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族・月と太陽の交差点に潜む秘密  作者: ジャポニカダージリン
第1章
31/117

クレーム対応で

いきなり自分の業務外のクレーム対応に向かわされた健太郎、現地にたどり着いてみるとそこに待ち構えていたのはお城の様な巨大な住宅。

それを見て尻込みする健太郎だが。

 改めて見るとデカいな……

秋葉原駅を降りて末広町の方へ10分程歩くと見えてくる、うちの会社が施行中のビルと道路を挟んで正面に待ち構えるのはーー刑務所の壁よりも高そうな灰色一色の重厚な壁が道路沿いに50mくらい続き、前方の交差点の角に合わせて折れ曲がっていて、同じようにして正方形の土地の4辺を囲んでいる要塞のような家。

 灰色のコンクリ打ちっぱなしのその壁の隣に立つと圧力に萎縮して心のなかがシュンと静まり返ってしまう。


「大きいですね……」


「ああ、東京のど真ん中にこんな家っていくらくらいするんだろ……」


「健太郎?急に顔色が悪くなってきたように見えるけど大丈夫かい」


「こんなもん見たら顔色も悪くなるだろ、なんで土地壁をこんなに高くする必要があるんだよ?戦車との戦いでも見据えてんの?」


「戦車はなくとも機動隊の装甲車はあるかもしれないな……」

サーッ

 ハクリューのその一言を聞いて俺の顔面から血の気が引いていく。


「だ、大丈夫ですか、健太郎さん?!顔の色がこの前見た映画のアバターの人達みたいになってますけど……」


「だ、大丈夫だ、その為の作戦もバッチリだ……多分……」

 

「私、不安しかありません……」


「うるさい!いくぞっ!」

 俺はセナの言葉を振り払うように、決意を込め、目の前の巨大なお城の門みたいな入り口のインターホンを鳴らす。

すると、

「……ハイ?」

インターホン越しに低い男性の声が聞こえてきた。

声は怒っているようにも威圧しているようにも聞こえる。

しかしもう後には引かない。

行くぞ……!!


「こ、こんにちは、お忙しいところ申し訳ありません。前町組から来ました田中と申します。本日は弊社のビル施工計画で三木本様にご迷惑をおかけしている件で謝罪させていただきに参りました」

