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族・月と太陽の交差点に潜む秘密  作者: ジャポニカダージリン
第2章
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討論

「行きますよ!スターバックス!」


「えっ、スタバ……」

目をキラキラ輝かせながらスターバックスを口にするセナとは対照的に俺は気乗りのしない返答をする。


「えっ、行きたくないんですか?スターバックスに?」

行きたいの当然でしょ?って感じで俺に疑問符を投げつけてくるセナ。わかってないわ〜


「行きたいか行きたくないかで答えれば行きたくない」


「もう、なんでですか?」


「あのなぁ、セナ、俺はこの世に何故あのような喫茶店が存在し、日々混雑を極めているのかハッキリ言ってまるでわからんのよ」


「喫茶店スカ……」

ポカンと口を開けてセナは驚いている。あれ、俺なんかおかしい事言ったか?まぁ今はそんな事はどうでもいい、


「そりゃあ流行る理由はわかるぜ?どう見たってオシャレだもんな?スタイリッシュって言うの?けどな、それだけだ。あんなものは形だけ気取って中身がなく、それに乗っかる頭の軽い女共がキャーキャー騒いでるだけのしろもんなんだよ。コーヒー飲むのになんでカッコつけなきゃいけないんだ?逆にくつろげないっつーの!」

セナが目を丸くしてるのはお構いなしに、俺はマシンガントークで自分の中のスターバックス像を語り続ける。

感じる……俺の中にグツグツと煮えるスターバックスへの怒りのようなドス黒い感情が込み上げてくる。

憎い。世間の脚光を浴びるスタバが許せねえ……

人生ずーっと陰のものであり続けた俺は、スタバのようにキラキラした流行チックなものが無性に許せないのだ。


「そ、そんな事ないです!ビバレッジだってすっごく充実してるしー」

セナの奴反論してきやがったな、チクショーめ、


「はいデター、ビバレッジだってよハクリュー。横文字使えばカッコイイと思ってんだから女って生き物はハッピーでいいよな、そこいらの寂れた寺だってテンプルーに呼び方変えれば連日参拝客で賑わうんじゃねぇの?なぁ?」

テンプレ思考のようなセナを見てるともはや笑いが込み上げてくるね。

俺はフランス映画の男優がやるように両手の平を上に向けて首を左右に振りながらセナの横にいるハクリューをチラと見る。

男同士一緒にこの愚かな生き物を笑ってやろうぜという意味合いを込めて。しかし、


「そ、そんな事ないと思うのだが……人気になるにはそれなりの理由があるんじゃないのかな?」

ハクリューは乗ってこない。

あーあ、まただよ、いいカッコしいのハクリューはセナと俺の討論になると100%と言えるくらいの確率で女のセナ側につく

もう我慢ならん、今日こそ言うぞ、


「あのさぁハクリュー、前々から思ってんだけどお前無条件にセナにつくのやめろや!」

俺は恐怖で内心ドキドキしながらも前々からハクリューに対して気になっていた事を赤裸々に告げてやった。


「何?いつ僕がセナに依怙贔屓えこひいきしたというんだ?」


「してるじゃねえか毎度毎度。今だって俺の話しの内容関係なくセナにつきやがって、そのせいで会話にならねぇんだよ」


「違う、僕が健太郎に賛同しないのは君が専断偏頗せんだんへんばな事を言うからであって、僕は常に公平であろうと意識しているんだ」


「クッ……」

せんだん?それがなんなのかはよくわからんが今意味を聞く事は意地でも出来ねぇ。おそらく独りよがりとかそういう感じだろ。ちっ、ここでも難しい言葉を使う自分に酔おうとしやがって、許せねえ。

俺がそう思い、更にハクリューに追撃をかけようとしたところ……あっ!

目を瞑っていたセナが一瞬ピクついた。

それを見て瞬時に悟る俺、ここから僅かでも今の口論を続けようものならセナの活火山が即座に大噴火を起こす……

それはまずい、非常にまずい。

なので俺はハクリューではなくセナの方を向き声をかける、


「あ、あの、その、なんだ……」


「あっ?」

ヒェ、怖い……セナの瞳には既に物凄い怒りが浮かんでいる。

ハッキリ言ってこないだの男よりも怖い……

それを見て急に俺の中の勢いがしぼみかけるが、踏ん張れ俺!

リカちゃんだって助け出したじゃないか!


