序 「ユグの種子」
あなたが、愛の歌を欲するのは、杯が、器が、満たされていないからだ。
世界が、平和の歌を求めるのは、「国境」、「カテゴライズ」という名の切創が未だ癒えず、赤色の体液を絶えず湛えているからだ。
まるで、眠っているかのように…。
私が。あなたが。歌を必要としない時。
それが救済…。それこそが安息…。
「そんな世界。なくていい。」
そう云う、あなたに、告ぐ。
あなたの心が、もしも、私で満ちたなら…。この言葉も伝わる筈だ…。きっと。きっと…。
「ユグの種子」
見間違いなら、それで良かった。
だが、エリザは笑ったのだ。現前と。
そして、暫時の間も置かず、私たちに投げ掛ける。
何故か、と。
何故?
貴方方は、星の歴史において、
何人も、到達し得なかった地所に立つのに…。
何故?
それでも貴方方は、破滅の道を着実に歩む。
あと、ほんの数㎝踏み出せば、回避し得る惨劇の道を…。
寸分違わず辿ってゆく…。
「女神」は、私達が狼狽する他ないと知っていた。
もういいの!!
其れを「運命」と呼ぶか、「愚かさ」と呼ぶかは、貴方方に委ねます…。
その先に起きる事象に変化はないのだから!!
エリザの、高く、乾いた笑声が「嘲り」なのは、明らかだった。
だが、我々は、事、此処に至っても、自らを「変革」出来ず、立ち尽くしている…。
リサ・N・ウィンターズ