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族・月と太陽の交差点に潜む秘密  作者: ジャポニカダージリン
第2章
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ナビ

 秋葉原に着くと、俺達は電車を降り、電気街口を目指す。

リカちゃんがそっちの方角に目的のお店はあると言ったからだ。目的地のわからない俺は電車を降りた後、RPGの味方キャラのように黙って前を行くリカちゃんの後ろについていく。

「ここからどうやって行けばいいんでしょうか?」

 改札を抜け、秋葉原UDX前の広場に出たところでそれまで黙々と前を進んでいたリカちゃんが突然振り返ってきた。

「えっ? Googleマップで行けばいいんじゃないの?」

「そうでした、私、普段学校と家の行き来しかしないからGoogleマップの事を忘れてました、おっちょこちょいですね」

 そう言ってリカちゃはアニメのキャラクターのように舌を出し、思い出したかのようにGoogleマップを開いてお店の名前を打ち込んでいる。

 あっぶねー、リカちゃん急に振り返るもんだから一瞬心臓が止まりかけたわ。

 けどこう言う時の仕草も可愛いなこの子は。

 俺はリカちゃんがGoogleマップを操作してる間、側からうっとりと慈愛のこもった目で天然な所のある彼女を眺めていると、

「こっちに行けばいいみたいですね」

「よし、じゃあ早く行こうぜ!」

「はい」

 リカちゃんはスマホの画面を開いたままにし、俺は再びリカ勇者の後をついていこうとする。

 その時、俺の袖をぐいぐいと何かが引っ張ってくるのを感じる。

 見ればセナのやつが肩からかけたトートバッグから半身を乗り出して俺のジャケットの袖をひいている。

「なんだよ?」

「駄目じゃないですか、リカさんに前を歩かせちゃ」

「はあ? だってリカちゃんの買い物に俺が付き合ってるんだぜ?」

「はぁ……」

 セナはでかいため息をついた後に、

「あのねぇ、こういう時は男の人がナビ役をかって出るもんなんですよ」

「いやだって、俺が余計なことして間違えるよりしっかりもののリカちゃんがやってくれた方がちゃんと目的地につきそうじゃん」

 変に無理して間違えたくない俺はセナに合理的な理由を述べて反論するのだが、

「いいから!つべこべ言わずにやる!!」

 セナはダダをこねる子を叱りつける母親のような剣幕で一括で俺の論理を打ち砕いてくる。


「あの、どうかしました?」


「キャッ!」

「あ、ちょーっ!」

 リカちゃんには聞こえないように小声で話していたつもりだったんだけど、俺の挙動に違和感を感じたのかリカちゃんが振り返る。

 またしても急だったもんだから、セナの事もあって慌てふためいた俺は、ステレオタイプの拳法使いがモーション時に出すような声を喉の奥から出してしまう。

しかも爪先立ちでシェーッのポーズをとりながら。

「???」

 しかし、間一髪、リカちゃんが振り返るのに俺より先に気づいたセナはバッグの中に身を隠した後だったので、慌てふためく俺をみてリカちゃんは物珍しい物でもみるかのように目をパチパチ瞬かせている。

 と、とにかく誤魔化さないと。

「あ、そのー、なんだ、今思ったんだけど秋葉原は俺の方が詳しいだろうから店までは俺が扇動するよ」

 俺は何事もなかったかのようにゆっくり姿勢を戻した後、セナに言われた事をリカちゃんに提案する。

「え? そんな、悪いです。私がお兄さんを誘ったんですから……」

 けれどリカちゃんは俺の申し出を固辞する。

「あっ、そう?」

「はい、すぐにつきそうですし、大丈夫ですよ」

 笑顔でそう言ってくれるリカちゃん。

 ほらみろ、リカちゃんいいってさ。

 リカちゃんはセナみたいななんでもレディーファースト思考じゃない出来た子なんだよ。

 それに異性として興味のない男にそんなジェントルマンシップ見せられても女性からしたら嫌なだけじゃないか?

 あーあ、セナのせいで無駄に傷ついたじゃないの。

 俺はリカちゃんの意思を優先し、また、リカちゃんにナビを任せようと二人の会話も終わりかけた時、

「うっっっ」

 俺の傍あたりに昨日感じたの同じとてつもなく鋭い痛みが走り、俺は苦悶に表情を歪ませる。


「ど、どうしたんですか?」

 リカちゃんはそんな俺の変貌に戸惑っているが、今はそんな事気にしていられない。

「クッ、俺に、やらせてくれ、ナビゲートを」

「ナビ? そんな事より、お兄さん苦しそうですけど、大丈夫ですか?」

「いいから!!早くやらせてくれ、俺にナビを!!!!」

 あまりの痛さに俺は目を血走らせながらリカちゃんに訴える。

「は、はい!!」

 するとリカちゃんも俺の剣幕に押されて恐る恐る自分のスマートホンを俺の方に差し出した。結果俺は半端強引にリカちゃんからスマートホンを取り上げる形になってしまう。

 スマートホンを受け取ると同時に脇の痛みも徐々き和らいで行く。

 クッ、セナのやつが俺にナビをやらせるために強硬手段の暴力に訴えてきたんだ。つくづくなんて自分勝手な奴だ。

 セナへ恨み言を吐きたくなるが、リカちゃんの手前そうするわけにもいかず、俺は心配そうに見つめるリカちゃんを横目に平静を装いながら恐る恐る苦手なGoogleマップに目を向けると。

