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独りぼっちの紅い風 ~スモールアドベンチャー第四章~  作者: 山羊太郎
第二章 デスウィッシュ~24区決戦編~
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第八十話

敵キャラ紹介。

 ヘリコプターの音が遠ざかり、静寂が再び24区を包み込むもつかの間、すぐに衝撃音が一角を襲う。


「……くそが、いてぇじゃねぇかよ」


 ヘリから飛び降りたネネが着地したのだ。生身で降り立ち、タイル造りの通路を破壊する。本人は無事だが、辺りは土煙と飛び散った破片で景観を損ねてしまった。

 続けてネネの隣にもう一つの衝撃。彼女を追いかけてきたハナだ。同じく地面がえぐれ、放置した工事現場のようにぐちゃぐちゃになった。


「ちょっと、パラシュートくらいつけなさいよ! 死ぬ気なの!」


 すぐに態勢を立て直すとハナはネネに詰め寄る。


「うるせー、あたしもてめぇも生きてんだからいいだろうがよ。それともなンだ、てめぇはあたしのママにでもなったつもりかよ」

「私はあなたの保護者だからある意味間違ってないわね」


 無い胸を張って自慢げに言うハナを無視し、ネネは一人先に進んだ。目指すは正面にそびえ立つツインタワー。周囲は宿舎程度しかないので拓海がいるとすればそこで間違いない。タワーまで少しだけ距離がある。走れば数分といったところだろう。


「あ、ちょっと待ってよ」


 置いて行かれたハナが慌てて後に続く。ネネは歩く速度が速く、あっという間に離されてしまった。小走りで追いかけ、宿舎の角で立ち止まるネネの横に並ぶ。


「なんで止まって、あ」


 ネネは歩き疲れて立ち止まったのではない。ハナのことを気にして止まったわけでも決してなかった。答えは目の前にある。


「なぁ、ハナ。ここは日本だよな」


 二人の前に広がるのは無数の赤い染み。宿舎の壁に均一に並んだ死体の山は抵抗の痕跡なく、全員が頭を撃ち抜かれて崩れ落ちていた。その全員が恐怖の表情を浮かべ、涙を流していた。


「なぁ、日本ってのはこんな虐殺をやってのける国になっちまったのか」

「きっとここの人間たちの仕業よ。独立とは無関係な人間をこうして処理してる。最悪」


 ハナはいらだちを隠せずにいる。ここでこうして無残にも殺されてしまった人たちにだって本土で待つ家族や恋人がいただろう。ただ仕事でここにきただけだというのに、そう考えるとハナの胸が苦しくなる。


「こいつは妙だと思わねぇか」


 ネネは死体の一つに手をやり調べる。


「みんな銃殺されてる。人造人間がやったのなら能力を使うもんだと思うが」


 ハヴァのように強力な能力を持つ人造人間ならわざわざ重火器を用意するまでもなく、ここにいる全員をまとめて殺害することは簡単だ。ネネはそこが気になって仕方がないのだ。


「それはつまり、人造人間以外に殺しができる人間がいるってこと?」

「ああ、用心しておいて損はなさそうだ」


 そう言って死体から手を放し、タワーへと歩き出す。今度はハナも横に並ぶ。

 丁度、二人は同じことを考えていた。行きのヘリでナナから聞いた、この島の新型人造人間についてだ。

 旧型はそれぞれ識別番号の前にナンバーをつけているが、新型は識別番号の前にタイプをつけて呼ぶらしい。例えばナナはタイプ7。数字と名前が同じなのは特に理由はないそうだ。



 タイプ1。ハヴァ。

 この島の人造人間のリーダー。『空気を操る能力』を持つ。空を飛べるのも能力の一つだ。


 タイプ2。海起みき

 『水を操る能力』。被害を出すことだけに特化した能力を持ち、瞬間破壊力だけなら島で一番だという。


 タイプ3。さい

 『金属の速度を操る能力』。彼が触れた金属は自在にその速度を操れる。それこそ銃弾の如くパチンコ玉を飛ばせるのだ。


 タイプ4。オルビド。

 『消える能力』。ナナ曰く、消えるとはどこまで影響するのか本人以外理解しておらず、詳しくは身内にすらよくわからないらしい。


 タイプ5。ホフマン。

 『加速する能力』。単に足が速いというだけなのだが、瞬時に人間の目では追いつけないほどの速度で駆け出す侮れない能力だ。しかしながらネネとイーズによって数時間前にこの島で死亡した。


 タイプ6。ランヂ。

 『空を飛ぶ能力』。ハヴァの下位互換ではあるが、元来持つ彼の残虐性は、この島の人造人間たちすら疑問を持つほどであった。だが彼も昨夜ネネとハナによって殺害された。


 タイプ7。ナナ。

 新型人造人間たちの中で唯一こちら側の存在。おとなしい性格なのかやる気がないのかわからないが、とにかく無害なのでハナが保護している。彼女は他の新型人造人間の能力を洗いざらい提供したが、自分の能力だけは話さなかった。本人曰く自分の能力が好きじゃないから。ハナは出し惜しみや隠し事が大嫌いなネネが、ナナのことをよく思っていないのはすぐにわかった。たとえ話したくなくても、イガラシクと敵対したくなければいつか話さなければならない。



 確認されている新型人造人間は全部で7名。しかしこれから相対するのは4名のみとなっている。こちらは3人であることを考慮すると決して楽な戦いとはならないだろう。相手が全員まとめて襲い掛かってくるのだけは避けなければ、一網打尽だってありうるのだ。ネネも能力が戻ったとはいえ、本調子ではない。やはり頼れるのは自分自身のみ、そうハナは心の中で思った。


「ネネ、いざとなったら私を置いて逃げてちょうだい。お願い」

「うるせぇよ、あたしは逃げやしねぇ。みんなぶっ殺して前に進むだけだ」

「まったく、あなたって人は」

「本当に逃げないか試してみない?」


 ツインタワーまで百メートルといったところ、聞きなれない声が二人の間から聞こえた。ネネはその誰かの声に向けてためらうことなく、全力で拳をふるう。


 鈍い衝撃がネネの拳に伝わった。手ごたえあり。



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