第一話 来訪
男が道を歩いていた。まとう外套は長旅に痛み、裾はやぶれて泥がこびりついていた。ブーツにもたくさんの傷があり、そこに汚れが染みついていた。顔は日に焼け、空腹や疲労のためか、こころなしほほがこけているように思えたが、その瞳は隠しきれない強い意志を宿していた。男は森に挟まれた街道を歩いていたが、その足取りはおぼつかなく、今にも倒れそうだった。最後に食事をしたのはいつだったか。火をおこす道具もなく、夜は冷たい地面に横たわって眠った。
男は限界に来ていた。しばらく歩き続けていたが、やがて道に倒れた。
「くそ、こんなところで・・・・・・。」男は毒づき、立ち上がろうともがいたが、空腹が限界に来ていた。
「は……まさか俺が…空腹で死ぬことになるとは…誰も…思わなかったろう……。」男はそこで意識を失った。
彼が意識を取り戻すと、そこは荷馬車の中だった。
「お、気がついたか。」男の寝ているすぐそばに、兵士が座っていた。
兵士は古くなってくたびれた鎖帷子を身につけており、剣を剣帯からはずしてわきに置いていた。兜をとった兵士は、思ったより若く、少年の面影が残っていた。
「あんた、道に倒れてたんだぜ。」兵士は言った。男は自分が倒れた時の口に入った土の味を思い出した。
「そうか、君が助けてくれたのか。」一人合点すると、どこに向かっているのか尋ねた。
「この馬車はリレバンメルに向かっている。おれはリレバンメルの兵士、ダグダだ。」兵士は片手を差し出した。
「俺はローランドだ。旅をしている途中だ。」ローランドは差し出された手を握った。
「ローランド、どうしてあんなところに倒れていたんだ?」ダグダは尋ねた。
ローランドが口を開く前に、腹が答えを返した。ローランドは苦笑した。ダグダも笑った。
「こういうことだ。三日も食べてない。何か食い物をくれないか。」
「三日も!そりゃ大変だ。ほら、俺のをやるよ。」ダグダは、馬車の隅にあった朝の袋からパンと干し肉を取り出し、ローランドに渡した。ローランドは金を払おうと財布を取り出したが、ダグダはその手を止めた。
「死にかけの旅人から金を取りはしないよ。それより、三日も仕事をさぼってた胃を働かせてやりな。」そして幌馬車から出て行った。馬車は歩くのと同じくらいの早さだった。
ローランドはパンをかじり、干し肉を味わって食べた。空腹は何よりの調味料と言うが、その言葉を痛感していた。もらった食い物をあっという間に平らげると、子供たちがしげしげとみつめているのに気づいた。子供の一人が近づいてきて話しかけてきた。
それからしばらく子供たちと話をして過ごしていると、突然馬車が止まった。次いで、男たちが雄叫びをあげているのが聞こえた。金属がぶつかり合う音がそれに混じる。子供たちや女たちがおびえていると、入り口から男が入り込んできた。
男はダグダではなかった。目は血に飢えており、手には血の滴る剣を持っていた。
「お、こんなところに女がいるじゃねえか。ガキも一緒か。なんでこんなところに男がいやがる。」男はローランドに気づき、刃物をちらつかせた。
「お前は何者だ。」ローランドはゆっくりと立ち上がりながら言った。
「おめえに名乗る必要はねえ、ここで死ぬんだからな!」男はローランドに切りかかった。ローランドは振り下ろす手をつかみ、ひねった。男が痛みに剣を離してしまうと、ローランドはそれを落ちる前につかみ、男の胸をついた。男は心臓を貫かれた。周りの子供と女は今起きた出来事に驚いていた。先ほどの様子では、とてもこの男が強いとは思わなかったからだ。
