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第四十九話

ネネVSランヂ始まるよー

「やっぱりテメェも人造人間か」

「伝説の人造人間に会えて幸栄だ。それに、そんな存在を殺せるなんてとてもわくわくする」

「あたしは伝説になった覚えはねぇ」

「自分の価値をわかっていないようだな。お前が長い時間を経て再び表に現れたことは世界中の裏社会が知った。お前を狙う人間は多いぞ」

「だからなんだ、あたしの前に立つ奴らはぶっ殺してやる」

「口の悪さも情報と変わりない。さあ殺すぞ」

「殺れるもんなら殺ってみやがれロン毛野郎」


 ネネと相対する男の名前は『ランヂ』という。彼の仕事は体育倉庫にいる少女『ナナ』を殺すこと、そしてネネを生け捕りにすることだ。だが殺人嗜好のランヂにとってネネは殺す対象にしかならない。間違っても相手を生きたまま倒すという考えには決してならない危険人物なのだ。

 ネネは初期型の人造人間だ。強力な自己再生能力を持っている初期型の場合、この場で殺したところですぐに生き返ると知っているのでなおさらランヂはネネを殺しにかかる。


「死ねぇ!」


 ランヂが駆け出す。彼は人間以上の速度で走るがネネは問題なく捉えている。もし拳を突き出してくればうまくいなして反撃を狙う。

 やはりランヂは拳を突き出してきた。視界が彼の拳で埋まる。ネネは殴られるよりも早く両腕で顔面をガードし、衝撃に備える。


「あ?」


 しかしランヂの姿が消えた。気配は残っている。だが目の前から消えた。


「上か!」


 とっさに上を向くとランヂが片脚をまっすぐに伸ばし、蹴りを繰り出そうとしているのが見えた。垂直に数メートル飛ぶという人間離れした跳躍力に驚いている場合ではなかった。

 ネネは蹴りをうまくいなし、少しだけ距離を取る。


「あれをかわすとは、やるじゃないか」

「遅ぇんだよ。あんなんじゃ誰にも当てたことないだろ」


 着地し、土煙のなかランヂの雰囲気が変わったのがわかった。ネネの挑発がもろに効いたようで睨みつける視線を感じた。


「はっ」


 土煙が縦に動く。ランヂが再び跳躍したのだ。


「また上か」


 再び蹴りが来ると思い上空に顔を向ける。そこでネネは驚愕した。


「おいおいおいマジかよ」


 ランヂは跳躍したのではない。空を飛んでいるのだ。十メートルほどの高さを維持してこちらを見下している。


「どうした? タネも仕掛けもないぞ。これが俺の能力だ」


 ランヂの能力は『空を飛ぶ能力』。自身の高度と速度を自在に調節し、それを生かした戦法で相手を殺す。特殊なエネルギーを使うわけでもなく、原理不明の超常現象による特殊能力だ。


「こっちの攻撃が届かねぇじゃねぇか……」

「その通り。だがこちらは自由に攻撃させてもらう」


 ランヂが急速に高度を落とし、再び蹴りを浴びせるべくこちらに向かってくる。


「やべぇ!」


 速度と威力は比例する。大の大人が数メートルの高さから勢いよく蹴りを繰り出せばその威力は相当なものとなる。普通の人間なら頭が割れるどころでは済まないケガを負うことになるだろう。頭蓋が陥没し、首の骨が折れるのは間違いない。

 だからネネはとにかく攻撃を避けることに専念するしかなかった。大きく前方へ飛び込み、この攻撃は直撃を免れた。


「まだまだぁ!」


 ランヂは威力のあまり大地にめり込んだ足を引き抜き、再び上空へと飛び立つ。

 それから何度も何度も蹴りがグラウンドに穴を作ることとなるのだが、ネネは毎回ぎりぎりのところを必死になってかわしていった。


「クソが!」


 逃げるなどネネ自身のプライドが許さない。それでもネネはこちらから攻撃することができないでいた。イライラだけが募っていく。


「もう楽になれ!」


 ネネいじめに飽きたランヂがそう言うと今までと大きく動きを変えた。地面すれすれまで蹴りを入れ、それがネネにかわされると次に回し蹴りや手で首根っこをつかもうとしてきた。

 上下のみの攻撃が横方向にまで範囲を広げたのだ。いよいよネネにとって不利な状況になっていった。

 しばらくしてランヂはとうとうネネの服の袖を掴んだ。掴まれたネネは暴れもがき、なんとかして逃れようとしたがすでに時遅く、ランヂとともに上空に連れてこられてしまっていた。


「テメ、なにすんだ」

「なにって、リアル高い高いをしてあげようかと思って」

「何言って……」


 ネネが言い切るよりも早くランヂはその手を放す。

 現在の高度は十五メートル。これは決して低い高度ではない。少なくとも人間が落ちていい高さであるはずがなく、ランヂの殺意は全く消えていなかった。冗談や脅しではなく彼は本当にネネを殺す気で手を放した。


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