デリカシーって何?
思わぬショッキングな事を聞いてしまった健太郎、コイツはヤバイぞ!
「うーん、デリカシー、ないよなぁやっぱり……」
「ない、そして、この問題で僕が君にどうにか出来る事はない……というのも、これは言葉で言っても決して伝える事の出来ない問題なのだ」
「え?セナもそんな事言ってたんだけど……なんで?教えてくれよ……」
「そうだな、例えば、君は心臓の動かし方を人に言葉で説明する事が出来るかい?」
「出来ない、かな……」
そりゃそうだ、心臓なんて勝手に動いてんだもん。
だったら意識的に動かした事のないものの動かし方なんて説明出来ないよな。
「つまり、そういう事なんだ。君の場合は心の問題なんだけど、その心ってのは心臓と同じく意識でどうこうなるものじゃないんだよ」
ガーン……それって修復不可能って事じゃないか。
そういやセナもそんな事言ってたような……
人の心がわかってないとか……
つまり、心房細動を起こした心臓のように、俺の心は正しく機能していない、そういう事なのか……?
いや物質である心臓ならアブレーションで焼切っちまえばいい。けど形のない心なら……
俺の心の中にくらい不安がドッと押し寄せてくる。
「お、俺はこれまで自分が普通だと思っていたんだが、違うって事なのか……?」
「普通な人間なんかこの世にいないさ」
「でもお前は俺の心に問題があるって……」
「それに関しては謝るよ。問題があると言えばある。ないと言えばない、そう言った方が正しかったよ」
そう言ってペコリとお辞儀しながら謝ってくるハクリュー。
なんなんだよ……
俺はハクリューのどっちつかずな返答に少しイラつきを覚える。
「どっちなんだよ?問題があるならどこがどう言った具合にあるのか具体的に教えてくれ!変えられなくても納得する事は出来るだろ?それだけでも全然違うじゃないか?」
「うーん、そうだな。僕はこう言った問題を言葉で人に突きつけるのはあんまり良くないと思っているんだけど、そこまで言われれば仕方ない、一つだけ忠告しよう」
「なんだなんだ?」
俺は不安でゴクリと唾を飲む。
「君は、君の凝り固まった考えを捨てろ。僕はホルスターの話の一件で、君には誰にも持ち得ないほどの進化の可能性を感じた。ハッキリ言って少し嫉妬するくらいにね……」
っと、少し悔しそうにうなだれて話す進化先種族値600の勝ち組ハクリュー。
嘘だろ?こんな理知的でもし人間だったなら女がほっとかなさそうなくらいカッコいいハクリューが俺に嫉妬だと……?
俺はもしかしてミューツーなのか……?
しかし考えてみれば、
ふーむ、確かに、さっきはワイルドと言えばワイルドな振る舞いを出来ていたのかもしれない。
あの後セナの俺を見る目も大きく変わった気がする。
「つまり、俺にはワイルド系の、才能がある。そういう事なのか……?」
「ワイルド?はっ笑わせるな。もっと凄いものだ。地球の女達は一体何をやっているんだ……いや、そんな君だからこそセナの声が……あぁ、これは男として嫉妬せずにはいられないぞ、困った困った……」
っとハクリューはいつもの平静さを失いくねくね蛇みたいに便座の下で悶え苦しんでいる。
気持ち悪いなコイツ……
俺はそう思った。心の底から。
すると突然ハクリューがバッと起き上がり。
「つまり、そういう事なんだが、しかし今の君にはこれを言葉にしても決していい結果になり得ない、むしろ自滅を招くだろう。だから、僕の話はここまでなんだ」
そう言って強引に話を打ち切ろうとしてくるハクリュー。
ちょっと待て待て、全く持って話が見えん。
ワイルド系より凄いもの……?それってジャニーズ系……?
まさか俺が……
急に鏡で自分の顔を確認したくなる俺だが、あいにくここには自分の顔をグニャリと歪めて写す真鍮のドアノブしか見当たらない。
うん、まぁジャニーズ系はないな……ないない。
「とにかく、話はこれまでだ。とにかく今はセナに謝りに行こう。許してはくれないかもしれないが、僕も仲介役を受け持つよ」
「おお、ありがとう!意外に情けない姿を見せるお前と意外に凄いらしい俺、これで二人は臭い仲ってな!トイレだけにな!」
「……君のギャグセンスは詰まった便器並に壊滅的だが、うん、まぁいいだろう」
「嘘だろ……」
ハクリューがそう辛辣な言葉を放った後、会話もここらでお開きって雰囲気になったので、俺とハクリューはトイレを出た。




