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族・月と太陽の交差点に潜む秘密  作者: ジャポニカダージリン
第2章
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笑い

あーあ、言っちゃった……

今世紀最大のリカちゃんとの会話チャンスをセナのせいで見事に逃した俺は肩を落としながらリカちゃんの去っていった駅の方向の道をどっぷりと落ち込みながら角を曲がると、意外にもリカちゃんが正面に立って心臓が口から飛び出しかける。


「ええ!リカちゃん?!」


どうやら俺を待っていたらしいリカちゃんは驚く俺に特に反応せず、俺の目をきっと見て、


「さっきはすみませんでした!」


長い黒髪をバサリと正面に垂らしながら謝ってきた。

ななな、なんぞ?


「あのさっきはどうしても笑いを堪えられなくて」


「えっ?ああ、あれ笑いを堪えてたの!?」


「はい、セナさんと健太郎さんのやりとりを見てたらどうしてもおかしくって……」


どうやら吐き気を催していると思ったのは俺の勘違いだったらしい。

ホッ、よかった。

それにしても……


「おもろいか?あんなの?」


セナとの喧嘩の何が面白いのか理解できない俺は素直にリカちゃんに質問をぶつけてみる。


「はい、もう今でも思い出して笑っちゃうくらい…プッ、ごめんなさい」


そう言ってリカちゃんは笑った事を素直に謝り再び艶やかな黒上をバサリと正面に垂らす。ちょっと笑いを堪えながら肩を小刻みに震わせながら。

うーむ、何が面白いのか俺にはサッパリわからん。

笑いのツボの違い、これはリカちゃんとのコミュニケーションに苦労を要しそうだぞ……


「まぁ、笑ってくれるんならそれでいいよ、別に不快じゃないしさ」


俺がそう言うとリカちゃんは


「えっ?怒らないんですか……」

と心底驚いた顔で俺を見つめる。


「怒んねぇよ、別に不快じゃないし。それよりもリカちゃんが喜んでくれる方が嬉しいけど?」


俺がそう言うとリカちゃんは身体を立て直し、大きな目を再び大きく見開き、今度は口をポカンと明けながら心から感心したような視線を向けてくる。

目やら口やら何かと忙しい子だな、

普段から人に笑われる事に慣れている俺は彼女が何に驚いてるのか全くかわからず、訝しげにリカちゃんの目を覗き込むと、バッ!!


「優しい……」


目を伏せ今度は顔を赤く染め始めながら何かを呟く。

怪しい……?何が!?

それっきり彼女は喋らなくなり、俺もうまい対応がわからずなんだかむず痒い気持ちがしてきたので


「まぁ、あれだ、大人の包容力って奴だ」


とボケ気味に言うと、


「そう言う所……」

っと呟くようにリカちゃんが言うのを今度は俺の耳はしっかりと捉えた!!

えっそれ駄目な人に言う奴じゃん……

女の地雷踏みの天才である俺は漏れなく今回も数言の会話で高校生の少女の地雷を両足で踏みしだいているようだ。

いかんな……

本物の地雷に足を乗せたような気まずさで何を言えばいいのかとあたふたしていると、


「リカさんは今からどこか行く所ありますか?」



とカバンから飛び出してきたセナがリカちゃんに話しかける。

な、ナイスセナと言いたいところだが……やだな、またリカちゃんにマウント取ろうとするんじゃなかろうか……

そう俺が内心ヒヤヒヤしていると、


「あの、ごめんなさい、さっきは忙しいって言ったけど、ほんとは何も予定がなくて……」


とどうやらさっきの忙しい発言が嘘だったらしいリカちゃんはまたまた黒髪をバサっと正面に垂らしながら謝ってくる。

あ、やった、リカちゃん予定ないんだ、だったら一緒にスタバ行けるじゃん!

そう喜びかける俺であるが、いかん、セナとの約束が優先なんだ。

なので俺は喉元まで出かかっていた言葉を無理やり飲みこみ、

少し鬱屈な気分になりかけた所で、


「だったら一緒に行きません?スターバックスに!」


なんとセナの方からリカちゃんをスタバに誘いはじめた。

おお、いいのかセナ!?

余計な事を発してリカちゃんの気分を害するのも嫌な俺は、唾をゴクリのみこみリカちゃんの動向を祈るように見つめていると、

「あの……お邪魔しても、いいですか?」


リカちゃんは少し照れくさそうに自身の黒髪をキュッとつまみながらカバンのセナに顔を近づけたあと俺にも目配せをして確認を取ってきた。

勿論!!俺がそう言いかけた時、


「ええ勿論!一緒に行きましょ!!」

俺に向いたリカちゃんの首を引き戻すような勢いでセナが同じ事を言い、

「それじゃあ、よろしくお願いします!」

スターバックスへのリカちゃんの同行が決まった!

