問い
「なんですか?」
俺に肩を掴まれたリカちゃんは露骨に不機嫌さを表情に浮かべながら振り向く。
うっ……やっぱりめちゃくちゃ怒ってる。
俺はその鋭い目を見て怯みかけるが、なんとか踏ん張って声を出す
「さっきの事謝りたくて……」
「……私、ショックでした。関係ないなんて言われて。私はお兄さんにとって心配されるのも迷惑な程度の他人なんですね」
そんな事ない! 俺はリカちゃんの事はずっと特別な存在に思ってるんだ!幼馴染とかそういうのじゃじゃなくて……
最初に頭に浮かんだのはそんな告白じみた言葉だった。だけど、俺がそれを言うのは許されない。
言えば全てが崩れ去ってしまうから。
俺は黙り込んでしまう。
こんな時、なんて言えばいいんだろう。
いままで会社で部長や佐藤さんをさんざん怒らせまくっては謝り倒して生き延びてきた俺の記憶をいくらひっくり返してもこの場を切り抜ける適当な言葉が見当たらない。
そして、その沈黙を肯定と受け取ったリカちゃんは、
「失礼します」
そう言ってクルリと180度踵を返してまた歩き出そうとする。
「ちょっと待って!!」
「はい?」
俺は歩を進めようとするリカちゃんを再び呼び止め、リカちゃんが振り向く。その表情には言葉が出てくるまで待つと言ったような寛容さが感じられない。
何か、今すぐ何か言わないといけない。それだけはわかる。っが、何を言えばいいのかわからない。
なんでもいい、とにかくさっきの問いに答えないと。
「ほ、ほら、言ったろ?リカちゃんの事妹みたいに思ってるって……」
「……失礼します」
リカちゃんは一瞬両手を大きく広げ、驚愕の表情を見せた後、直ぐに真顔に戻り、さっと深いお辞儀をして去ろうとする。
「あ、ちょっと待って!」
背を向け早々に立ち去ろうとするリカちゃんの手を握りなんとか引き留めようとする俺だったが、
「もうほうっておいてっ!!!!」
「つっ……」
リカちゃんに怒鳴られ、俺は掴んでいた手を放してしまった。
リカちゃんは足早にこの場を去って行くが、もう俺には引き留めることはしない。
あんな目を見てしまったら。
(泣いてたよな、今の……)
俺を睨むリカちゃんの両目にはうっすら涙が滲んでいた。
まるで抑えきれなかった感情が溢れだしてしまっているように。
また間違えたんだな……
何が行けなかったのかはわからないがそれだけはハッキリわかる。
遠ざかるリカちゃんの背中をぼんやりと眺めながら、俺はその場に立ち尽くした。




