戸惑いの果てに
もしかして何かの罠なのか?美人局みたいな。
いやいや、そんな悪い子には見えなかったけど……
店員さんからの突然の花火のお誘いライン、あまりに突然すぎて俺には理解が追いつかない。
これまで女の子から遊びに誘われるなんて経験がリカちゃん以外にない俺は変な疑りを抱いてしまうが……
しかし可愛い女の子と一緒に花火。これは男子なら誰でも一度は憧れるシチェーションじゃないですか……
それにせっかく誘ってくれたのに無碍にするのも悪い気がするな。
「なあセナ?アリスちゃんが花火一緒に観に行きたいって言ってるんだけどさ……」
一人であれこれ悩んでも仕方ないので俺はアリスちゃんのラインを一旦ストップし、胸元のセナに話しかけた。
「そうみたいですね」
「これオーケーしちゃっていいのかな?」
「なんでそんな事私に聞くんですか?」
ん?なんだろ?顔を伏せながら話すセナは目を意図的に合わせてくれてないような気がするけど気のせいかな?
「だってお前らにも許可取るべきだろ?一緒に行くんだからさ。勿論二人が嫌なら断るけどさ」
「……いいんじゃないですか」
「そっか!」
どうやら気のせいだったようでセナは笑顔でそう言ってくれた。後はヤドランか。
こいつは基本なんでも寛容な奴だから確認とる必要もない気もするけど俺は一応確認を取るべくカバンの中にいるヤドランに聞いてみる。
「さっき店員さんだったアリスちゃんも一緒に花火に行く事になったけどいいよな?」
しかし俺の予想とは裏腹に、ヤドランから返ってきた言葉は
「お、オイラはやめておいた方がいいと思うんだを……」
「え?なんで」
「そ、それは……」
大概の事には気を留めないヤドランにしては珍しく言葉を言い淀んでいる。なんか気になる事でもあるのかな?
ヤドランがちらとセナを見ると、
「?私は構いませんよ?」
「だ、だを……」
「カ・マ・イ・マ・セ・ン・ヨ?」
何故だか同じ事を念を押すよう二度ヤドランにいうセナ。
「せ、セナがいいならいいんだお」
どうやらヤドランはセナに気を使ってたらしい。
さっきの話聞いてなかったのかよ。
ったく、ボヤっとしてんなこいつはさ。
「じゃ決まりだな、アリスちゃんにはOK出すわ!」
「はい」
「だ、だお」
二人の了承を得て、スマホに再び目を向けようとした時、セナが待ったをかけるように話しかけてきた。
「けど、健太郎さんはいいんですか?」
「ん?何が?」
「その、リカさんの事は……」
「なんで今リカちゃんが出てくるだ?そりゃあ喧嘩した後に俺達だけ花火見るのは悪い気もするけど、気にしたってしょうがないじゃん。今誘ったって焼石に水だろうしさ」
俺は先程のリカちゃんから送られてきたLINEの内容を思い返す。
あれはマジで今は何も送らない方がいい。
俺くらいに女性から嫌われ、避けられ、大量の既読スルーを経験すると、送る前から第一感で何となくわかってしまう。
『これは永遠にお蔵入りのメッセになるだろう』
と。だからリカちゃんは花火に誘えないのだ。
しかしセナは俺の考えには納得してくれていないみたいで、不満げな表情を浮かべている。
「そういう意味じゃなくって……」
「は?じゃあどういう意味だよ」
「いえ……なんでもないです」
俺が聞き返すとそう言って胸ポケットに顔を引っ込めてしまうセナ。
はっきりしないよな〜、結局何が言いたかったんだろ?
けど、セナに言われて俺の心の中にも何か後ろめたさのような感情が湧いてきたな。
何故か頭の中にリカちゃんの涙目が浮かんできてしまい、
(やっぱり断わろっかな……)
ふとそう思った時、
シュポっと新たにメッセージが、送られてきた時の音がしてスマホをみると。
『本当に迷惑だったら断ってもらって全然構わないんで!!』
『それによく考えたらフィギュアちゃんにも悪いですし。笑』
アリスちゃんから立て続けにメッセージが、送られてきた。
笑顔の絵文字で明るく振る舞ってるけど、きっと返信が遅いから不安にさせちゃんたんだとスマホ越しにそれが伝わってくる。
別に悩む事じゃないんだよな、二人にはちゃんと許可とったんだし。
『迷惑だなんて全然!!自分みたいなオッサンでよければぜひアリスさんの花火鑑賞に同行させてください。笑』
俺はそうアリスに返信を送った。
久しぶりにかけました。
覚えてる人おらんだろうな。




