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破壊神が異世界を救うらしい  作者: 優勝者
Ⅰ 雷少女は悪魔か否か
11/13

011 キサルニアの策略 後編

 真っ白な部屋の真ん中で自分まで真っ白になって立ち尽くすギアスにアリスはまたクスりと笑った。


「ついこの間まで人間として生活していたのだ。驚くのも無理はない」

「今の、オレの能力って、風、でいいのか?」

「ん?」

「いや、前に少しだけスカイに見せてもらったんだ。スカイは風を操ってて、それに似てた気がしてさ」

「貴様のは風ではない。それに、正確には貴様のものでもない」

「えっ、どういうことだよ」


 アリスは眉間にシワを寄せ、どう説明しようか少し逡巡した。


「貴様はあの能力を使った覚えがないだろう? それは、貴様は何者かに体を操られていたからだ。胡散臭いようですまないが、光を操る私には、魂の光も感じ取ることができる。普通なら1つの肉体に1つの魂しかないのだが、貴様からは2つ感じる」

「え、エエッ!? お、オレ、取り憑かれてるってこと?」

「取り憑かれていると言っても恐らく守護霊の類だ。だからあの時貴様を守ったのだろうよ。これについては、まだ何とも言えん。ただ貴様の体が今、そういう状態にあるということだけ理解してくれればそれでいい」


 確かにあの黄色い少女を追い払ったのが守護霊の仕業なのだとすれば説明がつく。信じられないが、これまでももう信じられないことだらけだったのだ。ギアスは深く考える気にもなれず、もうそういうことなら仕方ないと諦めた。


「なるほど。とりあえず、オレは守護霊に守られてるわけだな。それであの時の能力も守護霊のものだったってことか。なら、結局オレの能力って何なんだ?」

「そこなのだ。ひとまずここまで来るまでの出来事に謎を抱えたまま難しい話をしても可哀想だから先の話をしてやったが、準備はいいか?」

「……ああ」


 ギアスはゴクリとツバを飲んだ。部屋中に響いた気がした。


「時間は貴様の母親の頃に戻る——」


 ギアスは先ほどアリスが自分の母親と親睦が深かったと呟いてからずっと気になっていた。やっと彼女の話が聞けると、思わず両手に拳を握った。



○○○○



 翌、昼過ぎ。

 ギアスはギラデアに案内され、スカイとフィジー、シフォンと一緒に列車に乗り、キサルニアの外れへやってきた。

 道中の西洋を思わせる美しい街並みもギアスは全く見向きもしなかった。異世界の風景にあれだけ高鳴っていた胸も静まり、まるで燃え尽きたような顔で終始一言も喋らず、この墓地に到着した。

 とても広い芝生の原っぱが視界いっぱいに広がって、大人くらいの丈の十字架がいくつも規則正しく並んでいた。

 雲ひとつない青空と芝生の黄緑の爽やかさを死んだような目で見つめながら、ギアスは昨日のアリスの言葉を思い出していた。


《貴様の母親の名はディスティ。ある戦闘部隊に所属し、超がつくほどのエリートとして長年にわたり活躍していた。しかし、あるときの遠征で深手を負い、……息を引き取った。貴様はまだ幼い頃、母親と過ごした記憶が薄っすらと残っているかもしれない。それはこのシャングリラで彼女と生活していた日々のものだ——》


 どれがディスティの墓の十字架なのかは遠くからでも一目で分かった。その十字架だけは木製の他とは違い、銀で作られ、一回り大きく立派に、墓地の中心に立てられていた。ギアスは早くおいでと呼ばれている気がした。

 それまで繋いでいたシフォンの手も離し、一人歩み出し、次第に早足になり、無我夢中で駆け……、ディスティの十字架の前に膝を折った。


「……ディスティ、ゲーテル……、ハウル。ここに——」


 地面に伏せられている大理石の石板にはその後に、眠る、と続いていた。

 ギアスの爪に砂が入る。彼は手を震わせながら土を握りしめていた。


「……どうして、どうしてだよ、母さん。……ここ数日、信じられないことばっかりだったけど、これが、一番、信じられねぇよ!」


 叫び、石板に額を押し付け、土を握った拳で地面を叩いた。

 失踪した母親はどこかで生きていて、またいつか感動の再会を果たす日が来ると願っていた。だがその夢は、もう、叶わないのである。

 今日一緒に来てくれた四人は気を遣ってか、誰も追いかけてこなかった。ただ静かに夏風がさらさらと芝を撫でていき、何も知らない小鳥たちがさえずり、雲が遠くから流れてきて影を作るようになり、暗くしては明るくして、暗くしては明るくした。こらえても溢れた涙も、いつまでも流れ続けない。ギアスは目元を拭ったらその場にだらりと背を丸めて正座し、疲れ果てた目で石板を見下ろした。


《生前、ディスティは私宛に遺書のような手紙を残していた。「もし、自分が死ぬことがあれば、ギアスは孤児になる。そのときはどうか安全に、密かに育ててやってほしい。できることなら寂しくないように、友達も与えてほしい。それが私の、唯一の願いだ」と。だから、私はディスティの死後、ギラデアに指示して貴様をスカイやフィジーと共に人間界へ送ってもらった。これが、貴様がこのシャングリラで産まれておきながら人間界で人間として育てられることになった、経緯だ。また、ディスティは貴様宛にも一言、墓石に刻んでほしいと手紙に綴っていた——》


 ギアスは石板を見下ろしてすぐにそのアリスの言葉を思い出した。石板に刻まれた母親の言葉は、次のようだった。


——私に涙を見せるな。お前は男として産んだし、泣くなと言い聞かせていただろう。それに、私はいつかきっとお前の前に蘇る。再会するときには、泣き虫は卒業しておけ。お前がこの石板を読む頃にはおそらくもう大きくなっている頃だろうしな。泣いている暇も立ち止まっている暇もない。自分の時間を犠牲にしてお前の周りにいてくれている者達を、敬え——


 まるで今この瞬間をどこかで見ているようだ。

 石板の文字は読み終えるとひとりでに赤い電気火花が散り、石板ごとぼろぼろになってもう何が書いてあったのか分からなくなってしまった。

急展開だったかもしれません。

すみません。

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