告白
「お人形の声が聞こえなんて、そんな事あるわけないじゃないですか」
リカちゃんはそう言った後、一瞬気まずそうな顔をした後、再び顔を真剣な顔つきに戻す。
自分で言った事に自分で驚いたような感じだ。
それはそうと、俺は頭の中で急いでこの場を切り抜けるために適当な理由を探してみる。
どうする? リカちゃんの言ってることに素直に合わせてやり過ごすか? それともリカちゃんの勘違いだとシラをきる? いずれにしても本当の事を話しても信じては貰えないだろう。
必死で考えた末に、俺はシラを切る事に決めた。
まだ誤魔化しを諦めるのは早いとの判断だった。
「リカちゃん何か勘違いしてない? 人形と会話なんて出来るわけないじゃん」
「えっ? でもさっきはお人形さんに協力するって言いましたよね?」
「いやいや、『緊張』と聞き間違えたんだよ!緊張するけど協力しないといけないなって」
ちょっと苦しいけどどうだ!? 俗にゆう韻を踏むと言うやつで、ニンとキン、ギョウとチョウ、それぞれの漢字の音読みの母音を合わせる事で勘違いしてしまった事に説得力を持たせる。
「そうですか……」
それを聞いたリカちゃんはションボリ。焦点の定まっていないような視線で何も言わずに下を向く。
よしよし、どうやら納得してくれたみたいだ、さ、この話はおしまい。早く別の話題に切り替えないとな。いつまたボロを出してしまうか分かったもんじゃない。
それと今日一日はセナの事は無視しといた方が良さそうだな、後でトイレにでも行ってセナに説明しとかないとな。
「ま、それより早くパスタ食べよ、冷めちゃうからさ!」
そう言って俺は両手の指先をテーブルに向け、手のひらをリカちゃんに押し出すようにして彼女の注意を眼下のパスタに向けさせようとする。
美味いアラビアータ食べて笑顔になればさっきみたいな和やかな雰囲気に戻るはずさ。
「やっぱり真面目には答えて貰えないんですね」
しかしリカちゃんはナプキンの上のフォークには手をつけずにそう言った。
どうやらまだ納得してないみたいだ、困ったな。
けどここは強引に押し切るしかないよな。
一度手をつけた誤魔化しは最後まで押し切らねば今後の信用を失ってしまう。ここは意地でもほんとと言い張らないと。
「いやマジだって。マジにそう聞こえたんだって!」
「嘘です! お兄さん私に嘘ついてます!!」
しかしリカちゃんも食い下がる。なんだろ、今回のリカちゃんはいつもの素直さがないな。いつもならこれくらいで俺の気持ち汲み取ってくれるんだけど。
「嘘なんてついてないって! ほんとだって!!」
俺は強引にでも説得させようとさらに語気を強めて言う。若干必死になって。まるで恋人に浮気を疑われた男が必死たなって誤解を解こうとする様に。
しかしリカちゃんははいてくれない。
「絶対嘘です。私、お兄さんが嘘ついた時わかるんですから」
リカちゃんはそう言う。何か確信めいたような様子で。
俺はそれを聞いて心臓が一際大きく鼓動を打つのを感じた。その上昇した血流に突き動かされるように俺には若干のイラつきが生まれ始める。
なんでこんなに追求してくるんだよ、俺は必死に隠そうとしてるのに。
「本人が違うって言ってるんだからそれでよくない? それに仮にもしそうだとしても昨日リカちゃん自分で言ったよな、誰にも言いたくない秘密はあるって。リカちゃんがやってるのってそういう事だぜ?」
「……」
そう言うとリカちゃんはショックを受けたような顔をした後、黙りこくってしまう。
最悪だ、俺は今高校生相手にもの凄く大人気ない事をした。
自分の嘘を隠すために彼女の心にナイフをあてて人質にとるような卑劣な行為をした。本質的な意味で、この間のフィギュア泥棒と変わらない、脅しをつかったんだ。
俺も何も言えなくなり、二人沈黙につつまれるていると、胸の中から声が聞こえる。
「健太郎さん、ここは謝ってもう全部正直に話しましょう。あ、返事はしなくて大丈夫です。リカさんの前で私が少し動いて見せればリカさんも信じてくださると思いますので」
「動くってお前……」
そう思わず出してしまった声にリカちゃんがピクリと反応を示す。なので俺は慌てて口を閉じる。
以前セナが話してくれたのだが、セナ達が自分の正体を直接人にバラすのは御法度らしい。それは自分たちの存在が危なくなるかららしいんだけど。
けれどセナはその危険を顧みずリカちゃんにバレてもいいと言ってくれている。
険悪になってしまった俺達の事を考えてくれて。
「ほら、早く!!」
セナにそう言われて俺は決心する。
ありがとなセナ。リカちゃんならきっと事情を理解して嘘をついた事も許してくれるだろう。
「リカちゃん、あのさーー」
俺は勇気を振り出し、リカちゃんに話しかける。