「外を見てくる。ここから出てはいけないよ。」ローランドはそういうと、幌馬車から降りた。外は戦闘の真っ最中だ。敵は両側にある森から待ち伏せをしていたらしく、護衛の兵士たちも頑張ってはいるが、数で押されてしまっている。このままでは全滅も時間の問題だろう。 敵はローランドを見つけると、数人がかりで襲いかかってきた。ローランドは一度に繰り出された攻撃を転がってよけると、そのまま敵の一人に切りつけ、立ち上がりざまに一人の手を切り落とした。他の奴らがいきり立って攻撃を続けるも、そのことごとくをかわすかあるいははじき、五人の敵をあっという間にやっつけてしまった。その一部始終をダグダが驚きの目で見ていた。
「君は一体・・・・・・?」ローランドはその質問には答えず、ダグダに尋ねた。
「このままでは全滅だ。指揮官はどいつだ?」兵士は当惑しながらも答えた。
「指揮官は最初の奇襲でやられた。今は指揮をとる者はいない。」
「じゃあ今から俺が指揮を執る。馬車を走らせて包囲を突破しろ。兵士は馬車のわきについて護衛、しんがりは俺が務める。」ダグダはあわてて言った。
「しかし、なんで君が指揮を・・・・・・。」ローランドは有無を言わせぬ口調で怒鳴った。
「つべこべ言わずにさっさとやれ!このまま全滅したいのか!」ダグダはローランドの剣幕に押され、大急ぎで仲間に指示を伝えに行った。ローランドは苦戦している兵士を助け、指示を伝えながら後ろの方へと進んでいった。
ダグダは死んだ馬車の騎手の代わりに馬車の席について馬を走らせていた。同僚がダグダに尋ねた。
「お前が助けた奴だろ、あいつ。さっき、俺と仲間が囲まれて窮地に立たされたとき、いきなり現われて、あっという間に全員倒しちまったよ。それで、俺たちに前のほうに行って馬車を守れって。あの男は何者なんだ?あまりに平然と命令するもんだから、はい!とか言って従っちまったけど。」ダグダは答えに困った。
「俺にもわからない。だが、彼に従わなければ、おれたちは全滅するぞ。今は味方だと信じよう。」馬車は森をぬけて広い丘へと出た。ここまでくれば都はもう目前だったが、門はまだしまったままだった。
「おおーーーーーい!早くあけてくれ〜!」兵士たちが大声で叫ぶと、声は届いたらしく、城壁の見張りが走っていくのが見えた。
次々と馬車が入ってくる中、最後の馬車がおくれていて、その馬車が森から出てきたとき、そこにローランドの姿はなかった。馬車が門にたどりついて中に入ってくると、ダグダは馬車を降りて子供たちを下している騎手に尋ねた。
「おい、あの男はどうした。」
「彼か?てっきり後ろにいると思っていたが、いないのか?」その質問には中から出てきた子供たちが答えた。
「おじさんはまだ戦ってるよ。僕たちを守ってくれたんだ。」するとその時、森からローランドが馬を全力で走らせてきた。後ろには敵が大勢押し寄せている。
「いそげ、追いつかれるぞ!」城壁の上にいた男たちが大声で叫んだ。ローランドはそれに気づいたのか、大声で呼ばわった。
「弓兵を城壁にありったけ連れて来い!」男たちは一瞬ぽかんとしていた。
「早くしろ!このまま敵を中に入れるつもりか!」城壁の兵士たちはあわてて弓を取りに走った。ローランドは全力で馬に拍車をかけている。と、急に門が閉まり始めた。
「な!?なぜ門を閉めるんだ」ダグダが門衛に大声で怒鳴った。
「私の命令だ。」すると、背後から背の高い男が現れた。リレバンメルの少将、ヘドルだ。
「どこのだれかもわからん奴のためにこの都を危険にさらすわけにはいかん。」
「しかし、彼は身を呈して我々を守ってくれたんですよ!?」ヘドルはフンと鼻を鳴らした。
「それは奴が勝手にやったことだ。それより物資はどうした。」
「そんな、物資なんか持ってくる暇はありませんでした。」
