そうなのか?
「お前さぁ、なんなのほんと、仕事の舐めてんの?いい加減学生気分卒業しろよな?マジで?」
「え、あ、す、すみません……」
このやりとり、一体何度目だろう……
仕事を定時で終え、斉藤さんと帰り道にある居酒屋に入り、俺がリカちゃんとの一件を赤裸々に告白してから、斉藤さんの俺の想いへの批評、批判の、説教。
うんざりしてくる。。
そうなのか?そんなにおかしいことなのか?想いを馳せる女の子について本気で悩むことって。
しかし斉藤さんの口ぶりは一貫してこうだ。
女より仕事だろうが。
恋愛でゴタゴタするのは学生で卒業しとけ。
けど俺にはわからない。こんなに胸中を苦しめるリカちゃんとのやりとりが卒業なんて一言で片付けていいものなのか。俺とリカちゃんの関係は20年近くになる。けど仕事との付き合いは10年そこら。いいや、何百年勤めようとそれよりもずっと大事な想いをリカちゃんには抱き続けている。それが社会的おかしいっていうなら社会の価値ってなんなんだよ……
それを何度も斉藤さんに説明しようとするが、斉藤さんはゴタゴタ抜かすなの一点張り。
分かり合えない……この人なら俺の胸の内を察してくれると思ったのに……
俺は怒り混じりの斉藤さんの仕事論をはぁ、はぁ……
と聞き続けること小一時間、所詮、俺の想いなんて誰もわかってくれないんだな。
そんな感じでただただ時間が過ぎるのを待ち続けていると。
「健太郎、引いたらダメダオ!」
セナでもハクリューでもない、いつもは我関せずのヤドランが、いつのまにか俺の胸ポケットから顔を覗かせて俺に話しかけてきた。斉藤さんにバレないように。
引いたらダメって。何がだよ……
そう思う俺であってが、ふと思う。
『俺は斉藤さんに想いの全てを出し尽くしたか?今の俺の想いを……?』
そう考え、酒によってくだをまく斉藤さんを俺はみすえる。
「あの、ちょっといいですか?」
「あっ?なんだよ?」
「斉藤さんが仕事を思う気持ちはわかります。俺も一緒です。けどだからって恋ってそんなに馬鹿げた事でしょうか?」
「はっ?何言ってんの?お前、俺達がやってるのは仕事だぞ?」
「わ、わかります。けど仕事って恋愛より大事な事なんですか?」
「はっ?」
斉藤さんはマジで何言ってんのって感じの困惑顔を見せる。俺もそれを見て一瞬自分が何を言おうとしてるのかわからなくなる……けど!!
「人を好きになる。これより大事な事ってこの世にあるんですかね?これをくだらないって言ったらこの世の全てくだらないことになりませんか?僕らってそうやって産まれてくるわけじゃないですか」
「じゃあお前、どうやって食べていくんだよ、生きられなければ人を好きになる事も出来ないわけだけど?」
「いや、だから、仕事はあくまで生きる手段であって……」
「は?仕事まともに出来てないお前がそれをいうのか?」
「それはそうすけど……」
「二人とも、考えすぎダオ!」
突然、ヤドランが俺と斉藤さんの間に割って入ってくる。うそ、ヤドラン、それはいかんて……
そう思うが馬鹿なヤドランは止まらない。
「考えちゃダメダオ。二人とも間違った事言ってないオ。みんなよりよく生きたい。ただそれだけなんだオ」
「え、な、なんで、ぬいぐるみが喋ってんだ……?え、ヤドラン……?」
生きているぬいぐるみを見るのが初めてらしい斉藤さんは口を動かして喋るヤドランを見て自分も口をパクパクさせている。