あれ? ここって……

 なんと目的のお店はこの間ホルスターを買ったミリタリーショップレプマートのすぐ近くだった。

 それにあの難くせつけてきたアコギなオジサンの家に行くときにも通った道だ。

 ここならマップなしでいけるよ、俺道覚えてるもん。

「よし、ありがと」

 そう言いながら俺は手に持つスマホを持ち主へと返す。

「え、もういいんですか?」

「うん、もう道わかったから」

「え、あんな一瞬でですか!?」

 リカちゃんは今日いちといった顔で驚いてる。

 失礼な。俺は一瞬ショックを隠しキレず、引き笑いをするのだが、リカちゃんは次に、

「やっぱりお兄さんって頼りになります!!」

 そんな嬉しい事を言ってくれる。

「いや、別に普通だって」

「ううん、私、地図とか苦手なんで、お兄さんみたいな人かっこいいなって」

「そ、そう?」

「はい、なんだか、やっぱり男の人だなって感じで……」

 リカちゃんは節目ガチに、恥ずかしがっているのがわかる。

 こ、これは災い転じて福となるとでもいうのだろうか、それとも塞翁が馬どっちでもいいや、こんな偶然があるとは。。

「はは、社会人になれば普通だぜ?」

「え、そうなんですか?」

「ま、まだ高校生のリカちゃんからしたら驚きかもしれないけどさ、お得意先に行くのに地図見るなんて日常茶飯事だから」

「さすがです」

「まあね、わからない所あればなんでも聞いてよ、連れてってやるからさ」

「うわー、うわー」

 一瞬、バックの中きら溜息のような声が聞こえてきた気がするが、気のせいだろう。

 リカちゃんは俺が強気になっても一つ一つに驚いてくれる。

 き、気持ちいい……打てば響くっていうか、どんどんカッコつけたくなってくる。

「どこか行きたい場所とかない? 防犯店の後、どこでも連れてってあげるよ」

「え、いいですいいです!お兄さんにそんなお手数かけられませんから」

「いやいいって、子供が大人に遠慮するなよ、気にせず甘えなって」

 ピクッ……

 あれ? 一瞬リカちゃんの眉間が揺れたような。帽子で影になっててよくわからなかったけど。

 リカちゃんは笑顔のままだ。

「どこでも、いいんですか?」

「ああ、いいぜ、お台場? やっぱ高校生だと原宿とかかな?」

「じゃあ、ディズニーランド……とか……」


「ああ、ディズニーね、ディズニー、えっ……?」

 ディズニーと口に出して、突然、これまでの調子が嘘のように消え去る。

 ディズニーには明日セナと行く約束が……

 しかしリカちゃんにああ言った手前、それは無理だとも言えない。

 ここで行こうと言ってしまえばこれまでの経験からセナは絶対に怒りくるう。おそらく地獄の説教コース。けれど無理だと言えばリカちゃんの期待を裏切ることになる。

 全門の虎、後門の狼ならぬ全門の天使、後門の竜。

 どっちが天使でどっちが竜かはいうまでもないだろう。

 良心の呵責と恐怖が濁流となって激しく俺に襲いかかる。

「えーっと……」

 口からは同じ言葉にもならない戸惑いの音が漏れるだけで、間延びした時間だけが流れる。

 このまま気まずい時間が流れ続けるかと思われたのだが、思ったよりも一瞬で、リカちゃんの一言でこの気まずい時間は終わりを迎えることとなった。


「なんて、冗談です!」

 

「えっ、冗談?」


「はい。いくらなんでもいきなりすぎですよね。あれ?もしかして本気だと思っちゃいました?」

 リカちゃんは揶揄うような目で俺に言う。お前はどこぞやの高木さんか!!


「じょ、冗談ね、冗談。ま、まあまあかな、冗談にするにはちょっとリアリティが足りないかな、はは」

 どうやらリカちゃんの冗談だったようだ、そりゃそうだよな、いくらなんでも俺なんかと一緒にディズニーって、完全デートじゃんそれ。焦りから解放された俺は冷たい汗を首元に感じながら乾いた笑い声を上げる。

 安堵と共に訪れたテンションの落ち込みを気取られない為にも少し大袈裟に。

 

「じゃあ、ディズニーは置いておいて、私、田町に行ってみたいです」

「田町? なんで?」

「私、お母さんに慶應大学も受験するように言われてて、田町がどんな場所なのか見てみたいなって。駄目ですか?」


「ああ、いいよ、じゃ今日行こっか、田町!」

「はい。ありがとうございます」

 良かったー、田町ならよく行くから上手く紹介出来るよ、俺。 

 いや、ほんとさっきはどうなるかと思ったよ。しかしリカちゃんとディズニーか、一緒に行けるやつは幸せもんだよなほんと。

 まだ存在さえしないが、遠くない未来必ず現れるだろうリカちゃんの彼氏に軽いジェラシーを感じながらも俺はBODY GARD目指してリカちゃんをナビゲートする。

 道の心配をしなくていいからだろうか、二人の会話は何気ないことで盛り上がり、気がつけば目的のお店のすぐそばまでやってきていた。

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