LINE
翌朝、日曜日の休日にも関わらず俺は早朝に目を覚ます。
何故か、それはリカちゃんからの返信が気になるからである。
どうせないんだろうな……そう思いながらも枕元のスマホに手を伸ばすと…
(ある、LINEに一件メッセージが届いてる!)
俺は直感的にこれがリカちゃんからのものだとさとる。そしてLINEアプリを開いてみると……
やはりリカちゃんからだ!!
俺は早朝の眠気も忘れ、そのリカちゃんからのLINEメッセージを恐る恐る開いてみる、するとそこには……
『返信遅れてごめんなさい、あの後リコの買い物に付き合あうのに忙しくてLINE見れていませんでした!』
『おかげで楽しい買い物が出来ました!』
と立て続けに2件連続で返信が来ていた。
送られてきた時間をみると昨夜のpm11時、俺が眠りについてすぐ後の時間だ。
くそ、なんで俺は昨夜あんなに早く寝てしまったんだ、すぐ返せてたらリカちゃんの期待に報いられたのに……
そう後悔しながらもいてもたってもいられない俺はすぐに返信の文面を考える。
そしてあれこれ考えた末
『楽しい買い物が出来たなら良かった』
そう送ったあと、何か次に繋がる話題が欲しいので、
『リカちゃんは何か買ったの?』
そう疑問文を送ったのが午前7時、そしてそのLINEアプリを眺めている現在の時刻が13時。
遅くない?ねぇ、返信遅くない!?
俺は目覚めてからこれまで極力気にしないようにしながらも心のそこでリカちゃんからの返信を部屋でまちながらあれこれ6時間が過ぎてしまった。
高校生の女の子って言ったって流石に起きててもおかしくないよね?そして高校生の女の子が目覚めてからスマホのLINEを確認しないなんて事ありえる?多分あり得ないよね?
俺はそう思いながらも、いやまてまて、リカちゃんに限って『未読』無視なんて事はありえない。
あれは人ならざる精神のものが人にかます悪魔の如き所業、天使であるリカちゃんがまさか未読無視なんて……つまり、そこから導かれるそれは彼女がスマホを見ていないから、それは何故か?
きっとまだ寝てるからに違いない、
と三段論法的に解釈を自身に言い聞かせ自分の心の平穏を得ようと試みていると、
「ねぇセナちゃん、何してんの〜?」
と先ほど目覚めたらしい優子がいつものようにノックせずに部屋に入ってきた。優子がそうだからやっぱりリカちゃんもまだ寝てるのかもだ。
「あ、ゆうこさん、こんにちは!」
先ほどから部屋のすみで暇そうにストレッチをしていたセナが扉を開けて立っている優子に返事をする。
「こんちは、って言っても起きたばかりだけどね」
テヘヘと照れながら笑いながら返す優子は非常に女の子っぽい感じで新鮮だ。
おい、俺にはそんな反応見せた事ないぞ?
俺にはいつもフンっと鼻でしか返事しないくせに……
「クスっ、もうお昼ですよ、たくさん眠れたんですね!」
そうセナが返すと、
「もう寝すぎだよ、せっかくの日曜なのに半日過ぎちゃったよ〜」
「わかりますわかります!休日ってついつい寝すぎて1日が終わったちゃうんですよね!!」
「そうそう!あーでも寝てる時が幸せだからな〜」
「わかります〜、私こないだ寝過ぎて首寝違えちゃって、1日痛くてずっと横向いてたんですよ」
「うそ、ウケル!ってかセナちゃんでも寝違えたりするんだ!」
「そうなんです、走れば筋肉痛にもなるんですよ!」
へ、へぇ、そうなんだ……ってかセナ、お前寝違えた事とかあったっけ……?
