布団
なるほどなぁ、俺とセナ、その他諸々の女達、なんで俺が嫌われるのかハクリューのおかげでちょっとわかった気がするぞ。
ハクリューの助言のおかげで気が楽になった俺はベットに横になり、鼻歌を歌いながらスマホでyoutubeを眺めてると……
「帰りました〜」
セナのために空けておいたドアの隙間からセナのやつがそう言いながら帰ってきた。
「お〜おかえり、ちゃんとドア閉めろよ?」
俺がそういうとセナはドア下の隙間に両手を差し込み軽いベニアいたで出来たドアをよいしょっと言いながらちゃんとラッチがカチャリというまでドアを引き入れる。
「あー楽しかったです、優子さんとの会話!!」
どうやら優子との会話は非常に盛り上がったらしく、ドアを閉めたあとセナが嬉々として俺に話しかけてきた。
けど俺は自分でも不思議に思うのだがセナがこういう感じにハイテンションになると何故だか素直に喜べないので「あ、そう……よかったな」
とだけ返す。
普段はそれでセナの説教が始まるのだが、今回は本当に機嫌がいいようで、俺の愛想のない返事に対してセナは、
「聞いてくださいよ健太郎さん!!優子さん、凄く楽しいんですよ!!優子さんってすごいですね!TikTokって知ってます?ねえねぇ!?」
っと興奮気味に俺に話しかけてくる。
うわ、なんか違和感スゲェ、なんでこいつこんなに上機嫌なんだと思う俺であるが、セナの気分を害するのも悪い気がするので、
「あ、あぁ、最近流行ってるよな……」
と返すと、
「そうなんです、優子さん、私にTikTokの踊りを私に教えてくれて一緒に踊ってくれて、もうすごく楽しいんです!!」
「へ、へぇ〜…」
「もう、ほんとに健太郎さんの妹なんですか?話してても何気ない事で超盛り上がっちゃって、最後なんて私達ずっと笑い続けてたんですよ?スマホの録画がされてないだけで!?」
フガフガブヒブヒとセナが鼻息を荒くして話しかけてくる。
俺はなんというかこの手の温度差の激しい人に同調するのが苦手で、極力嫌われないようにそうか、とか、あー。わかるわ、とかなんとか無理しながらセナの温度を極力保つ事に努めるのだが、だんだんと胸の中に息苦しさを感じ始めてしまう。
爪先立ちと一緒で無理はしんどいものなのである。
そして、
「健太郎さんはTikTokとか見てますか!?」
とセナがキラキラした目で見つめてきた時についに苦しさの限界が俺の脳に訪れ、俺は深海から這い上がってきて息継ぎを求めるクジラのように、
「あのなぁ、あんなものは30超えた俺には理解できん。浮かれた10代の遊び場だろ?」
と日頃から思っていたTikTok評でマジレスしてしまう。
するとセナは、
「もう、わかってませんねぇ健太郎さんは、こういう時は素直にのってあげないとダメなんですよ?」
とかうざったい事言ってくるもんだから、俺はムキになり
「あのなぁ、俺みたいな男からしたらTikTokとかマジで興味ないンだわ、ああいうのはな、自分がイケてると思ってるしょうもねぇ奴らが楽に世間の注目を浴びようとする陽キャ専用ツールでしかないンだわ、流行りの音楽に合わせて指先動かせば嫉妬も生まずに自分をPR出来るんだからそりゃ楽なンだわっ」
とどこぞやのチャラ男風にいうと、
「あ、最悪……」
とセナ。マジでドン引きした目で俺を見てくる。
よしよし、気持ちいいぜ、浮かれた馬鹿な女が真実に直面して面食らうのをみるのはよ。
ここで俺は渾身のトドメを刺してやろうと意気込みかけるが、ふとハクリューの先程の言葉が脳裏をよぎる。
つまり、俺の正しさと、相手の正しさは違うものだというあの言葉が。
なので俺は、吐き出したい言葉をグッとこらえ、セナの今の感情に目を向けることにした。そして深く考える。
(えーっと、今セナはとても楽しんでいる。それは優子という新たな友人と出会い、共通する今時の趣味を語り合えたから。そしてその感動を何故か俺に語ってきている。俺はいつものようにセナを説き伏せようとするが、ハクリュー曰く俺のこのセナを正そうとする感情はあくまで俺の一方的な願望であり、相手の為になっていない。だから今俺が出来るのは……セナの感情を第一に肯定してやる事。そうなのだ!)
そう感じ、おれは、「えーっと、けど、楽しかったんだったらよかったな……よかったな優子と話せて……」
と自分の主張を抑え気味にセナに言うと、
「……はい……」
とセナから気のない返事が返ってきてしまう。
そして俺も何故か次の言葉が浮かばなくなる……
ーーえーっ……
なんか気まずい。
え、なんだろこれ、なぜだかわからないけど言葉浮かんでこない。
そのまま黙ってるのもしんどいので、
「っで、優子とは他に何を話したんだ?」
と話題転換を試みるのだが、
「別に……」
と素っ気ない返事が返ってくる。
え、なんで?
ハクリューのいう通り自分を抑えたのに……
なんかこれまでにない沈黙が周囲を包み、俺はそれ以上何も言えず、セナはセナで、何か疲れましたといい自信のミニチュア布団の中に入って横になりだす始末。
うわ、すんごい気まずい……
俺はハクリューを睨め付けるとハクリューは、
「どんまいだ、健太郎!」
と強気の視線を送ってくる。
わけわからん……
セナは睡眠につき、俺も仕方なしに部屋のライトを消すが、
おいハクリュー、、自分を抑えれば上手く行くんじゃなかったのかよ!?
今にもハクリューを問いただしたい気持ちを持ちながらもセナの手前なので表には出さず、悶々とした思いを抱えながらベットに横になる俺なのであった。




