タルト
階段を降りたリコをぼーっと待っていると、やや!?
再び一階から階段を登ってくるリコの頭が見えたかと思うと、隣にはなんと男がいる、しかもバキバキのイケメン!!誰だ!?
目測リコの身長ががリカちゃんとほとんど同じ160前後だと思われ、スッと頭ひとつ分以上の身長差があるところをみると180あるな。
中性的な若者特有のサラッとした清涼感にキリッとした男らしさも備えた顔だち。
胸元のセナは「誰でしょう、ものすごいイケメン……」
と、少し見惚れとも取れなくもないような事を尋ねられるが無視。
俺がアワアワと正面に降り立つユーフォーを眺める農夫のような心境でリコと共に近づいてくるイケメンを眺めていると、そのイケメンは俺の顔を見ながらニコッと笑い、
「こんにちわ、加藤って言います」
っと爽やかな笑顔で挨拶してくる。
美形の笑顔は人を幸せな気持ちにさせる力があり、これには俺も思わず笑顔でこんにちわと返す。
となりのリコが、「ごめん、今日足人も一緒でさ、一緒に座ってもいいかな?」
っとどうやら加藤足人というらしいこのイケメンとの同席の許可をリカちゃんにきき、リカちゃんは俺の顔をみて伺いを立ててくるので俺は別にいいよと返す。
ってかこういうのってここまできたら断れないよな普通。席他に空いてないし。
足人は「えーっと、じゃあ僕はここで……」っと俺の左隣に、俺の右側に座るリカちゃんの右隣にリコが座ろうとするんだが、俺はなんだかこの足人とリカちゃん・リコペアの間に挟まれるの事に違和感を感じたので自分が座ってた席を足人にここ座ってよと明け渡し、一番左端のカウンター席へと移動した。
4人が席につきさぁどうしようと考えるまもなく、「いやー、それにしてもこんな所でリカに会うなんてね!渋谷苦手って言ってたじゃん!!」とリコ。
「うん、けど一度ここのスターバックスにも行ってみたいなって思ってたんだ」と返すリカちゃん。「それより今日は二人でどうしたの?」
「あー、それがさ、参考書選びに足人に付き合ってもらってたんだけどめんどいから後回しで先に買い物付き合ってもらってたんだよね〜」
「えっそうなの?」っとリカちゃんは足人の方をみると、
「ふっ、いつもの事だよね、リコの行き当たりばったりは、」と足人は呆れたような笑みで返す。
「それは確かに……」
「あ、ちょっと待ってって、参考書はちゃんと買いに行くから!」
「どうせ買い物の後も用事が増えてくんだろ?」
「必要があればね!」
……まずい、俺が端に移動した事で三人だけの世界が構築され始めているのを感じる。
そうだ、集団会話で一番大事なのは実は話の上手さではなくその位置取りだったんだ、
俺は会社の飲み会で何度もそれを痛感したことを今になって思い出す。
集団会話の楽しさは内容ではなく自分のポジションを感じる事、これはあらかじめ重要なポストが与えられる二人だけの会話とは明らかな別物で、三人になると急に喋れなくなる人とかがいるのもそこら辺で俺みたいに強気に立ち回れないのが大きな原因だったりする。
出会ったばっかだしな。セナもなんも喋らないし、どうする事もできないのでしばらく三人の話をぼーっと眺めていると、
「田中さんはリカとはどういった関係なんですか?」
と足人が笑顔で話しかけてきた。
どうやら一人ぼっちになりかけている俺に気を遣って
くれたらしい、いい奴だな……
「えーっと、」
俺が照れて説明に少し言い淀むと、
「リカの幼馴染のお兄さんらしいよ!リカとも仲良いんですよね?」
っとリコが説明を補足してくれる。
「ん、仲いいっちゃあいいのかな?今日もスタバに出かけてるわけだし!」
俺はリコの発言に少し上機嫌になる。
すると足人は笑顔で、
「親戚のお兄さんって感じですか?」
「ん?……そう、そうなのか?まあそうだな、お兄さんってより親戚のおじさんって感じだ!」
なんか一瞬違和感のようなものを感じたが、論理的に考えるとそうだよな、近所で小さい頃から知ってて関係が継続してるが普段住む世界は違う。
親戚と似たような感じかもだ。
「いいですよね、そういうの深い絆みたいなのがありそうで」
「あ〜、昔から知ってるからね、足人君はそういうのとかないの?」
「僕もいとこが何人かいるんですけどみんな歳が同じだから兄のような存在ってどんなだろうなって憧れがあるんですよね」
「あー、そうなんだ、辛いだけだぜ?実の妹には馬鹿にされるしさ」
「えっ、そうなんですか?」
驚く足人。リカちゃんと仲良く出来るのは嬉しいが口に出すのは恥ずかしいので胸の内に抑えておこう。
「そうそう、俺なんて虫けらみたいに思ってるんじゃないのかな、目を合わせばフンって鼻鳴らされるしさ」
「はは、まさか」
さらりと笑う足人。話してて気持ちのいい青年だな。