セナが話してないだけかもしれんが、こいつが寝違えた日の記憶を持ち合わせていない俺がそう聞こうとすると、
「それはそうと!どうしたんですか、優子さん?」
とセナは食い気味に俺の発話を阻止して優子に話しかける。
ん?今なんか無理やり俺の事封じ込めたような……
まあ気のせいだろう。いくらセナでもそんな非人道的な事はしないだろう。
そう思いながらぼーっと二人の会話を眺める事に徹するよう俺が決めると、
「いや、別にようって事はないんだけどさ〜セナちゃん元気かなって!もしかしたら夢だったんじゃないかと思ってさ!」
どうやら目を覚ました優子はセナの存在が夢ではなかったのかと気になり確かめにきたらしい。
安心しろ優子、これは夢じゃない。夢なら俺が覚めて欲しいくらいだからな。
「はい!夢じゃないですよ!夢なわけないじゃないですか、健太郎さんといつも一緒にいなきゃ行けない夢なんて、夢ならもっと素敵な夢がみたいです!」
そう満面の笑みを浮かべながら答えるセナ。
マジかよこいつ、俺と一緒にいたいってせがんできたのお前だろ?なのに何人の事罰ゲームみたいな感じで言ってんの?俺の初キッスまで奪っておいて正気の発言とはおもえん。
流石の俺もセナの言葉にキレそうになり、言い返してやろうとすると、
横顔のまま目も合わさずセナがコクンと頷き、それを見て俺は再び黙り込んでしまう。
なんだろう今の、なんでか理由はわからないが優子にバレないようにした、ように見えたセナの動作で俺はそれ以上何も言えなくなってしまう。
そしてセナと優子はひとしきり笑い合った後、優子は、
「あーやっぱセナちゃん楽しい……けどそろそろ行くね!」
と優子の方から会話のお開きを提案してきた。
「あら、今からどこかへ行かれるのですか?」
セナがそう問い返すと、
「うん、今からリカとカラオケに行くんだよ〜?」
と優子があっけらかんと答えるわけであるが、ん?ちょっと待て、リカちゃんと今からカラオケ……?
俺は思わず、
「え、何、今からリカちゃんと行くの?」
そう尋ねる。すると優子は、
「そうだけど、あ、兄貴は来るなよ?リカが嫌がるから。ほんとはセナちゃんとも一緒に行きたいんだけど、セナちゃんはアニキから離れられないんだよね……」
「はい……」
うなだれ残念そうに答えるセナ。
ムカムカ、なんでそこそんなに残念そうなんだよ、嫌なら行けよ、あ、セナが離れると俺の命が危ないのか
……
「ごめんセナちゃん、許して、私、アニキと一緒にカラオケだけはほんと行きたくないの、セナちゃんとは絶対絶対一緒にカラオケ行きたいんだけど!!」
と両手を合わせて本当に申し訳なさそうにセナに謝る優子。
俺って一体なんなんでしょう。存在していては行けない生き物なのかな。
そんな人間ってこの世にいるんだな……
俺が不貞腐れて変わらず地面を眺めていると、
「今度また一緒に行きましょうね」
とセナが言った。
おいおまえ、話聞いてたか?優子は俺とはカラオケに行きたくないって言ってるのに何を言ってるんだ?そう思う俺であったが、
「うん……ごめんねほんと、また今度!」
と優子はまんざらでもなさそうな感じにセナに返す。
なんでだ?優子、お前、ほんとに馬鹿なんだな自分のいった事忘れちゃったんだな……
そう思うが言葉にはせず、優子を哀れみの目で見つめていると、
「じゃ、じゃあ行くから、兄貴も日曜だからってダラダラすんなよ?」
と先ほどまだ寝ていた妹が上から目線で言い放ち、部屋を後にした。
はーいいなぁ。
階段を駆け降りていく優子の足跡を聴きながら俺は思う。
リカちゃんとカラオケか、どんな美しい歌声なんだろうなリカちゃんの歌は、きっとものすごく可愛い声で歌うに違いないぞ……そんな事を考えている最中ふと思う、いや待てよ?今からって事はリカちゃんとっくに目をさましてるじゃん、え、じゃあ俺のLINEの返信は……?
俺は優子とセナの会話の端緒から、未だに既読がつかない俺の返事は未読無視なのであるという事を悟るのであった。