 俺はインターホンの前で腰を90度に曲げ、謝罪の言葉をいの述べる。


ーーとりあえず謝るーー


 俺は今まで散々仕事で迷惑かけて周囲に謝り倒してきた経験から怒っている相手の怒りを和らげるには何が一番効果的かという事を学んだ。


人が怒っている時、皆共通して心から求めるのは安心なんだ。

男女間の些細な喧嘩や金銭トラブル、果ては戦争まで、その根本的な原因は何かを失う『恐怖』という感情に辿り着くだろう。


故に怒っている人にはなんらかの形で安心させてあげる事が大切なんだ。


だから俺は全面的にこちらの非を認める事で相手の意中に沿ってやる。

そして、

「……入れ」

 三木本さんはそう言ってインターホンを切ると、鉄格子のような門の入り口がウィーンとモーター音と共に横にスライドしていき敷地内への道が現れる。

RPGとかの敵城に乗り込む時のイベントみたいだな……


 よし、絶対にミスが許されないこのミッション、三木本さんの怒りをとっとと鎮めて15時までに終わらせる……終わらせたい……それよりちゃんと帰ってこれるのかな……


 俺は玄関口の前までくると、右手には手土産の虎屋の羊羹詰め合わせセットの箱が入った手提げ袋を持ちインターホンを鳴らす。


 インターホンを鳴らしてから数十秒待つと、ガチャリ、玄関の扉が開き、中からは桜の刺繍が満遍なく縫い付けられた派手なスカジャンを羽織った男性が出てくる。

歳は20代中頃くらいかな?オールバックの髪は金髪で目を引くが、人当たりの良さそうな笑顔を浮かべながら、


「あ、どうもどうも〜、今父の仕事が立て込んでで席外せないんで俺が代わりに話聞きますけどいっすかね〜」

あ〜息子さんか……けど考えようによってはラッキーかも。

この人に話を聞いてもらえば謝罪は済ませた事になるし、格好は派手だけどいい人そうだから手短に終わらせられるかも。

うん、ラッキーだよ。


「あ、では私、前町組営業部、お客様特別対応課、田中健太郎と申します!!三木本様、この度はご迷惑をおかけしており誠に申し訳ありません!!」

 出会い頭そうそう俺は謝罪の口上を叩きつけ、再度腰を90度に曲げて賞状を受け取るときのような姿勢で名刺を前に突き出すと、


「あ、そなんすね!で、今日はどうしたんすか?」

 青年は俺の名刺をチラ見するとそのまま右ポケットに突っ込みながら質問してくる。


「はい。弊社の建設工事の音で三木本様の生活を悩ませていると伺っておりまして……」


「ああ、今工事中の?それで!いや〜建設業も大変っすね〜」

青年は少しオーバー気味に驚いた後、そうな風に屈託のない笑顔で労いの言葉をくれる。

いい人だ。


「あの、ほんの心ばかりのものですが、どうかこれを受け取ってください!!」

 そういって俺はすかさず手に持つ虎屋の羊羹詰め合わせセットの箱を袋から取り出し、青年の目に虎屋の文字がしっかり見えるように突き出した。


「え、いいんですか?」

よし、受け取った。まずは第一関門クリアだ。

不必要なモノじゃなければ人に何か貰って嫌な気はしない。

俺はネットを使ってこの虎屋の高級羊羹が謝罪時の定番だという事を調べ、あらかじめ東京駅前のデパ地下で購入していた。

これで忙しくてでられないらしい父親の方も怒りを収めてくれるといいんだけど……


「それでなんですけどもね、騒音の件ですが、私どもも三木本様には多大な心労をおかけしている事と存じております。今も三木本様含め近隣の皆様の負担を減らせるよう何か工夫できないか必死に考えているところでありまして……」

 俺はチラと青年の顔を見るが、青年は変わらずニヤついた笑みを浮かべながらふんふんと合槌を打ちながら話を聞いてくれる。


「今日は今後の対策などを説明させていただきたく、どうかこれをお父様にも読んでいただきたいのですが」

 俺はそう言って、先程現場で確認をとってきた今後使う事になっている今使っているものより高性能な防音シートや低振動工作機械をまとめた書類を取り出して渡そうとすると、


「あ、ちょっと待ってもらえます?」


「はい?」

 突然青年から待ったが入る。


「オヤジの仕事片付いてるかもなんでちょっと見てきてもいいですか?」

 まじか、出来れば書類を渡してとっとと帰りたい…… しかし拒否するわけにもいかないし……俺は一瞬返答に困ると、


「じゃ、ちょっと待っててください!」

 さっさと中に入って行ってしまった。俺の返事も聞かず……

あーやだな……


俺が玄関の前でぽつんと待ち続けてから数分が経った。

やけに時間がかかるな……無理に仕事終わらせなくていいから!

いっその事このまま帰っちゃおっかな。

緊張と不安からそんな事を考え始めていると、玄関の奥から足音が聞こえてきて、ドアが開くと共に、


「あ、オヤジ準備出来たみたいなんでどうぞ入ってください!」

あー、準備出来ちゃったかぁ。

これ入らないといけないやつだ、面倒だなぁ。

しかしこうなっては仕方ない。

やるぞ健太郎、男だろ、逃げるんじゃない。

俺は促されるまま建物の中に入った。


「……アンちゃんも外みたからわかるやろ??お前んとこの工事現場はうちの真隣や、ワシは神経質でなぁ、ちょっと音するだけで眠れんようになってまうねん。そのせいで3ヶ月一睡もできてへんねん、わかるか?」

