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族・月と太陽の交差点に潜む秘密  作者: ジャポニカダージリン
第2章
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スタバ

秋葉原駅から山の手線に乗り換えると人も増えてきて、セナとの会話はさすがにまずいので、一旦セナをカバンに移してから渋谷駅へと向かう。

う、嬉しい、リカちゃんとの二人きりの時間...

といっても山手線内は非常に混んでおり、圧迫感があるので喋ることはせずに静かにつり革を握る。

う、うれしい、会話は無くともリカちゃんと二人で時間を共有できているこの感覚、、、

チラとリカちゃんを見ると、やば!!リカちゃんも同時に俺に視線を向けててさっと目をそらしてしまった。

あかん、こんなの、人がいなくても喋れませんわ。

ず~っと沈黙が続くが混んだ車内ってことでまあ自然なことなのでなんとか気まずさは回避できている。

そんな感じで30分ほど辛抱したらいよいよ渋谷駅、電車を降りて階段を下り、ハチ公口の改札をぬけると...

うわぁ、やっぱ人多いな!!

目の前に見えるスクランブル交差点は白線を埋め尽くす程の人でごった返しており、行き交う人の姿を人という抽象的なフォルムとしてまでしか脳が処理できない。

目的のスターバックスはその雑踏で賑わうスクランブル交差点をわたりきった先にどどんと設置されている。いよいよだな.....

目当てのスタバを視界に捉え俺は交差点へと向かうべく人々の隙間をリカちゃんとともに進むが、あれ、あれれ?

俺は渋谷駅をでて少ししてからある異変に気づく。行き交う人々が皆俺に視線を向けてくるのだ、女性はいつもより俺に興味をいだくような視線を、男はギョッと驚くような視線を向けてくる......なんだ?いつもは俺なんて誰も気にしないのに??

人々の視線を浴びながらその違和感について考えていた俺はスクランブル交差点前まで歩いてきてようやくその理由に気づく。

リカちゃんだ!よく人々の視線を観察すると、皆まず俺の隣を歩くリカちゃんを見てその後に俺に視線を向ける。

なるほど、わかってきたぞ、リカちゃんという超絶美少女を隣に連れて歩くだけで女性は俺という人間に興味を抱き、男は理解が追いつかずにサプライザルに苦しみながら去っていくのだ。

リカちゃんと歩くだけでこんなに自分を取り巻く環境が変わるのか...

けどわかるぜ、お前たち...なんたって俺自信が今の状況に一番驚いているんだからな。

異性を好む男なら誰だって好意を抱くであろうリカちゃんという美少女を、俺みたいな唐変木が隣を歩くことなど、宇宙の法則が書き換えられでもしない限り本来はありえないことなのだ。

ただ一点、妹の友人という奇跡的な繋がりを除けば。

実際は彼女でもないのだがそれでも周りにはカップルに見える、その通り過ぎてゆく人々の誤解を感じるだけで間接的に満たされていく、俺の自尊心が、男のプライドが!!

今だけは優子に感謝だぜ、俺の妹でいてくれてありがとう。普段はうんざりさせられることの方が多いがな。


「いや~すごい人だね、それにしても」


俺はすっかり嬉しくなり、ワクテカ顔でリカちゃんに話しかけるが、


「え?あ、はい...」


リカちゃんはというとどうも元気がない。

よくみると身をすこしかがめて縮こまっているように見える。

その姿をみて俺ははっと気づく。

恥ずかしいのだ、彼女は、この大都会渋谷という若者のランウェイを俺みたいなさえない男と一緒に歩くのが......

考えて見ればそうだよな、リカちゃんはまだ高校生、周りの評価が気になる多感なお年頃、それなのに他人とはいえ俺なんかと歩く女性と思われたらそりゃ自尊心が傷つくよ...

そう思い、スクランブル交差点の信号が赤から青に変わったところで俺はリカちゃんの隣ではなく、少し前を歩こうと足に力を込めようとすると、


「うわ~すごい人ですね!!リカさん!!」


肩にかけたカバンの中からセナが首をスポッとだして隣のリカちゃんに話しかける。


「あ、ばか!!まだ顔を出すな!」


俺は慌ててセナをカバンに押し戻そうとするがセナは、


「は?健太郎さんの方が馬鹿ですけど?見てください周囲を、誰も私の存在に気づいてないですよ??」


と反論してくる。

え、そうなの?俺はセナに首でクイと促され周囲を見渡すと....ホントだ、誰もセナの存在に気づいた様子がない。

そうか、大都会の喧騒でセナの小さな声はかき消されてしまうから真横の俺達にしか聞こえないんだ。

俺が歩きながらなるほどとセナを見ると、


「これだけ人の意識が乱雑に飛び交う環境だとそもそもコネクトされてる二人以外には私を感じ取れなくなっちゃうんですよ」

なるほど.....わからん。

どうやら俺の推論は違ったようで、人々がセナに気づかなくなるのには別の理由があるようだ。

頭に疑問符を浮かべる俺のことは無視してセナは


「それにしてもリカさん、大丈夫ですか?」


隣のリカちゃんに話しかける。


「え、あ、はい大丈夫です」


「そうですか?電車を出てから少し元気がないみたいですけど...」

あー、駄目だよセナ、その質問は、必ず良くない方向にむかう、必ず、主に俺にとって、

俺は先ほど考えていた事を思い出し、ギクリとするが、俺の予想に反し、リカちゃんは...