「ばかめ。これ以上難民を増やしてどうする。必要なのは物資だ。彼らなど放っておけばいいものを。」ヘドルは唾を飛び散らして怒鳴った。
「彼らを見殺しにしろというのですか。」ダグダは大声で抗議した。
「そうだ、そしてあの男もな。」ヘドルは今も全力で馬を走らせるローランドを指した。今にも敵に追いつかれそうだ。ダグダは歯ぎしりした。だが、上官にはむかうことはできず、拳を手が白くなるまで握りしめた。
「今だ、放て!」ローランドが大声で呼ばわった。その合図に応えて城門の兵士たちがいっせいに矢を放った。矢はローランドを敵から引きはがした。門までは数十メートル。
間一髪、馬一頭分の隙間を通ってローランドは都入りした。敵は深追いせず、森へと戻って行った。都では拍手とローランドをたたえる叫び声が巻き起こった。と、ヘドルがローランドに歩み寄った。
「貴様か、勝手に指揮を執ったのは。」拍手はやみ、人々はじっと二人を見た。
「そうだ。指揮官が戦死していて、誰も指揮をとる者がいなかった。緊急の事態だったため、代わりを務めさせてもらった。」ローランドはヘドルに臆することなく堂々としていた。人々は、ローランドのほうがヘドルよりも兵士らしいと思った。ヘドルは高級の衣服を身にまとい、腹が出ていないとはいっても、兵士には見えないのに対し、ローランドは腕や肩にかすり傷を負っており、ほかにも剣や矢による傷と思われる古い傷があったうえ、剣を握る腕や、敗れた服からのぞく筋肉は引きしめられてなお太かったからだ。
「貴様は何様のつもりだ。勝手に指揮をとり、しかも物資を置いていくなど。」ヘドルは語尾を荒くしていった。兵士たちから抗議の声が上がった。
「そいつは俺たちを助けてくれたんだ。」
「そうだ、おれはすんでのところで殺されるのを助けられた。命の恩人だ。」
「彼は自ら進んでしんがりを務めた。彼がいなければ我々は助からなかった。」次々にローランドを支持する声が上がった。
「黙れ下級兵士ども!!こいつは勝手に指揮をとった罰を受けねばならん。貴様らも、反抗するようなら罰を受けることになるぞ。」
周りはしいんとなった。ヘドルは満足そうにせせら笑った。ローランドが口を開いた。
「うれしいか、自分の言いなりになるのが。」
「なんだと?」ヘドルは眉をひそめた。ローランドはたたみかけるように言った。
「上官は第一に兵士をいたわるべきだ。誰よりも無事に戻ってこれたことを喜ぶべきだ。なのに貴様は、その兵士たちを裁くというのか!」
「何を知った口を・・・・・・。」ヘドルがこめかみに青筋を立て始めた。
「彼らが裁かれるというのなら、貴様こそ裁かれるべきだ。」
「なんだと、なぜ私が裁かれるというのだ!」ヘドルは顔を赤くしてどなった。
「お前は馬車が戻ってきたのを見たときに応援をよこすべきだった。もっといえば、この数の村人たちと物資を運ぶのに兵士の数が少なすぎる。あの数では物資か民かどちらかを捨てなければあの場を切り抜けられなかった。もっと兵士の数がいれば、物資も持ってくることができた。これは上官の作戦ミスだ。裁かれるべきは貴様だ!」周りはワッと叫んだ。
「貴様、言わせておけば・・・・・・!その減らず口を今すぐふさいでやる!」ヘドルは腰の剣に手を伸ばした。が、ヘドルがつかむよりも早くローランドは剣をヘドルの首に振り下ろし、刃がふれるところでピタリと止めた。
「死にたくなければ剣から手を離せ。」ローランドが言った。
「貴様こそ・・・・・・。私を殺せば、間違いなく死刑だ。今度は言い逃れはできんぞ。」ヘドルは平静を装っていたが、その声は震えていた。周りはしんと静まり返っていた。
「おやめなさい」凛とした声が響いた。人々が頭を下げ、口々につぶやいた。
