路上にて
セナの地獄のような説教は終わった。しかし健太郎とセナの問題は何一つ解決していないーー
万華鏡写輪眼『月読』をかけられたカカシのように無抵抗な状態で刃のような言葉を浴びせられ続けた俺はーーラーメン二郎に来る前よりも元気を失い、虚な表情でその場に立ち尽くしている。
(もうこの子と一緒にいるの嫌だな……この契約ってクーリングオフ制度ないのかな……)
セナの方は。しこたま非難中傷を浴びせた後、最後は「は〜あ、どっかの馬鹿のせいで疲れてきたからここらへんで許してあげる、あっ香水!!」とさっき自分で投げ飛ばした香水を探しに行ってウンショウンショと大事そうに抱えて戻ってきてる(一応まだ大事ではあるらしい……)ーーどうやら機嫌は治ってるように見えるけどーー
「次はどこに向かうんですか健太郎さん?」
ホッ、表セナの人格に戻っている……どっちが表でどっちが裏なのか俺にはわからないが。
「そうだな……その前にもう一度聞くけど、もし俺とセナが離れすぎたらどうなるんだ?」
「……えっ、どうしてですか?」
「どうしてもなにもあるかよ、首が爆発しないまでも意識がなくなるとかそういうのが起こったらまずいだろ」
「ああ!それなら大丈夫。健太郎さんがどうにかなってしまう事はないですけど……」
「けど?」
「もっと酷い事が起こちゃいますよ〜?」
と、稲川淳二みたいなからかうような口調で俺の恐怖心を煽ってくる。
き、気になるけど聞くのが怖い……
「……もっと酷い事って……どんな!?」
しかしここで聞かなければ心にモヤモヤが残ってしまうので、俺は意を決して聞くことにしたのだが、
「うーん……それはまだ言えません」
セナはそう返してくる。
なんだよそれ……
しかし言えませんときたか。つまり言いたくないって事か。
しつこく食い下がれば聞き出すことが出来るのかも知れないが、あまり追い詰めて怒らすのはまずい。
俺は先程のマジギレモードのセナを思い出して身震いする。
……怖いなぁ、首が吹き飛ぶ以上に酷い事ってなんだろ、俺の命の危険はないらしいけど……
まぁ、今は引いとくか。
こいつが機嫌がいい時にでもまた聞いてみよ、
「とりあえず何か案あるか?」
「何のですか?」
「俺とお前が離れすぎない為のだよ」
「……大丈夫ですよ!!健太郎さんが私のことを忘れないように気をつけてください」
「そうしたいのはやまやまだけど、俺は元来忘れっぽい性格でな……そのせいで会社でもあんなに立場が低いんだよ」
「そうなんですか……あ!!でしたら私がいつも健太郎さんの肩に乗るって言うのは?」
セナは妙案を思いついたような顔で言ってきてるけど(頭大丈夫かいなこいつ)
「却下。ただでさえお前を連れてるのを見られれば俺の地位が危ういのに、肩にフィギュア乗せてキーボード打ってる姿なんて見られたら会社に完全に居場所がなくなっちまう。ご近所様含めてな」
「むぅ〜……健太郎さんは何かいい方法思い当たりますか?」
「そうだな……」
困ったな、何も思い浮かびそうにない。なんとかセナを置き忘れずに済む方法はないものかーー俺は「う〜む」と顔に手を当て考えながら、目の前を通り過ぎていった女性の方をチラと見ると、営業の人なんだろうか、炎天下の中上着を腕に掛けながらカツカツと歩いていてく。
女性のワイシャツはジンワリと汗で濡れ、背中にブラの線がくっきりと浮き出ている。
(うーむ、ブラジャーか、素晴らしい……ブラ、ブラ……ブラッ?!これだ……!!)
「おいセナ、もう一度秋葉原へ行くぞ!!」
「何かいい方法を思いついたんですね?!」
「ああ、とびっきりにクールでナイスなアイデアをな」
そう言って俺はセナをトートバックにしまうと、行きしなに通った道をそのまま戻り、秋葉原を目指した。