性格いいんだろうな。ここまで顔がいいとリカちゃん同様誰からも受け入れられるから自然と性格もよくなるものなのかもしれないな。
喋ってて気兼ねしないので俺もついつい話し込んでしまう。
「でも兄弟とか親戚とか、いいですよね」
「っというと?」
「ほら、どれだけ時間が経ってもずっと変わる事はない関係って感じじゃないですか」
「あー、うん、確かにそうだな」
「リコはなんの参考書買いに来たの?」
俺が足人と話している途中、突然リカちゃんがリコに尋ねた。やべ、俺ばっか喋りすぎた……
「あ、えーっと、なんだっけ?」
「数学だろ?なんで俺が覚えてるんだよ?」
「プッ、あはは、ほんとだ、私が買いに来てるのに!!」
「いいな〜私も新しい参考書欲しかったんだよね」
と、リカちゃん。
え、あれ?この感じって……
「あ、じゃあリカも買いに行く!?あ、でも悪いか、せっかく健太郎さんと遊びに来てるのに……」
「えっ、私は別に構わないけど……」
やっぱこれってあれだよ……
「えっ、じゃあ行こうよ!!」
「すみません、お兄さん、私この後リコ達と参考書買いに行きたいんですけど、いいですか?」
そう言って申し訳なさそうに伺いを立ててくるリカちゃん。
これはまた絶対に断れないパターンのやつなので俺はいいよと答える。
そしてその後はしばらく俺と足人、リカちゃんとリコって感じでツーペアに分かれらような感じになりながら俺は趣味の話やら会社の話やら、リカちゃん達は学校や部活の話やらをしながら皆ドリンクも飲み干し、スタバを出て渋谷駅前でお別れとなった。
「それじゃあ、ごめんなさい、今日はドリンクご馳走いただいてありがとうございました!」
そうやってリカちゃんがペコリと頭を下げてお礼を言った後、
「それじゃあ健太郎さん、また話そうね!」
「今日は楽しかったです、色々な話ありがとうございました」
フレンドリーなリコととても礼儀正しい足人が改札に向かいながら別れの挨拶をしてくれる。
あんまリカちゃんと話せなかったな……
「なあセナ?」
三人と別れた後、俺は妙に虚しくなり胸元のセナに話しかける。
「はい?」
セナはぴょこんと胸ポケから顔を出す。
「やっぱ高校生は高校生で会話する方が楽しいんだろうな」
「どうしてそう思うんですか?」
「いや、なんとなく、溶け込めてなかったかな〜って……」
足人はいい子だから俺の話に合わせてくれてたけど、途中三人の会話になると俺はダンマリで入り込む余地がなかった。だからリカちゃんも参考書買いに行きたくなったんじゃないかと途中ずっと考えてた。
要するに楽しい方について行きたいのではないかと。
しかしセナは、
「さぁ、どうなんですかね〜」
と目を逸らしながら何かわかってそうな白々しい反応を見せてくる。
「なんだよその投げやりな反応?」
「えっ、だって健太郎さんに言ってもわかんないじゃないですか」
「何が?」
「何がってどうしてこうなったかの秘密です、勿論私も言うつもりありませんけど」
「おい、なんだよ、教えろって」
「嫌です、絶対」
「なんで!?」
聞けば聞くほど意固地になるアレ。
俺は不安になり頼むとせがむがセナはこうなりゃテコでも動かんとばかりに固く腕を組みそっぽをツンとむいて断固拒否の姿勢だ。最悪だよモヤモヤさせといて答え言わないやつってたち悪りぃ……
俺は諦め、若干機嫌を損ねながらも帰ってもやる事もないので久しぶりの渋谷街でも観光しようと思ったら、
「健太郎さん、いいですか?ちゃんと相手を見てください」
セナがそんなことを言ってくる。
「は?何が?」
「ちゃんと自分が物事を言った時、相手はどういう反応でどういう流れに変わったか、それは何故か?そういう事をちゃんと確認しながら話を進めてください」
セナの言葉は相変わらず抽象的で何を言いたいのかわからない。
さっきのスタバでの会話の事を言ってるんだろうが、セナに言われて思い返してみると、やっぱり気になるのは、
「俺が話しすぎてリカちゃん達が退屈したってとこかな、やっぱ会話は自分だけが占有していいもんじゃないよ、飲み会の部長の一人語りとか全員つまんねぇしな、必死に媚びてる奴ら含めて」
「健太郎さんってやっぱり馬鹿なんですよねぇ……」
ハァっとため息をつきながら思いっきりディスってくるセナ、腹立つ……!!
「おい、だったら教えろよ、何がおかしいのか、おい!!逃げるな!」
セナは胸ポケから肩にかけるばっぐにピョンと入り込んだきり返事をしなくなる。
なんだってんだよ……
まぁいい、とりあえず……
俺は不安になりリカちゃんに今日は楽しかった、参考書見つかるといいねという趣旨のLINEをリカちゃんに送ったあと、スクランブルの人ごみの中へ紛れていった。




