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族・月と太陽の交差点に潜む秘密  作者: ジャポニカダージリン
第2章
71/117

我慢

秋葉原から降りた俺たちは、電車から降りた大勢の人波に飲まれながらホームにある上り階段で総武線ホームへと移動する。

セナと出逢ってから何かと寄ることが多い秋葉原には今回は降りないようだ。

と言うか、俺達が乗るのは総武線千葉方面行きのホーム、いつも俺達が使っている方面だ。

江戸川花火が行われるのが江戸川のある小岩あたりだから、小岩駅に向かう千葉行きホームには浴衣を着た人たちで溢れかえる。

俺達みたいな私服を着ている人たちの方が少ないくらいだ。

ホームへ着いた時ちょうど千葉行き急行が止まったとこだったので、乗り遅れないように自身を押し込むようにして電車内へと滑り込んだのだが、ここで問題が起きる。

電車の構造上扉は一定の間隔で取り付けられているため、俺とアリスは次々と入ってくる人達に両サイドから押さえ込まれるようにしてどんどんお互いの距離が狭まっていく。

アリスとの密着を避けるためグイグイ押してくる圧力をなんとか背中で堪える俺だったが、扉が閉まる時に生まれる圧迫に押されたアリスが俺の身体に触れ、そしてついにお互いの距離はゼロに……

正面を向き合っていた俺とアリスはキツく抱き合うような形になってしまった。


ぬおぉぉぉ!!

これはまずい、非常にまずい!


アリスの柔らかい身体が俺の身体全体に吸い付くように密着している。

こんな状態に興奮しないわけはなく、アリスの下腹部に当たったもう一人の俺はアリスとの距離をさらにマイナスに埋めようと躍起になる。

そして更にまずい事に、眼下で恥ずかしそうに俯いているアリスの頭からは女子の甘い香りが揮発し、真上にある俺の鼻腔を激しく刺激してくる。

何か話でもして気を紛らわせたらいいのに、逆に意識しあうのが気まずくて、こんな異常な状態なのに、かえって何も話せなくなる。

しかし事故とはいえもしこんな状態で俺が興奮している事がバレれば俺とアリスの心的距離はリミット♾(むげん)へと広がり永遠に戻ってこれなくなってしまうだろう。

俺は僅かでももう一人の俺を暴れさすまいと必死に頭を空にし、その場で耐え続けた。


もういいかな……

どれくらい時間が経っただろう。

いくつかの駅に止まり、その都度入ってくる乗客のせいでアリスとの密着が強まり、

ついに理性が麻痺しかけてきた時、車内アナウンスが小岩を告げる。

よ、よかった……に、二重の意味でよかった……


電車が小岩駅に止まり、車内のほとんどの人がホームへと流れ出ていく。


それで俺との密着が溶け、降りると思っていた俺もその流れにのって扉の方れ行こうとすると、アリスに腕を掴まれ引き止められる。


「へっ?」

驚いて情けない声をあげる俺。

ど、どう言う事?


「あの、ここで降りるんじゃ……」


「あ、ち、違います」

俺が腕に視線を送ったのに気づいたアリスは慌てて俺を掴んでいた手を離しながら答える。


「私達が降りるのはもう少し先なんで……」


「え、そうなの?でも花火大会って江戸川でしょ?」


「そうなんですけど、もっといい場所があるんですよ!」

先程の気まずさを掻き消すように言うアリス。

江戸川を越えればもう千葉だけど、アリスが大丈夫というならそうなんだろう。

まだ僅かに気まずの残る電車内をさっさと降りたかったが、俺達は一気に人が減った車内で、流れていく人で溢れかえった小岩駅を見送った。

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