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独りぼっちの紅い風 ~スモールアドベンチャー第四章~  作者: 山羊太郎
第三章 恋する薄明光線と冷たい天使
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第百二十三話

光明君の恋バナ始まるよー。……始まるんだよね?

「ぷっ、わはははははは!」


 光明の言葉を聞いたとたん、ネネとハナは少しの間固まったが、ネネの方がわずかに早く反応した。


「なんだそれっ! こ、恋! はひっ、俺、恋をしちゃったみたいなんだ……うわははははははっ、ひーっ、ひーっ」


 笑いすぎてネネの息が切れている。ネネがここまで笑うのは初めてだった。自分の笑い方を知れてよかったのか、それともこの程度で笑ってしまって無様であるべきなのか。


「笑うなってば!」

「ごめん、私もちょっと笑った」


 ハナも口元をきつく結んで耐えた。危うくネネ並みに笑いそうだったということだろう。

 耳まで真っ赤にして恥ずかしがる光明が慌てふためく。


「おいハナ! ()()()()()()()()()()()、イガラシクに応援頼んだほうがいいんじゃねぇか?」

「そうかもしれないわね。私たちには手に負えない案件だわ」


 ネネもハナもにやけ面が止まらない。特にネネは恋愛に興味がないと思っていたが、意外にも他人の色恋沙汰になると気になってきた。からかい、いじり、そして楽しい話のネタになれば今日という日はきっと面白い一日になるだろう。


「なんだよ、もう。俺は本気なんだからな」

「で、誰なんだよ。てめぇが好きになった女ってのは」

「待ってネネ。もしかしたら男かもしれないわよ。だって恋なんて人それぞれなのよ」

「なるほどな、俄然興味が湧いてきた。ほら、早く言えよ」


 急だが積極的に話を聞く姿勢の二人を前にして、光明が今更やっぱりやめたなんて言えるシチュエーションではない。もはや彼がこの場から去る方法は一つしかない。それに彼だってその話をするために二人を呼び出したようなものだ。


「ちょっと待ってて」


 彼はポケットからスマートフォンを取り出すとそれをいじり始めた。


「あらあら、もうツーショットがあるの?」

「やるじゃねぇか。そりゃもう好き合ってんじゃねぇの」


 野次をものともせず光明はスマホの画面を二人に見せつける。液晶に映るのは光明とその男友達と思われる数人が自撮りをしている写真だ。河原でバーベキューをしている記念写真だろうか。全員が楽しそうに笑っていた。


「誰だよ。野郎ばっかだしよ」

「やっぱり男がいいってわけね」

「待って、俺は女の子が好きだし。ここを見て欲しいんだ」


 そう言って光明は画面を拡大する。自撮り写真の隅に映り込んだ女が見える。その女は紙皿に乗せた肉を食べている。間違った箸の持ち方が目立っていた。


「なッ」

「…………」


 ネネとハナは驚愕した。その女の顔は決して忘れることのない因縁の存在。こんなところでこの顔を拝むことになるとは、二人はただただ驚くことしかできなかった。背筋に悪寒が走り、ネネは歯ぎしりをし、ハナは深呼吸を一回する。それぞれが冷静であろうとしている。


「この子は俺が代表やってるサークルの後輩でさ、顔が可愛いのはもちろんだし、なんというかミステリアスな雰囲気が気になるんだよね。ってあれ、どうした?」


 緊張が解けてペラペラと話す光明は二人の様子がおかしいことに今になって気が付いた。明らかに先ほどまでと態度が違う。


「あ、いや。なんでもない。顔は美人かもな」

「え、ええ。でも意外な相手ね。運命的っていうか」


 二人の対応の変化に違和感を覚えた光明が何か言おうとしたとき、何者かが彼の肩を叩いた。


「よっす、光明」


 彼は振り返ると数人の男たちがいた。ネネ達もそちらを見る。


「おお、お前らか」


 彼らは先ほど光明に見せてもらった写真の男たちだ。彼の友人たちで間違いない。


「なんだよ光明、俺たちいつも一緒に飯食ってただろ。いないから探しちまったよ。まさか女と飯食ってるとは思わなかったなぁ」


 ネネとハナの二人を見て、光明の友人たちは笑う。悪意のある笑いではなく、彼のことをからかっているだけだ。


「ちょっとね、さっきの授業で一緒だったから飯誘ってみたんだよ。てか邪魔すんなよ。どっか行けよ」


 そういう光明に対して彼の友人たちは声を上げる。やるじゃないか、そういった類のものだ。


「ネネ」


 ハナは小さな声でネネを呼ぶ。二人は目を合わせると席を立つ。


「悪いな、あたしらは行くぜ」

「また今度ノート見せてね、光明君」


 簡単な挨拶を済ませるとネネとハナは食堂から出て行った。あまりにもあっさりした恋の話に光明は少し物足りなさを覚える。


「あ、行っちゃったな」

「お前らが邪魔するからだろ!」


 残された光明は友人たちと食事をすることにした。写真を見たときの二人のあの顔はどこか引っかかるものがあった。


おやおやおやおやおやおやおや

なんだか怪しい感じになってきましたよ。

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