表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
族・月と太陽の交差点に潜む秘密  作者: ジャポニカダージリン
第2章
77/117

決壊

「えぐっ、えぐっ、すびばせん、私……」


「もういいって、気にしなくていいよ」


「だっで、わだじのせいで健太郎さんとリカさんが…‥」


「ほんと俺とリカちゃんはなんでもないから」


俺はさっきからずっとこの薄暗い公園の街路灯の下で鳴きっぱなしのアリスを宥めている。

アリスを放ってリカちゃんを追うことも追うわけにもいかず、リカちゃんが見えなくなった後、仕方なしにアリスとラーメン屋に行こうと声をかけたらアリスが突然泣き出してしまったのだ。

しかもかなりマジ泣きで引き攣るように身体をヒクヒクさせて泣くもんだから、アリスの行動の理由も分からず対処の仕方も思いつかずの俺は困ってしまった犬のお巡りさん状態で今にも俺もわんわん泣きそうだ。


「ごめんなさい、私、ダメだと思ったけど、ヒックッ、ゲンダロウさんが行っちゃうのが嫌で気づいたらヒック……」


「いやそれはわかったって!俺も大人だ、アリスを置いてリカちゃんと帰ったりしないって!」


「うわぁぁぁ、すびばせん」


これだよ、何がそんなに悲しいのか、俺ってアリスにも一緒にいる先約を放って行ってしまうような鬼畜漢に思われてんだな……いかんますます泣きたくなってきたぞ、とにかくなんとかしてアリスを泣き止ませなくては。


「ちょっといいか?俺の話を聞けって!!」

俺ははあっと大きく息を吐いた後、少し強めの語調でアリスの顔面を覗き込む

するとアリスも

「はい、ヒック、ヒック……」

と引き付けを起こしながらも俺の話に耳を傾けてくれるらしく俺の目を見つめてくる。

いかん、女の子の泣き顔って見るだけでいたたまれないきもちになってくるな、しかしくじけちゃダメだ、気合い気合い。


「そのなんだ、俺はアリスのした事を全然恨んでもないし、むしろ当然の事だと思っている」


「当然……?」


当然と聞き返すアリスからひきつけを起こす気配が消えた。

どうやら俺の言葉でアリスの罪悪感が少し薄れた為だろう。

だからここはいかにアリスから良心の呵責を解いてやるかが重要って事なんだろう。

ここは勝負どころだぞ、答えを間違えると期待を裏切られた反動で取り返しがつかなくなる恐れがある。


「えっとだな……」

アリスにまじまじと見つめられ、若干たじろぎながらも俺は慎重に慎重に拙い語彙を紡いでいく。


「アリスはあの時そうしたいって思ったんだろ?」


「はい……」


「だったらそれはきっとアリスにとっての最適解なんだよ、後で例え泣く事になってもさ」


「で、でもそれで健太郎さんとリカさんが……」


再びアリスの声は震えだし、収まりかけていた悲しみの感情が溢れ返しそうになっている。

いかん、これでは同じ事の繰り返しだ、なんとかここでもれかけの感情をほぐしきってやらなければならない。


「俺の事はいいんだよ、今一番大事なのはアリスがちゃんと自分の声に耳を傾けられたかどうかなんだよ」


「自分の声?」


「そう、自分の声だ」

俺はこくりと頷きながら答える。


「インターネットの発達で大分自由になったとはいえ、まだまだ今の日本では自己犠牲の精神で和を維持すべきだって雰囲気が蔓延してるんだ、けどな、俺はそれは間違いだと考えてる」


会社とか会社とか会社とか。

話しながら俺の頭の中には日々の会社での俺へのパワハラ、酷い扱い、人権無視等のおおよそ優しいニッポンでの出来事とは思えない苦渋の日々が思い浮かばれてくる。

そして語気にも段々と力がこもってきてしまう。


「なによりも大事なのは自分で自分の本心を汲み取ってやる事なんだ、押さえつけるんじゃなく。それで後悔したなら次からは自然とやらなくなるし、次からは別の方法を考えられるようになる。多分、人生ってそうやって前へ進んでいくもんなんだよ」


俺は今言った事を普段1%も実行出来てない事はそっちのけに普段の俺を知らないアリスにそう説得する。

半分は若いアリスへの期待として、半分は自分自身に言い聞かせるようにして。


「……」


熱心に語った俺だったが、話を聞いたアリスはへえとかそうなんですかとかいうわけでもなく黙り込んでしまう。

これは、伝わりきっていないのか、はたまたうざい親父の説教のように思われてしまっているのか判別がつかない。

こ、怖い……


「とにかくだな、そういう意味でちゃんと自分に正直になれたアリスってのは偉い子なんだよ、それに人の事も考えられる優しさもあるんだから大丈夫、アリスの行動が間違いだなんて事は決してない、と思うよ俺は」


アリスの無反応に耐えきれなくなった俺は強引にいい話になるように持っていき、語りを終えた。

ふう、なんとかここまで漕ぎ着けることが出来た。

見切り発車の理由だったが思った以上にうまくごまかせた気がした俺は胸の奥で大きくため息をつくが、表には出さず、そのままアリスの頭に手を置いてやろうとしたんだが、訴えられても困るのでやめておく。

これで完全に泣き止んだとおもわれたアリスだったのだが……


「う、うわぁぁぁん!!」


ありゃりゃ、また泣き出してしまったのだ!!

またやっちまったか俺……アリスのかんにさわることを無意識に言ってたのかもしれん……


「ご、ごめん、偉そうな事言って、冴えない中年にこんな話されても面白くないよな、忘れてくれ!!!」


おろおろしながら必死に謝る俺、しかしアリスが泣き止む気配がない。

もう駄目だ、これはもう土下座で乗り切るしかない!!


そう思い、右足を後ろにそらし腰をかがめかけると、


「違うんです!これは健太郎さんがやさしすぎて勝手に涙が出てきちゃうんです、うわぁぁぁ」


俺がやさしすぎて泣く??

どういうこっちゃ?

とにかく俺はそれ以上は何もする事が出来ず、野々村議員のように大泣きするアリスの前でしばし立ちすくむのであった。

ほんと女性ってようわからんな。。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