「ス。スターバックス今から行こっか?」


俺がなけなしの勇気を振り絞りセナをスタバに誘うがセナは、


「もういいです」

そう言ってプイとそっぽを向いてしまった。

まぁ怒って当然だよな、好きなものあんだけコケにされりゃあ。

なんか悪い事したな、これは謝らねば……


「いや、悪かったよ、軽い冗談のつもりが何故か収まらなくなってさ、すまん、謝る」


「もういいですから」


俺に背を向けたまま答えるセナ。

うわーウザ……

そりゃあ好きなものをコケにしたのは悪かったけど、謝ってんじゃん。

で絶対許してないパターンじゃんこれ。

だからやなんだよな女って、ちょっとした事で機嫌悪くなるんだからよぉ。

しかしこれはこちらが100パー悪い。なので堪えて機嫌を取らねばならないな、何かいい案はないか……

俺はこの重い空気の中、1人では現状打破のいい案を思いつきそうになかったので、片目を瞑り、右手でチョップするようにしてセナの隣にいるハクリューに視線を送る。


ハクリューが僕が?!って感じで驚きを見せたところ、


「健太郎さん、わかってます?」


背中を向けたままのセナが話しかけてきた。しめた、これを機嫌とりの突破口にするぞ!!


「何が?」


「……なんで私が怒ってるかわかりますか?」


「そりゃあ、好きなものあんなにコケにされれば誰でも怒るだろ、俺でも多分怒るわ、いや悪かった」


俺がそういうとセナは納得仕切れないような様子で間を置いている。

あれ?違うの?俺はこの沈黙の意味がわからず黙ってセナの方をじっと見つめる。

そんな俺の動揺を感じ取ったのかセナは、ふうと一つため息をつくと徐ろに振り帰りながら俺を見る。

その瞳が何か憂いを帯びていて俺は少したじろいでしまう。


「それもありますけど、本当は違うんです。1番の理由はハクリューさんを巻き込んだ事。ハクリューさん何も悪い事してないのに巻き込み事故もいいところです」


「セナ……」

どうやらハクリューは感激したらしく、瞳を煌めかせながらセナの方を向いている。

え、ちょっと待って、ハクリューを巻き込んだ事にセナちゃん怒ったの?

ハッキリ言ってわからんぞ?その怒りの意味。

ハクリューと俺のやりとりはセナには関係ないじゃん。

それにハクリューは俺がこういう奴だってわかってるからセナのように不機嫌になる事ないのになんでセナが怒ってんの?

問題ややこしくしてんのセナだけじゃん?

本気でそう思う俺であるが、今はセナに反抗しない方が賢明だ。

なのでここは話を合わせておこう。


「あ、あぁ、確かにそうだよな、巻き込み事故だ。悪かったよハクリュー」

俺は内心腑に落ちないと感じながらも一応形式的にハクリューに謝っておく。


「いやいいよ、僕も悪かった、確かに健太郎にとっては不公平に見える振る舞いをとっていたのかもしれない、今後気をつけるよ」

俺が謝るとハクリューもそういって謝ってくれる。俺にとってはってのに引っかかるが。

そしてハクリューはにゅるりと首を俺からセナの方へ回し、


「というわけでセナ、僕は健太郎に対して全く怒ってないからセナも機嫌を直してくれないかな?」

とセナの説得を始めてくれたよ。


「うーん……」

それでも何か出し渋る様子のセナであるが、ハクリューはセナの感情の結論を待たずに


「せっかくの休日なんだしさ。それに最近新作が出たから気になってたんだろ?」

新作ワードを出してセナに揺さぶりをかける。

セナはハクリューに言われてそれを思い出したらしく大きく目を見開らき、


「そうだ!新作出たんだった!私カボチャのラテが飲みたかったんでした!」

とこれまでの怒りはどこへやら、意気揚々とラテの事を話しだす。

ほ、大丈夫そうだな。

けど俺新作の話知らないんだけどな……

そう思っていると、ハクリューが俺の方へ向き、

「健太郎はどうだい?まだ気乗りしないかな?」

そう言ってくる。


「え?えっと……」

ハクリューに心を見透かされたようで少し逡巡する俺であるが、


「行きましょうよ、ね、健太郎さん?」


先程までの険悪さは何処へやら。

セナが俺の方へとてとてとかけてきて全く疑いのない目でそう言ってくるので、なんだろう……

セナに誘われてカボチャラテを飲みたいという感情が芽生えてしまっている。スタバに行きたくなってしまっている。

おーい、俺のプライドどこ行った!!


「そ、そうだな、新作、飲んでみるか!よし、行くぞ野郎共!!」


「おー!!」

「うんうん」


「ムニャムニャ、どうしたんだお?」


俺の掛け声にセナとハクリュー、そしてこれまで太々しく寝ていたヤドランが目を覚ました。

じゃあ行ってみますかスターバックスに。



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