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族・月と太陽の交差点に潜む秘密  作者: ジャポニカダージリン
第2章
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meringue

「で、リカちゃんはどこに行きたいの?」

 俺はリカちゃんに引っ張られるようにして慶應通りを左に折れて路地の中に入って行く。そういやこのあたり昨日も来たな。

 俺はふと昨日大学生くらいの店員さんに連れてこられた時も同じ通りだった事を思い出す。まさかリカちゃんが行きたいところって……


「ここです!」 

 まさかのまさか、リカちゃんが立ち止まり、指をさしたのはまさに昨日俺とセナが入った建物そのもの。

 嘘だろ……俺は建物を前に、昨日早見さんにボコボコに愚痴を吐かれて心に深い傷を負ったトラウマで後退りする。


「どうしました?」


「いや、ここって……なんでここなの?」


「ここのランチって凄く人気で、ケーキよとても美味しいらしいんです。お兄さんは嫌ですか?」


「嫌っていうか……」

 嫌だよ、ショックから立ち直れてないこともさることながら、店員さんにも俺の愚痴を聞かれるという恥ずかしいところ見られてるのに、あんな事あった次の日にまた来てどういう顔したらいいんだよ……


「ちょっと健太郎さん!!」

 言葉に詰まっていると、バックの中からセナが話しかけてくる。なんだ?

「私嫌ですからね! あり得ないでしょう、別の女性と入ったお店に今度はまた別の女性と入るとか!」


「女性って……お前のこと?」


「ああっ!?他に誰がいるの?!」

「すみません、セナさんしかいません……」

 

「あの、お兄さん……?」

 ヤバっ、!リカちゃんが近づいてくる。

 セナとやりとりしているのに気を取られて、リカちゃんがいつのまにか俺のすぐ後ろまで来ているのに気づかなかった。

「なんで度々バックの中を除いたりしてるんですか?」


「えっ? いや、なんでもないから!!」

 首だけ180度捻って有り得ない姿勢でリカちゃんに答える俺。その間手でセナをバックに突っ込もうとするんだけど、セナはバックのフチにしがみついて押し込まれまいと物凄い力で抵抗してくる。

 状況考えろよ!!

 そうこうしてる間にもリカちゃんは俺のすぐ隣まで近づいてきてヒョイっと俺の脇をすり抜けるようにして肩越しにバックの中に視線を入れた。駄目だ、見られる!!!!!


「この中に何か……?あれ、これって……」

 

「ああ、うん……」


「ポケットモンスターですよね? お兄さんの部屋に昔から置いてある。確かハクリューとヤドラン」


「そうなんだけど部屋から出る時バックの中に紛れ込んじゃったらしいんだよな」


「そうなんですか、じゃあお兄さんが何度もバックの中を確認してるのは……?」


「ああ、情け無いけど財布の中身を確認してたんだよ、支払いの時に現金が足りませんじゃカッコつかないだろ?クレジットカードあるけど、使えない店もまだあるからさ」


「……そうだったんですか、すみません、色々とお金出してもらっちゃって……」


「気にすんなって、大人が高校生にお金出すのは当たり前だから。それをリカちゃんに負担に思わせる時点で俺が大人失格なんだよ」


「すみません……」

 そう言ってリカちゃんはシュンと気落ちした様子で静かになった。


 あっぶねーー!!間一髪間に合った。

 俺はリカちゃんの顔が俺の左脇をすり抜け視界が肩で遮られる瞬間に抵抗するセナを押すのではなく逆に右手で引っ張り上げ、そのままジャケットの内側のホルスターに突っ込んだ。

 速抜きならぬ速いれ。リカちゃんにセナの存在をバレるわけにはいかない俺の羞恥心が奇跡的な技を可能にせしめたのだ。

「いいって、それより俺ここの近くでキーマカレーとケーキが有名なお店知ってるよ、リカちゃんカレーは嫌い?」


「カレーですか? 大好きです!」

 とにかく、急死に一生、リカちゃんが怯んだこの隙に別のお店を提案し、そっちへと誘導しよう。

 そのお店も早見さんに教えてもらったのがあれだが、とにかく今は彼女の女子力情報を使わせて貰おう。


「じゃあそこ行こうぜ!」

 そうしてなんとかお店を変える事に成功しかけた俺だったのだが、


「あれ? 昨日来てくれたお客さんじゃないですか!」

 階段の上のお店のドアが開き、中から出てきたのは昨日俺に声かけてくれた大学生くらいの店員さん。

 ぐはっ、最悪だ、恥ずかしすぎて走って逃げ出したい。


「や、やぁ……」

 しかし逃げ出すわけもいかず、俺は右手を空に突き立て、ぎこちないながらも挨拶する。


「嬉しい、また来てくれたんですね!!」

 店員さんそう言いながら階段から駆け降りてくる。

 あれ? どうやら本当に喜んでくれてるみたいだ。 昨日のことで店員さんに幻滅されたと思ってたけど気のせいだったのかな?

「もう会えないかと思ってたんですけど……あれ、この人は?」

 そう言いながら階段をかけ降りきったところで店員さんは俺の隣にいるリカちゃんの存在に気づく。

「えっとこの子は俺の妹の友達で」


「どうも、井上リカです!」


「うわ、可愛い子……」

 リカちゃんを見た店員さんはリカちゃんを見て呆気に取られている。女性から見ても初対面だと一歩気後れしちゃうんだな。


「とにかくまた、来て貰えて嬉しいです!どうぞ入ってください!」

 店員さんは気を取り直し、先程の勢いはよりは幾らか落ち着いて俺たちをどうぞどうぞと招いてくれる。

 ここまで来て断るわけにもいかんよな……


「おいセナ、入るぞ?」


「むぅ、わかりました……」


 そうして俺達は二日連続でこのお店meringueへと足を踏み入れた。

 

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