再:恋心
そんなこんなで
私は病院のロビーにいる。
お姉さんに始めに会って、少し話をして、それから病室へ向かう。
何を持っていけばいいか、選ぶときから、どきどきどきしていて、
結局買ったものは、
無難に、お花。
ゆうきに
お花なんて
無縁だったのに
どうしてお花なんて持って行っているんだろう。
ドキドキドキ
を通り越して、
ばくばくばく
になっている。
はあ。
テディベアの忠刻も
聞き入れて良かったのか、どうだか、いますごく微妙。
お姉さんは相変わらずお綺麗で、
うちの会社のクチベニもって、
にっこり笑ってもらって、
はいチーズ。
そしたら、
一気に売れそう。
みたいな。
そんな場合ではない。
そして面会。
思ったよりも元気そうで、
確かに痩せていたけど。
ごめん、
5年ぶりに人の前で泣いてしまった。
ゆうきがあまりにも遠い存在で、
それが確定した気がしたから。
いきなり
あやまられた。
浮気が原因で別れたことに対して。
そういえば、あの後とてつもなく彼からの連絡を拒否っていたのは、
この私。
口もききたくなかったし、
好き度がいっきに下がって、
あんなに好きだったのに、
今までのはなんだったんだろうって。
なに今さら謝られてもしょうがないし、
どうしたらいいかわからない。
何を言っていいのかわからず。
言葉のかわりに
涙が出てきた。
謝ったあと、
「ううん、いいよ。」
って言ったら、なんだか、
これからもよろしくね。
っていうことが
文章内の意味合いに含まれていそうな感じもするんだけど。
そのときは、
「ううん、いいよ。」
しか出てきませんでした。
何に対して謝ったのか、
何に対して許したのか、
はっきりわからないけど…
今まで経験したことのないような。
感覚。
あれから彼も
彼女を持たなかったこと。
聞いていないのに、
向こうからべらべら話し出した。
私たちが別れた核心については、
私たちの間では、
暗黙の認知
で
触れてはいけない地雷。
その地雷は、
10分ほど、
わざと私たちで踏み、
そのあとは、
明るい話をした。
「今のゆうきにとって、
一番大切なのは、前向きに考えることなんだ。
病気を受け入れられたから、
そこは大丈夫だから。」
お姉さんから聞いた。
前向き
私はそんなに前向きっ子ではないんだけど。
彼と話していたら、
こっちが勇気をもらった。
ゆうきはぜんぜん元気だ。
仕事がんばれよ。
明日は姪もくるらしいから、みさこもまた来いよ。
最近暑いし、倒れるなよ。
今度、お菓子作ってきてよ。
あの映画みたいんだよな〜。今度、映画みに行こうよ。
大学のそばのカフェ、また行こうな。
彼の言う発言が、
すべて未来に向けてのことば。
幾度となく
あふれてきそうな涙。
彼はずっと未来を見ている。
私は、いままで、5年前の彼を思い出し、
過去を見続けていたことが
ばかばかしくなってきた。
この人はやっぱり強い人なんだ。
どうして、あの時、
彼からの連絡を断り続けてきたんだろう。
あの電話一本取っていたら、
今、どうなっていたんだろう?
ね。
darlingがいる身になった今、
元彼のことは
忘れ去ろうとしていた。
その矢先、
このような形で元彼を思い出す。
これはこれは。
ひょとして。
!!
しまった。
私としたことが。
やっぱり、ゆうきのこと、
今でもとっても好きなのかもしれない。