「.....ありがとうございます、ごめんなさい、ホントは私人の多いいところは頭がクラクラしちゃって......」

っと元気がない理由を答えてくれる。

あーそうだったんだ、人酔いしちゃうタイプだったんだ、それでか....

俺は予想が外れたことに内心喜び、感嘆のため息をつく。

周囲の人は気づかないようなのでセナはカバンからぴょこんとジャケットの胸ポケに移動したあと、


「そうだったんですか、ごめんなさい、スターバックス行くの、やめときましょうか?」


スクランブル交差点も終盤に近づき、視界いっぱいに捉える目的のスターバックスを前にしてそんな事をいう。

おい、まじかよ!!俺もうスタバ行く気まんまんになってんだけど!?

いや、スタバ以外なんてもう考えられない!!

店内に入れば落ち着くだろ!?なんでそんな事いうんだよ...

俺は目的が頓挫されかねんセナの発言を疎ましく思いながらも、とりあえずリカちゃんの言葉を待つと、リカちゃんは俺の目をチラと見たあと、さっと視線をセナに戻し、


「......ううん、大丈夫!!ありがとうございます!セナさんと話したらなんだか元気でてきちゃった!早く入りましょ!楽しみだな~」


と笑顔を取り戻してくれた。

けど......なんだろ今の、リカちゃんもスタバ行く気になってくれたの嬉しいはずなのになんか心が痛むな.....なんとなくだけどリカちゃんに話しかけづらくなった気がする。

俺は急ぎ足で前を進むリカちゃんの後ろをとぼとぼついていくと、


ドスっ!!!

今度はまじで胸が痛んだ、物理的に。

セナが俺に肘鉄を食らわしたんだ、なんで!?

驚いてセナを見ると、


「鈍感!!」


そういってセナもぷいとそっぽを向いてしまい、またまた話しかけづらい雰囲気になってしまった。

なんだってんだ一体.....


------


リカちゃんに続き、気まずい感じでスターバックス店内に入ってまず思ったのが、


「すご...」


今まで外から眺めるだけで中に入ったことはなかったのだけど、お菓子やら小物やらがおいてある少し狭い通路を通って商品を注文するところまでくると、いきなり視界が開けたと思ったが、違う。歩くスペースの広さは変わらないのだけど、建物と外を区切る境界が全面ガラス張りになってるんだ。

そのせいでまるで外にいるような開放感が体中に伝わってくる。

けれど外の雑踏音は遮られてて店内の雰囲気はまるで別世界との境界線にいるような錯覚に陥る。

これなら全然窮屈に感じないぞ...

建築物を扱うゼネコン社員の俺としてはまるで魔法をみせられるような構造の創意工夫に息を飲んでしまう。

こんなふうに空間を演出する方法があるんだな...…

俺が注文の列を待っている間、ふむふむと感心しながら外の景色を眺めていると、


「お兄さんは抹茶フラペチーノで...セナさんはパンプキンフラペチーノで良かったですか?」


先にレジで商品を注文していたリカちゃんが俺達の分も聞いてくれた、セナの名前は小声にしながら。

やば、ガラス見るのに夢中でリカちゃんの事忘れてた...いかんな、本来年上の俺がリードしなきゃいけないのに...

ちなみに来る途中いろいろ話し合ったが結局抹茶でいいやって結論になった俺と当初から新作を飲みたいと言ってたのをちゃんと覚えてくれててくれたが、後ろ向いてる俺達に一応の確認をとってくれたんだ、こういう気遣いできるのって凄いよな。

それでよろしくといったあと、俺はリカちゃんを一人にするのも悪いのでリカちゃんの隣にたって彼女とレジのお姉さんとのやりとりをじっと眺めるてると、


「それではパンプキンフラペチーノ2つに抹茶フラペチーノですね?」


っとレジの綺麗なお姉さんはリカちゃんと俺の目を笑顔で見て確認を取ってくれる。

俺は普段女に目を合わせられるとキモがられるんじゃないかという不安から目を伏せてしまうところがあるんだが、今は隣にいるリカちゃんに恥を欠かせるわけにはいかないので頑張って逃げようとする目に力をこめてぐっと堪える。

やばい、キモがられる...