でかしたぞセナ!リカちゃんとは違い俺には確認を取ろうとしないのが少し気になるが、まぁいっか。


ーー


「……それで前はスタバがいいって言ったのにドトールだって私の要望を聞いてくれなかったんですよ健太郎さんは!」


「ええ、そうなんですか?」


「そうそう、それに熱いからってアイスコーヒーをまるでお水みたいにゴクゴク飲んじゃって私恥ずかしかったんですよ?」


「あーそれは……ちょっとだけ残念かも……」


「あっはっは!でしょでしょ!?」


道すがらセナは特性胸ポケットホルスターに移動し、楽しそうにずっとリカちゃんと会話をしている。

2人のわだかまりも解けたみたいでホッとひと息ついたのも束の間、セナが内ポケに移動したおかげで……


「えっ!?その後ゲームセンターに犯人が現れたんですかっ!?」


クッ……


リカちゃんは驚く事があるとセナの顔を見るためちょくちょく俺の胸元に顔を近づけるのでその都度彼女の艶やかな髪からはほんのりしたシャンプーの香りに10代女子特有のほってり甘い香りがブレンされて俺の鼻腔内に入り込んでくる。

その都度俺は意識しないように気を張って堪えるのだが、これが辛い……ハッキリ言って会話を聞くどころではない。

耐えろ俺、心身滅却すれば火もまた寒し。

色即是空、空即是色 ……


バレれば引かれることが確定案件な自分の発情を何がなんでも隠し通すと心の中で誓った俺は、無心で耐えるのが辛すぎるので心の中で般若心経を唱えていると、


「ねぇ、聞いてます健太郎さん?」


とセナに聞かれ、はっと我に帰る。危ねぇ、今一瞬どっか行きかけてたかも……


「ん、何が?」


「だから健太郎さんは飲むのは何にしますかって!」


どうやらスタバでの飲み物を聞かれているらしい。

困ったな……

スタバに縁もゆかりもない俺はメニューを聞かれてもコーヒー以外には優子が昔飲んでいた抹茶フラペチーノくらいしか商品を知らない。家を出る前に羊羹をかじったせいもありわざわざあんな甘そうなものを飲む気も起きないのでアイスコーヒーのブラックでいいやと無下に答えると、


「もぅ、また……そんなのだから面白くないって言われるんですよ!?」


「かっこいい……」


とセナとリカちゃんで真逆のリアクションが返ってくる。

自分と似た系統の商品を呑めと圧をかけてくるセナとコーヒーに大人の渋みを感じて無知な俺の自尊心を満たしてくれるリカちゃん。

同じ人間でこうも違うものかね、あーあ、リカちゃんが毎日一緒にいてくれたら俺もそれだけで人生が楽しくなるんだろうな。毎日コーヒー何倍もおかわりしちゃうよ。

そんなこんなで俺も無理やり甘いものを飲む事に決定してどんなメニューがあるのかなどの話を続けている間に幕張駅に着き、俺たちは総武線に乗り込み東京方面へ向かう。

目指すは日本で一番有名な店舗であろう渋谷のスターバックスだ。

日本で一番騒がしいと言われる交差点、スクランブル交差点の正面に店舗を構える渋谷スターバックスの店舗内は終日常にすし詰め状態だろう。

俺は人混みが好きではないので乗り気はしないんだがセナが行くならそこに行きたいといい、基本イエスマンのリカちゃんはいいですねと賛同しちゃうもんだから俺の意思は蔑ろにされてしまう。感じる……三人のヒエラルキーを表すピラミッドが着々と現在進行形で構築されているのを。勿論俺は最下層の一番広い部分だ。

リカちゃんと一緒なのは嬉しいがこれはかなりきつい。

ヒエラルキートップになりつつあるセナが常に会話の中心となり、わがままお嬢様の執事のようなリカちゃんはそれを無条件によしとする。

そして会話が途切れたりちょっと微妙な空気になると下世話人の俺にトップから何か気の利いた事を求められ、俺はその時だけ発言を許される、と言うか無理やり喋らされる。

もう終わりだよこのピラミッド……


「ほら、健太郎さん、何か楽しい話ししてくださいよ!」


セナがおそらく10度目俺に命令するように無茶な話題を振ってきた所でついに俺の精神は臨界点を迎え、


「あのなぁ、そんな雑なフリをされて早々話題なんて出るわけないだろ!」


と軽くキレ気味に口答えすると、


「はい?こんなもんなんですか健太郎さんの力って?」


と小馬鹿にするように返され、リカちゃんの手前出来ませんと

素直に答える事は出来ず、俺は小さな海馬から必死に会話を探り出す。

そのあたふたする所を再びリカちゃんがクッと笑いを堪えるような仕草を見せるものだから恥ずかしさで俺のテンションがどんどん下がっていく。

ヤバい!!


必死に思いついた、以前部長が昼飯にタイを食ってきたという話をタイに行ってきたと勘違いして会話に乗っかって失笑された話をしたら、セナに「健太郎さんらしいですね」と失笑気味に言われ、少し向ムカッときたが、リカちゃんはクスクスと本当に楽しそうに笑ってくれているので嬉しくなってしまう。

あーそれだけで会社でミスる価値あったわぁ。

そんな感じのやりとりを続けながら俺たちは渋谷駅に到着した。

っと言うか完全にセナに操られてんな俺……


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