タク
拐われたってどういう事だ!?
あれから暫く待ったがスマホに返信はこない。
警察に連絡しようとも思ったが、何を説明すればいいのかわからないし、話したとして警察が動くとも思えない。
そもそも何故あんなラインがリカちゃんの携帯から送られてきたんだ?
「ハクリューさん、ですね」
同じく携帯を見つめていた胸元のセナが呟く。
「どういう事だ?ハクリューがリカちゃんの携帯を使ったって事か?」
「はい、ラインの文面からあれを書いたのはリカさん以外の誰か。そして、私達に今連絡をよこせるのはリカさんのカバンの中にいるハクリューさんだけだと思います」
セナは真剣な口調で語る。
そうか、そう考えると辻褄が合う。
「だったらなんで次の連絡が来ないんだ?」
俺は焦りながらセナに尋ねる。
「それは、おそらく何らかの原因でスマートホンが使えなくなったのでは……」
「何らかの原因って何だよ?」
「それは分かりませんが……」
俺の中で嫌な予感がどんどん形をなしていく。
拐われ、そして携帯を使えなくなる。これが事実ならリカちゃんは……
もう一度ラインの画面をスワイプするが、画面は無言のまま。
「ど、どうすればいいんだよ?やっぱり警察に連絡した方が……」
俺は急いで携帯で110番を押そうとするが、
「落ち着いてください!今警察を呼んでもどうする事も出来ません!」
それをセナが制止する。
「だったらどうすりゃいいんだよ!?待てばいいのか?リカちゃんに危険が迫ってるかも知れないのに!?」
通報を止められ、イラついた俺はセナに怒鳴った。
それに驚き周囲の人達が俺の方を見たのに気づくが今はそんな事はどうでもいい、とにかく今すぐ何とかしないと、何とか……
「そうですね、少し待ってください、私なら今リカさんがどこにいるのか知る事が出来るかも……」
「はっ?どうやってだよ?」
俺が質問するが、セナは何も言わずに瞳を閉じる。何かに集中するように深く静かに俯きながら。
「……」
セナが何をしているのか気になるが、今はセナの言うことを信じるしかない。
もどかしさを必死に抑えながらセナを見つめていると、
「わかりました!」
セナが目を閉じたまま口を開いた。
「わかったって何がだよ?」
「ハクリューさんがいる場所です……これは……自動車?」
「ハクリューがいる場所って、なんでそんなんがわかるんだよ?」
「今はそれを説明してる暇はありません!!とにかく健太郎さんは急いで自動車を見つけてください!早く!!」
「自動車ったって……」
セナの剣幕に押され、俺は周囲を見渡すが、急に車なんて使えるわけがない。どうしろってんだ……あ!
そう思った時、俺の視界に駅前道路の白線内に停車している一台のタクシーが飛び込んできた。
天井ランプはちょうど空室だ。花火帰りの客を駅まで送り届けた後のようだ。
俺は立ち上がりそのタクシーに向かう。
全力でかけながらもタクシーの様子を伺うと、ドライバーはウィンカーを右に出しながら車道の車が途絶える機会を伺っている。
ヤバい…!!
タクシーの後方で車が途絶え、ドライバーはサイドミラー越しにそれを確認したのを見てとった俺はそれを防ぐようにタクシーの正面に入るように進路を車道側にそらし
「すみません!!」
そういって発信しかけたタクシーのボンネットに両手を置きドライバーの目をフロントガラス越しに覗き込む。
俺の存在に気づいてなかったドライバーは驚いて急ブレーキを踏む。
「馬鹿やろう!!危ねーだろ!!」
はぁ、はぁ、止まってくれた……
開けた窓から顔を出してドライバーが怒りの剣幕で怒鳴ってきたが、
「す、すみません、このタクシーに乗せてください!!」
俺は謝りながら必死にお願いする。
何とかしてこのタクシーに乗せてもらわないと、今は少しでも時間が惜しいんだ。
そう願いドライバーの目をギュッと覗き込むと、俺の必死さが伝わったらしく、ドライバーは怒りの表情を引っ込め、その目は真剣なものへと変わっていく。
「急いでるのか?」
「今は時間がないんです。お詫びなら後でいくらでもします、どうかこのタクシーに乗せてください!」
俺がそういうと、ガチャリ。
ドライバーが左手でレバーを引き、後部座席のドアが開く。
「乗んな……」
「あ、ありがとうございます!」
俺はお辞儀しながらその開いたドアを入りやすいよう少しだけ開け、体躯を車内へと入れ込みまっ白のシートに腰を下ろした。