そう思ったのだが、俺と目を合わせたお姉さんはニコっと笑顔を向けてくれて、その笑顔がほんとに自然な笑顔だから俺は思わず目を見開いてしまう。

会計では何が何でもとやたら固辞するリカちゃんを制して俺が3人分の代金を払った。

その時もお姉さんは終始笑顔を崩すこと無く、リカちゃんがなんだか気まずそうにしてる気がして俺がヒヤヒヤ肝を冷やしていると、レジのお姉さんがリカちゃんに「優しい彼氏さんですね」っととんでもない勘違い発言をしてしまう。

速攻で否定しなければと思ったが、目の前の笑顔を向けてくれるお姉さんに恥を欠かせるわけにもいかない俺はハハハ...と苦笑いをしてなんとかその場を凌ぐ。

お金のやり取りをして商品引換券でもあるレシートを受け取ったあと、俺達は後ろの人にレジを譲るために先へ進むのだが、俺がさっきの事を訂正しなくてはと後ろのリカちゃんに振りかえると、リカちゃんは何故か両手を頬にあててうつむいている。顔を赤く染めながら、


「私が彼女......私が......」


と何かぶつぶつと唱えているようだがこれはまずい、めちゃめちゃ怒ってんじゃん!!顔を赤くするほど!!


「あの、リカさん...?」

俺が恐る恐る話しかけてみるがリカちゃんは返事をしてくれない、話しかけるなって事か、まずい!!

それでもともう一度話しかけようとするが、


「リカさん!商品ってこっちで受け取ればいいんですか?」


っと同じくスタバ初心者のセナが俺よりも早くリカちゃんにはなしかけるもんだから、


「えっ、あっ、はい、あそこのカウンターで!」


「へ~、待ちに待った新作メニュー、楽しみです~」


「ほんとにね、私も一緒の頼んじゃったけど、大丈夫だったかな...?」


「全然ですよ!!全然!!」

と話がセナとリカちゃんだけの形に移っていってしまい、俺は訂正のタイミングを失ってしまう。

セナのバカ野郎......

しかし、俺がおろおろと自分を見ているのに気づいたリカちゃんは先ほどのお姉さんにも劣らない純粋な笑顔で「??」と首をかしげるもんだから俺は「あ、いや、なんでも...」と目をそらしてしまう。

そんなに怒ってないみたいだから訂正は後でいっか。

どうやら先程の気まずさは俺の勘違いだったようで、一目でわかった。いつもの天使のように柔らかい雰囲気のリカちゃんだ。

自身の杞憂にほっと胸をなでおろす俺であるが、それならなんで俺はセナに肘打ちを食らわされた?

まだじんわり痛みの残る胸の前でリカちゃんと能天気に店内お洒落ですね~とか話しているセナにムカつきジト目を向けると、ピクっ!!

笑顔を作ったままのセナの指先が一瞬ピクついたのを見逃さなかった俺は肘鉄の件を追求するのをやめる。

これまでの経験でセナの指ピクはそれ以上くるとキレるぞ?のサインだと身をもって学んでいる。

ここで踏み込めばスタバの店内で説教勃発だ、君子危うきに近寄らずだ。

目のやり場がないのでカウンターの奥に目を向けると、渋谷スタバではレジのお姉さんが「抹茶フラペチーノーパンプキンフラペチーノー2」っと言ったあと、奥にいる他の店員たちも同じように復唱しながら工場のベルトコンベアのように止まること無くホイホイホイと隣の店員に容器を渡していっているのが

わかった。

どうやら渋谷のスターバックスは複数人で協力してレジ、ドリンク、生クリーム、トッピングとそれぞれのパートをそれぞれが専門に請け負って流れ作業的に商品を作り上げていくシステムになっているようである。

なるほどな~これならひっきりなしの注文にも時間を要せず商品を作り上げて行くことが可能だぞ。

流石アメリカ生まれのコーヒーチェーン、このコーヒーの作り方にはアメリカ自動車の大量生産を可能にしたヘンリー・フォードシステムの応用が使われているのかもしれないな。

コーヒーには少しこだわりがある俺はコーヒーはバリスタみたいな職人が自分の味を守るために一杯に情熱をそそいで最後まで味の責任を請け負うイメージがあったのだが、ここ渋谷でそんな事をしていれば店内はあっという間にすし詰めになってしまうだろう。

利用者数の割に店内に窮屈さを感じないのはガラス張りの創意工夫だけでもなくてこのシステマチックなコーヒーの作り方にも原因があるんだな。

そんな感じで1分ほどまてばあら不思議、生クリームなど何かと手間の掛かりそうなフラペチーノ3つがマクドナルドもビックリなはやさで受取りカウンターまできてしまった。

すごい、ここでも魔法をみせられているような感覚だ。

俺はトレーに置かれた3つのフラペチーノをこれまた素敵な笑顔で手渡してくる別の店員さんから目を合わせながら受取りご満悦だ。

うん、いいよ、なんかいい!スタバ好きになってきた!まだ一口もフラペチーノ飲んでないけど。

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