 嘘だ、3ヶ月も寝てない人間がこんなにピンピンしてるわけないだろ? それに工事はいつも17時迄には完全に終了してる筈なんだ。

 しかしそれを言っても昼間に寝るとか言われたらお終いだ。ここはあくまで冷静に……


「さ、3ヶ月ですか、その大変さ想像も出来ません……お体の方は大丈夫でしょうか?」


「フン、気休めはええねん、さっき今すぐには難しい言うとったな? 後どんぐらいで工事の音完全に消せるんや? まさか工事終わるまでとか言わへんよな?」

 完全に? 無理に決まってるだろ、建設工事だぞ?

 さっきも今すぐには難しいって言ったのに、なんて言えばいいんだ……

 

「三木本様の気苦労を少しでも早く解消するため弊社も全力で対応させていただきたく思っておりますが、建設工事なので完全に音を消すのは難しいかと……」


「少し難しいちゃうやろがワレ!! オオ?!!」

 そういうとオジサンは突然大声で怒鳴りつけてきた。


「キャッ!!」

カツンッ。


「ん、なんじゃい?!」

 今のおじさんの怒鳴りで別の作戦に出ていたセナが驚いて体勢を崩し、その弾みでセナが何かを壁にぶつける音がした。

ヤバい、今の音でおじさんが周囲を気にし出してる。ここは予定より早いがやるしかない!おじさんの注意を完全に自分に引きつけ直す!!


 俺は両手でバンザイのポーズをとり、大声で謝りながら、両膝を地面に落とし、打ち寄せる大波のみたいに両手と上半身でオジサンを仰ぐようにして地面に伏せた。

「本当に申し訳ありません!!!!」


 コンクリートの熱気がジワジワと顔面を焼き付ける。 

熱い……、これは、火傷する……!!

しかし耐えろ、誠心誠意を込めた土下座である。途中熱さでやめれば全てが終わる。ここで耐えてこのオジサマの全意識を俺に引き付けるしかない!


「何しとんねんワレ?」

良し……俺の咄嗟の土下座でセナの方から意識をこちらに向けた。


「はい、土下座で御座います!今までの人生で一番誠意を込めながらの土下座でございます!!」


そう叫び、熱したフライパンのようなアスファルトの熱さに耐えながら誠心誠意謝り続ける。

耐えろ、


「いえ、滅相もございません!!ただただ私達がご迷惑をかけたという良心の呵責が私に土下座をさせるのです」


「なんじゃい、やめぃ!!そんな事してワシに何か得になるわけでもないやろが?!」

 やっぱりそうか、この人、自分の利益になる事要求しようとしてるんだ。このまま無条件で謝り続けると必ず何かふっかけてくる、けどこういう輩は一度ふっかけに応じると味を占めてほとぼりが醒めるとまたなんやかんやふっかけてくるんだ。こういう事が起こるから大人は皆本質的な謝罪を避けたがってしまう。

 けど、舐めるなよ?!俺が頭を下げてんだ、お前の思い通りにはならないぜ??


「勿論で御座います。どうか、どうかこのまま三木本様の声をお聞かせください!!」


「おう、ワレ、ほんまに悪いと思っとるんやんな?!」


「はい、思っております。悪いとしか思っておりません!だからなんなりと三木本様のお話をお聞かせください!!!」

 こいよ、これであんたの本音引っ張り出してやるぜ。


「そうか、なら、ん!」

 そう言ってこのオッサンは右の掌を上に向けて俺の方に突き出してくる。


「えっと、これは……」


「わかるやろがい、お前んとこの会社たくさん持っとるんやろが?!まさか払えませんとは言わさんで?!」


「お……お金ですか……」


「そうじゃ、お前さんらのせいでずっと眠れんくてそのせいでワシャ仕事も手につかず、ワシの会社の業績もドンドン悪化しとるんじゃ!!やでそろそろ起訴起こそうか考えとった所なんじゃ、そうなるとお互いメンドウやろがい?!」


