ馬鹿って……
「なあハクリュー、教えてくれよ、俺はどうすればいいんだ?」
「そうだな、君というと暴漢の車中に飛び込む勇気はあるのに事恋愛に対しては非常に臆病で疎い。口癖のように法律だのなんだの口にするが僕からすればただ問題から逃げているだかのように思えるんだ」
「いや、お前には法律とかないからいいよな、フィギュアだし」
「フィギュアであっても猿であっても変わらないさ、自分の欲しいと思うものに手を伸ばす勇気があるものだけがそれを手に入れる。古今東西男はそうやって欲しいものを手に入れてきたんじゃないかな?」
ドクンッ。
ハクリューのキレの良い言葉に一瞬俺の鼓動が脈打った気がしたが……
やっぱ駄目だ、そもそも俺なんかが彼女に振り向いてもらえるわけはない。
なんてったって俺は馬鹿でがさつでKYで、いつのまにか女の子が怒っているのにも気づかない鈍感野郎。
俺なんかと一緒になって幸せになれる女なんていっこないよ……
「ヤドランをみたまえよ、なあヤドラン?君ならこの問題どう対処する?」
ハクリューがヤドランに話しかけると、
「なんの話だを?」
っと全く話を聞いていなかったようすのヤドラン。
「つまり、健太郎はリカに対してどういう行動をとるのが一番の選択かという話だよ」
とハクリュー。
「おでは美味しそうなものがあれば迷わず食べるを」
「見たまえ、これが答えだ!」
若干引き攣りながらも胸をはって答えるハクリュー。
うわぁ、わけわかんねぇ、リカちゃんは食べ物かよ、それに後先考えないだけの馬鹿の発言じゃねぇか……
こいつらに相談した俺が馬鹿だった。俺がとほほとコーヒーをストローで口に流し込んでいると、
「健太郎さん、女の子の心を考えたことありますか?」
っとセナが再びバックから出てきて尋ねてくる。
「ある、あるよ、もう考えきれないくらい考えてきた。けど全く意味がわからん。そもそもだ、もしお前らが言うように万が一リカちゃんが俺に気があるとしてだ、万が一、それだったらなんでリカちゃんは二人と参考書買いに行ったらするんだ?好きな人とならいつまでもいたいって思うのが普通だろ?それよりも友達を選ぶって事は俺は所詮その程度ってことなんだよ、違うか!?」
「違います!全然違います!」
「はぁ?何が違うんだよ?」
「いいですか健太郎さん?リカさんの本心は……違うのかもしれませんが!女の子は好きだからその人といたいんじゃないんです。一緒にいたいからいたいんです!!」
とセナ。
「はい?意味がわかんねぇ……それって好きって事なんじゃないの?」
「女心は秋の空。です!」
ドンっとワンピースの後ろの文字が見えそうなくらいの剣幕でドヤるセナ。
女心は秋の空……それってすぐに好きじゃなくなるって意味なんじゃないの……?しかし女性の心は非常に変化が激しいのは身を持って知っている。
なので俺は妙な納得もあってセナの迫力に飲まれてしまう。すると、
「いいかい健太郎?」
と、ドヤるセナの隣でハクリュー。
「な、なんだ?」
「女性の繊細な心境に器用に合わせるのは残酷だが、非常に残酷なのだが君の神経細胞群では少しスペックが足りないのかもしれない」
うげっ……こいつ何気に酷い事言うな、ナイフで刺されたような心境だ……
「ただし、そう言う君のような男にもちゃんと別の道が残されていたりするもんなんだ」
そ、そうなのか?瞳をかっと見開きハクリューを見つめる俺、な、なんだ!?
「いいかい健太郎、男は度胸!!」
再びドンっと効果音がなりそうな剣幕で俺の目をかなぐりこむように観てくるハクリュー。
ダメだこりゃ……
誇らしげにドヤるセナにハクリュー、その隣でそっぽ向いてるヤドラン。
見おろす俺としてはかなりシュールだぜ……
ハクリューも賢そうに思えて単純なんだな……
格言なんかで恋愛が成立するなら誰も恋に苦しんだりしないのよ。
まだ何かいいたそうな雰囲気ではあるが俺の体力がまたないのでここらで反省会をおえ、コーヒーを飲み干した後、ちらっとスマホを確認するがリカちゃんからの返信はまだきてない。
うぅ、落ち込む……とにかく長居は無用なので帰るとするか。