「姫さま」
「姫様だ」ローランドはこちらへ歩み寄ってくる女性をちらりと横目で見もせず、しっかりと切っ先をみつめていた。
「剣を納めてください、旅のお方。」ローランドは相変わらず視線を移さず答えた。
「いやだと言ったら?」
「おさめなさい!!」姫は厳しい声で言った。その声は人々を驚かせた。ヘドルでさえ驚いた顔をしていた。ローランドは姫と呼ばれる女性へと目をやった。
「あんたは誰だ。」
「私はこの国の王女、イナメルです。剣を収めてはくれませんか、旅のお方。」
「こいつが剣から手を離したらな。」ローランドは視線を落とした。姫がその視線の先を追ってみると、ヘドルはつかを握ったままだった。ローランドは鞘がないので剣の血を外套の裾でぬぐっていた。
「ヘドル、手を離して。」ヘドルはおとなしく従ったが、敵対心をむき出しにしてローランドをにらんだ。
「先程の非礼をお詫びします。今は戦中の故、兵士も感情が高ぶっておるのです。許してはいただけませんか。」
「あんたが謝ることはない。悪いのは全部こいつだ。」ローランドがヘドルを顎でしゃくった。
「おい、姫様になんて口を!!」周りから怒りの声が上がった。
「よいのです。この方は身を呈して私の民を守ってくださったのに、感謝の代わりに罵倒し、罰を受けさせようとさえしました。非は私たちにあります。」
「しかし・・・・・。」王女はふふっと笑って言った。
「でもありがとう。私のために怒ってくれて。」抗議の声を上げた者たちはうれしそうに礼すると、口をつぐんだ。
「愛されてるんだな、あんた。」ローランドはイナメルをみつめる目線や、そのイナメルと話をしているローランドへの非難と嫉妬の視線を見て言った。
「ええ、それはとてもうれしいことです。民は国の宝ですから。何よりも大事にしなければいけないのですが、戦のために兵を失うのは悲しいことです。」
「国の宝ね・・・・・。皆あんたみたいな考えだったらいいんだが。それより、戦中といったな。しばらくここから出られないのか?」
「はい、残念ながら。この都は三方を山に囲まれており、この正門と、山を抜けるトンネルがあるのですが、背後から襲われないようにトンネルは封鎖してしまったのです。」イナメルは山を順々に指し示し、最後に正門とその反対側の山のふもとを指した。
「くそ、足止めか。」
「申し訳ございません。宿代は私が支払います。しばらくはここにいてもらうことになります。」
「まぁ、仕方ないな。今出てもやられちまうだろうし、おれは恨みを買っちまったろう。宿はどこか教えてくれないか、あんた。」
「あの、私はイナメルといいます。あんたと呼ぶのはやめていただけませんか」王女はいささかムッとしていった。
「そりゃ悪かった。イナメル、案内してくれないか。」イナメルははっとした。
「どうかしたのか?」イナメルは首を振ると、そそくさと言った。
「いえ、なんでもありません。宿はこちらです。」イナメルが歩きだすと、ローランドはあとに従った。群衆もぞろぞろ後を付いてきた。
イナメルはローランドを宿に案内すると、宿主にお金をたくさん払った。宿主は驚いて言った。
「姫様からお金を受け取るなど、しかもこんなに。受け取れません。」
「よいのです。彼に温かい食事とベッドを。」そしてローランドのほうを向いて言った。
「せめて滞在中はゆっくりして行って行ってください。ええと・・・・・・。」
「ローランドだ。」
「ローランド様。今日はありがとうございました。皆を守ってくださって。」
「ローランドでいい。こっちこそすまないな、宿代を払ってもらって。ちょうどすっからかんだったんだ。」ローランドは自分の財布をたたいた。かすかな金属音すらしない。王女は口に手を当て、上品に笑った。
