非常口階段
「なんだよ条件って……」
「そうですね、ここだと説明しづらいんで、どこか人気のないところに行けませんか?」
「人気のないところってどこかあるか……?」
「うーん、あそことか!」
っとセナが指刺したのは、店外のエレベーターホールの天井のすみっこにぶら下がっているEXITと書かれた緑の誘導灯の下に備えている無機質な扉。
非常口階段か。
なんかやだな……
「いいじゃんここで、それが無理ならトイレとかじゃダメなのか?」
「絶対嫌です!行ってくれないなら私はホルスターには入りません」
っとバッグの中のセナは腕組みして目を閉じ、テコでも動かない様子。
これって犯罪になるんじゃないの?
けど、このままホルスターに入ってくれなきゃ困るし……
まぁ、不正入館ってわけではないから大丈夫かな……?
と、俺はそう自分を納得させ、トボトボと重い足取りで店を出る。
非常口の鍵は指でつまんで回すサムターン式のもので、普通は透明のカバーがかかって非常時以外は開けられないようになっているものなのだが、以前誰かが取り外したらしく、鍵は剥き出しの状態になっていた。
修理するのにお金掛かるからそのままにしてるんだな、
防犯大丈夫かよ……
まぁそのおかげで店内には簡単に戻って来れそうだから助かるっちゃあ助かるんだけど。
「……で、なんだよ条件って?」
非常口を出て、扉を閉めたところでもう一つの条件とやらに気乗りのしない俺はぶっきらぼうにセナに訪ねると、
「その前に、はい……」
っと鞄の中から小包を取り出してきた。
「あれ?これって……」
「はい、先程健太郎さんに買ってもらったもう一つのコロンです」
「えっ、なんで?これお前のじゃないの?」
「いえ、元々健太郎さんに渡したくて買って貰ったんです。自分のお金じゃないので気が引けますが、お買い物に付き合ってくれたお礼にと思って……」
そう言って少し照れながらプレゼント用の小包に入ったコロンを俺の前に突き出してくる。
ああそれで包みを別々にしたんだ。
しかしそれにしても……
「お前の香水とは随分値段に格差があるな?」
「ッ!??そ、それは……」
自分の香水が3万円で俺のはその6分の1。
あ〜やになっちゃうよ、こういうの。自分の頑張りが低く見積もられてるみたいでさ。
それに笑いになると思って言ったのに黙り込んじゃうし。
やっぱノリが違うよなコイツとは。
そこは『いらないならあげない!!』っとかだろ?
そうやって互いの気持ちのバランスを整えてくもんだろ?
そう思いながら俺はセナから包みをヒョイと取り上げ、
「まぁ、いいよ、ありがとな。でもう一つの条件って……?」と本題を促すと、
「これを毎日使ってください!脇など汗をかき易い場所に使っちゃダメですよ?それと衣服の内側は常に清潔に風通しよく保つ事!これが守れないなら私はホルスターには入りません守れますか?」
っと若干不機嫌になりながら念を押してくる。条件をさらに増やしながら。
「えぇ、めんどくさいな……」
「じゃあこの話はなかったという事で」
「わかったわかった!ちゃんと守る!」
「絶対ですよ?ならこの話はこれでおしまい」
そう言ってセナはパチンと両手を合わせる。
う〜む、あれこれ言ってやりたい事はあるが、言えば怒りそうだし素直に従うしかないのか。
女ってずるいよな、自分が都合悪くなると怒って誤魔化すんだから。そりゃソクラテスでも頭を悩ましますわ。
「で、買って欲しいものは決まってるのか?」
「あ、それはですね〜」
問題を一度に片付けたい俺が、セナに最初に言った条件を聞くと、どうやらセナの中ではもう欲しいものが決まっているらしく、即座に笑顔を取り戻して答えようとする。
怖いなぁ……
「まて、あくまで現実的に可能なものだぞ、現実的に?」
「はい!大丈夫ですよ!私の欲しいものは……」