「そ、それは……」

 この金問題、実は重要なポイントがあり、『ちなみにいくら?』など少しでも払う意思を見せると無茶苦茶な額を要求され、それを断るとさっきの謝罪は嘘かとどんどん責められ、最終的に相手が額をいくらか下げてきてこちらが感謝の形を示すというような形に持ってかれるのだ。

 もしそうなればたちまち上への報告案件。この謝罪も俺の会社での立場もお終い。

 だからこれ以上は絶対に首を縦に振ってはならない。勝負をかけるならここだ、セナ、合図を送るから頼むぞ?


「なんじゃ、払えへんのか?!」


「誠に申し訳ありません!!お金だけはどうかご勘弁を!!お金以外、お金以外の事でお願いします〜〜!!」


「なんじゃワレ!!なんでも聞かせえ言うたよな?!」

 今だ、セナ、やれ!!

……シーン……

 アレ!?

 予め俺はセナ達と話し合っていて、もし俺が『〜〜だけはご勘弁』とか、『〜〜以外でお願いします』と言ったらセナが玄関の横から引っ張ってきたホースリールのノズルからバレないように俺にストレートウォーターを噴射する手筈だったんだけど、何も起きない?なんで?気付いてないの?ウソ……

 もう一度だ、とにかくもう一度!


「お金だけはご勘弁を!お金以外の事で、お願いします!!!」

 俺は同じことを繰り返すが……やはり水はこない。


「舐めとんかワレッッ?!!オウムみたいに同じ事繰り返しおって、何でも聞かせろ言うたのお前やんな??なんじゃさっきの謝りは嘘やったんか、ああ?!」


「そ、それは……」

 期待を裏切られたおじさんはますますヒートアップしてしまった。

 クソ、面倒な事になった、このままだと更にめんどい事になるぞ、何をふっかけられるからわかったもんじゃない。相手も引くに引けず起訴だとか言い出しかねん、ここは顔面火傷しようとひたすら謝り続けるしかないのか、無念……

と殆ど諦めかけた時ーーバシャバシャバシャ!!

きた!水!ちょっと遅いけど、


「な、なんじゃ?!」

 オジサンが急に飛んできた水に驚いている。

占めた。ここで一気に巻き返しを図るぞ


「も、申し訳ありません!!お客様が水をかけたくなる気持ちはもっともでございます!!」


「待て!!勝手に後ろからーーおい?なんでこんなところにこれがあるねん!?」

 おじさんの足元にはチョロチョロとまだ水が漏れているノズルが。そしてセナはちゃんとカバンの中に隠れたみたいだ。ヨシ。


「どうか気にしないでください!三木本様をそこまで怒らせてしまったのは私共です。この水もありがたくお受けさせていただきたく思います!!感謝のシャワーでございます!!」

 事実セナの水のおかげで俺の顔面もひんやり。ありがたい、これでヤケドしなくて済むぜ。


「お、そっ、そうか、ならええんやが……ほなら何してくれんのや?」

 よし、安堵でお金から引いたな?一気に攻勢に出てやる!


「しかし私達に出来るのは精神誠意これ以上三木本様にご迷惑をおかけしない様注意して工事を進める事だけでございます、どうかそれでご納得していただきたく思います!!」


「何!?」


「どうかご理解をお願いします!」


「ふ、ふざけるな!!お前じゃ話にならん!上じゃ、上司を呼べ!覚悟しとけよ?!」


「そ、それだけはご勘弁を!!精一杯頑張りますのでどうか、どうかご理解の程をお願いいたします〜!!」


「アホぬかせ、なんじゃこんなもんーー」

そう言っておっちゃんが虎屋の羊羹に手を掛けようとした瞬間ーー


ガンッ!