「いえ、これくらいでお礼になるのなら。近いうち、食事に招かせていただきます。では、また。」そういうと、イナメルは宿を出て行った。そして、入り口からたくさんの兵士やら町民やらがわんさか入ってきて、宿はいっぱいになった。
「何者だあんた。」
「すげえ強いよな。」
「姫様とたくさん話やがって。くそ〜、うらやましい!」ローランドはあっという間に囲まれてしまった。
「おやじ、今日は宴会だ!旅人に感謝と歓迎の宴だ!みんな、飲むぞー!」おおーと声を合わせる人々。宿は人でいっぱいとなり、人々はローランドをねぎらった。
「あんた、どこから来たんだい。」
「ボルデナ。」ローランドは天井を見上げて言った。
「ボルデナ!大陸の端じゃないか。どうやってきたんだ。」
「まぁ、歩いたり、たまに馬車に乗せてもらったりしてな。」ローランドは苦笑した。
「あの剣技はなんだい?」一瞬答えに詰まる。
「旅していくには金がなくてな。時々護衛やらやって旅費を稼いでたんだ。」
「なにしにこっちへ?」今度はほんとに固まった。
「……借りがあるんだ。返さなきゃならない借りが。」ぼそっと暗い声で答えた。だが、酒が入っている人々にはローランドの無表情ながら、見る人を恐怖させる怒りをにじみだしている顔に気付かなかった。
「今日は助かったよ。」となりに男が腰かけた。それはダグダだった。
「助けられたのはこっちの方だ。」
「君は用心棒もするのかい?」と、ダグダは尋ねた。
「金がないときはな。」
「この戦、手を貸してくれないか。」ダグダは真剣な面持ちで言った。
「俺一人でも雇わなきゃいけないほどなのか。」ローランドは質問に質問でかえした。ダグダは声をひそめて言った。
「ああ。ここの連中も口には出さないが、このままでは負けるだろう。手を貸してはくれないか。報酬はたっぷり払う。」ローランドはしばらく考えてから答えた。
「悪いが断るよ。戦に手を貸すと、相手の国に恨まれる。相手の同盟国とかにも目を付けられちまうと、厄介だ。そうでなくても、俺はさっき何人も切っちまったからな。」ダグダは肩を落とした。
「そうか、残念だ。」
「すまないな。力になれなくて。」ローランドは心底すまなそうな顔をして言った。
「いや、いいんだ。ダメでもともとだと思っていたし。ただ、今日の君の活躍を見て、仲間になってくれればこれほど頼りになる奴はいないと思ったんだ。」
「買いかぶりすぎだ。おれは大した人物じゃない。」ローランドはテーブルに視線を落とした。
「そんなことはないさ。君は俺たちを救ってくれたんだ。」ローランドは居心地悪そうに身じろぎした。
「そういえば、相手はどこなんだ。」
「あれ、そういえば言ってなかったか。コーンウォールだよ。」ローランドはすごい勢いで立ちあがった。
「コーンウォールだと!?」ローランドの大声に、酒場は静まり返った。
「あ、ああ。どうかしたのか?」ダグダは戸惑いながら答えた。ローランドはしばらく立ち尽くしていた。周りがざわめき始めた。突然、ローランドはテーブルに足をかけると、長椅子に立てかけていた剣をとり、手の中で回転させてテーブルにつき立てた。
「前言撤回だ。用心棒の件、引き受けさせてもらう!」ダグダは一瞬状況が理解できなかったが、やがて興奮していった。
「ということは、手を貸してくれるんだな!?」
「ああ、この戦、俺が勝たしてやる。どんなことをしても勝たせてやる!」酒場から歓声が上がった。ローランドは笑みを浮かべていた。酒場の者は誰にも気づかなかった。ローランドの目に復讐という名の暗い炎がらんらんと輝いているのを。