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族・月と太陽の交差点に潜む秘密  作者: ジャポニカダージリン
第1章
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セナと話して

「コホン、まず初めに……」

と軽く咳を払った目の前のフィギュアは、片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、両手でピンクのプリーツスカートの裾を軽く持ち上げて


「始めまして、私の名前はセナ・フォン・グローリアと申します。貴方にこの名を伝えられることを光栄に思います」


と、優雅なカーテシー挨拶をかましてくる。


「あっ……」


そのポーズの決まり具合があまりに見事だったのでつい見惚れかけ、蚊のような吐息を漏らしてしまう俺だが、

ここで舐められちゃいかん!!

幻聴に心を持ってかれたら最後だと気を持ち直し、


「あぁ。そなんだ、かっこいいねその名前、今考えたの?」

と強気で返答すると、


「は、なっっ?!」


っとスカートを摘んだまま、一瞬驚愕の表情を浮かべて前のめりになるがすぐに姿勢をただし、


「そもそも、何故今私があなたとこうして言葉を交えなければならないかというところから始めますね」

と、俺の質問を無視して強引に自分の話に持っていく。

何?俺と話すのって義務的ななんかなの?

それに妙に高圧的。

いるよなこうやって無条件に会話でマウントとってくる人。

まぁ、まだ会話は始まったばかり、ここは穏便に。

抑えきれなくなれば救急車だ。


「わかった、聞かせてもらうよ」


「ありがとうございます。では、まず始めに。私は健太郎さんとこうしてお話する事が出来ていますね?けどそれは、他の誰でもなく、健太郎さんだけが私の『声』を受け取れる人だからということをお伝えします」


「声??」


「はい。『声』、別の言い方をすれば『震え』場合によっては『魂』という人もいるかもしれません。」


「へー、魂」


「はい」


……ちょっとまてまて!!フィギュアが喋りかけてきてるだけでも怖いのにさらにこういうソウルとかスピリッツとかオカルトチックな話をまじまじと語ってこられるともう恐怖マシマシチョモランマ。

関わらないのが人生を上手く渡り歩いていくコツだ。

そう思う俺ではあるが、人間の弱点は怖い事から目を背けることだって死んだじいちゃんが生前よく言ってたんだよな。

だから、恐怖そのものであるコイツから目を背けてはいけないのかもしれないと、考えを改め直して、

「それで何がおっしゃりたいのでしょうか……?」


そう恐る恐る訪ねると、


「そうですね、単刀直入に、申します……スゥーー」

このフィギュアはヨガの達人のように息を深く吸いだしたと思えば、急に口調を変え、腰に両手を据えて仁王立しながら、


「アナタ。私に協力しなさい!!」


こう命令してきた。

何!?俺の妄想のくせに生意気な?!断固拒否してやろうかとも思ったけど、


……良くみると、目の前のフィギュアは胸を前に突き出しながらも、微かに体を震わせている。

……不安?

何故そんなふうに震えているのかはわからないが、その必死さを見るとなんだか真剣に向き合ってやらないといけないような気がしてきて、


「協力って何を?」

俺はついそう答えてしまう。すると目の前のフィギュアは、


「気づかせてほしいの、皆が見えなくなってしまったこの世界の声を、音を。あなたにしか頼めない……」と、すがるようにお願いしてきた。


このセナとやらの言っている事は相変わらず意味不明。けれど、言外にも必死に何かを訴えようとしているセナの眼差しは、俺の心に奥底に眠る何かにパキンとつきささった。


幻覚でもこんな顔をされたら断れない、断りたくない。

だから、

「なんなんだよ、まあ、出来ることならやってやるから具体的には何すりゃいいんだよ」


とつい安請け合いしてしまうと……

「?!ホントですか……?!」

と、泣きだしそうな顔で尋ねてくる。

うっ、これはますます断りづらくなってきたな……


「……ああ」

俺は躊躇いながらもそう返すと


「……では、健太郎さん、今から私とキスをしてください……」


……はい??

ちょっとまってーちょっとまってーオネーさん?!いろんな事がぶっとびすぎじゃありませんかね?



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