「あうっ……」


「な、なんじゃ?!」

 ビシャビシャに濡れながら土下座姿勢を崩さなかった俺の頭に何か金属製の固形物が飛んできた、結構な勢いで。


カラカラカラン……


「……これワシが使おとるライターやないかい、なんでこんなところに……」

 俺の頭にあたった後、目の前でカラカラと音を立てて転がる自分のジッポーを見ておじさんは唖然としている。

 ハクリューが指示通り俺の旗色が悪くなった時の行動をとってくれたんだ。何かてきとうにとは言ったけどジッポーはないだろ、かなり痛いぞこれ。

 けど相手は更にたじろいだぞ!責めろ責めろ。オジサンの威勢を罪悪感でへし折ってやれ!!


「私の至らぬ対応にカットなってしまっての事だとは思います。しかし、こうなるとお言葉の通り上司に報告させて頂いた方が宜しいみたいですね」

 ジッポーの当たった箇所をさすりながら、頭を上げ、玄関口でずっと俺を監視し続けている監視カメラにチラと目配せしながらここぞとばかりに語気を強めた。これは立派な暴行罪だぞと言わんばかりに。


「まて……違う、ワシはやっとらん言うとるやろがい!!さっきからなんかおるぞ!!お前、まさか他の誰か忍ばせとるんちゃうんか?!」


「いえ、まさか」

 本当はそうだけど、俺はここで『青木フラッシュ』を使う。要はただ白を切るだけ。しかし完璧に。

 学生時代、実験ミスの責任追及でピンチになると知らぬ存ぜぬで流しきる青木教授に感動し、その後社会人生活で磨き上げてきた俺の必殺スキルである。

 ちなみに、口をぽかーんと空けて本気で馬鹿そうに見せるのがポイントだ。……仕事覚えずこんなのばっか上達してる俺ってほんとどうなんだろ……


「嘘つくなや!!ちょいまっとれ、すぐ見つけ出したるからな」

 そうしておっさんは急いで玄関や廊下を確認するが誰も見つけられない。そりゃそうだ、ハクリューがやってるんだから。


「誰かいましたか……?」

 しかし俺は本気で心配してるフリして声を掛ける。


「なんでや、なんもおらん……」

 リビングまで行っても何も確認する事が出来なかったおじさんは外に出てきて右左、空まで見回し出してるが、目につくのは膝をついてまじまじと見つめている俺だけだ。

 よしよし、焦ってる焦ってる。もはやオジサンは俺の現実歪曲フィールドの中、冷静ではいられまい。


「そうでしたか、では私は一度社に戻らせて頂きます」


「待て!ワシはほんまにやっとらん!!」


「ですが……」


「やっとらんっていっとろーがーー」


ガチャーーン!!!


 オジサンが声を張り上げかけた時、家の廊下の方から何か陶器が割れるような音が響いてきた。

その音を聞いてオジサンはハッと血相を変えて屋内へと走っていくーー


「ワシの大事なツボが!!!なんでや!!!」

 どうやらヤドランが壺を割ったらしい。相手が激昂しかけたら何かで気を散らしてくれって頼んでたんだけど、ちょっとやりすぎじゃないか……

 けど、とにかくラッキーだ。オジサンの注意は完全に壺に移ったぞ!!


「あの〜、どうしましたか?」

 俺は小声で失礼しますと言って宅内に上がり込み、またまた心配したフリして壺の前で膝をついて泣き出しそうなオジサンに近づいていく。


「廊下に飾っとった壺が勝手に割れたんや、なんでじゃ!!」


「え〜!!それは大変じゃないですか!?猫か何か飼ってるゆですか?危ないので破片拾うの手伝いましょうか〜?」

 俺は顔の横で両手のひらをパーにして驚いたポーズを取って見せた後、ずけずけと近づいていくと、


「ええ、ええから今日は帰ってくれ!!頼む」


「いえ、そう言われましてもまだ上司への報告の件が〜」


「……もうええ、ワシが悪かった、もうなんも言わんで帰ってくれ!!」


「では、これまで通り工事を進めさせていただいても構わないという事でよろしいでしょうか?」


「そういっとるだろ?!早く帰ってくれ!!」

 ふぅ、立て続けのパニックで俺どころでなくなったオジサンはようやく折れてくれたみたいだそ。


「ありがとうございます。では帰らせて頂きます。心中お察しいたします。どうか羊羹だけでもお召し上がりください。それでは失礼します」


 俺はそう言っで玄関をでて、横でこけているカバンを手に取り、中から俺を見上げているセナ・ハクリュー・ヤドランの3人を確認して三木本宅を後にする。

 敷地の外に出て少し歩いた後、一応録画しておいたボイスレコーダーの録音ボタンを停止して、「もういいぞ」と言うと。


「もー、こんな事は二度とやりませんよ?!」

 セナがカバンから首を出して喚いてくる。

 ハクリューとヤドランは中でヘトヘトになってぐったりしている。


「ああ、ほんとに助かった。あんなに上手くいくとは……けどほら、時間は14時ジャスト、お前達の活躍のおかげで悟空さん達のところに向かえるぞ!」


「む〜、いいですか健太郎さん?ピッコロさん達の事があるから今回は無茶しましたけど、そもそも三木本さんより悪いことしてるのは健太郎さんの方なんですからね?」


「ゆすりをかける様なやからに正攻法は通じん。誰も傷ついてないんだからいいじゃないか」

 壺は、かわいそうだったけど……


「私達の良心が傷つきました」


「そこんとこは、ほんとに悪いと思ってる……」


「まぁまぁ、セナ、今回は健太郎の言い分にも一理あると思うよ。あれは健太郎にしては妙案だったと思う。もし強硬策に出なければどれだけ長引いたかわからなかったしそもそもあの人は別に本気で怒っているわけではなかったんだ」


「むぅー、ハクリューさんまで……」

 そういやコイツの投げたジッポーかなり痛かったぞ、まだじんじんするし。

 腹は立つけど今回はハクリューのフォローのおかげでセナは静かになった。それにキレものハクリューに認められたみたいでちょっと嬉しいな。


「それはそうと、なんで一度目の合図の時に水が飛んでくるの遅れたんだ??」


「それはだね……ヤドランが蛇口をひねる役割を忘れてしまっていたんだ。僕が気づいた時には健太郎がその、土下座の姿勢に入ってしまったところでそこから蛇口まで向かうのに時間がかかってしまったんだ……」


 あぶな!!こいつ、そんな重要な事忘れてたのか……

 俺は訝しげにヤドランの顔をみると、

「だお??」

 ヤドランはボケーっとした顔で俺の方見てる。

 壺の件といいこいつにはあんま難しいお願いとかは出来ないな……しかしどうも他人事のようには思えず憎めない。


「それはそうと、今から向かうぞ悟空さん達のところへ!」


「ハイ。一難去ってまた一難、ですね?」


「よく知ってるなセナ。クレームの次はクレーンだ。お前ら、振り落とされずにちゃんとついてこいよ」


「ハイ!!」


「なんだか健太郎がかっこいいお!」


「へ、今頃気づいたのかよーー」


「ちょっとまってくれ!もし今のがクレーンゲームにかけられているなら僕達を振り落とさない様に気をつけるのは寧ろ健太郎の方なんじゃないのかな?さっきの件もひどく振り回されて僕らはヘトヘトになったわけで」


 っっーーなんなのこいつ?俺に何かクレーム入れないと気が済まないの?いるよなこういう細かいところで揚げ足取って人のペース乱す奴……


「まあ、とにかく急ごう……」


 先程までの疲労はどこへやら。オレ達一同は件のゲームセンターへ急いで向かった。

今回は初めて健太郎達にトラブルシューティングをさせてみようと思いました。

次のゲームセンター編が第一部最大のトラブルなんですが、上手く書ける自信はありません……

どうか暖かい目で健太郎達を見守ってやってください。

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