第5話_小口大喰
「さて、これで飯にありつけるか、、銅貨7枚でたらふく食える飯屋ってある?」
月夜の明るい日に、側≪はた≫から見れば独り言を言ってるボロボロで外見も心も痛い人になってしまっている男のが1人。 その男は小嶋といい、大絶賛この世界へ召還されてばかりである。
((答えるのがめんどくさい。しらん。
勝手に西の方に行ってろ))
悪態をつきつつ、さらりと教えてくれるこの声の持ち主はノゾミ。 正体不明だが、小嶋の精神に語りかけてくれている。
気は難しそうだが、根は優しいのかもしれない。
とりあえず支持された方に足を進めると、、フォークとナイフが交差された絵が彫られている看板があった。中から明かりが漏れ、ワイワイと人々の会話が聞こえてくる。
おそらく、ここで食事にありつけるだろうと、小嶋は店の暖簾をくぐった。
「いらっしゃいーー」
店の奥から元気のいい声が飛んでくる。
中を見ると、酒場らしい。
武器を持った無骨な集団から、白いローブで顔を隠してる者、多数の女を侍らせた男など、、多種多様なグループがそれぞれ丸テーブルを囲み酒を飲み食事をしている。
とにかく、空いているテーブルに座ると、エプロンをつけた可愛い店員さんがやってくる。
「いらっしゃいー!ご注文は?」
メニューも手元になく、何を頼んでいいかわからない。あたふたしているとノゾミが
((料理はおまかせでいいじゃないか、めんどくさい))
さらっとアドバイスをくれる。
「じゃ、じゃあ、銅貨7枚でなるべくお腹が膨れるやつを頼む、、」
小嶋はアドバイス通りに注文を丸投げした。
「そうなるとー、、キッシュでいいかな?
今は冷めてるけど温め直すし、量もサービスしちゃうよ!」
そう笑顔で言うと、店員はすぐさま厨房へ戻る。
..
..
少しすると
「おまちどうさまー! キッシュとサービスでコーンスープをどうぞ!これで銅貨7枚ピッタシ!」
温められて湯気の立つキッシュとスープが目の前に並ぶ。
丸1日何も食べてない小嶋にとって、匂いを嗅ぐだけで自制ができない。
「い、いただきますっ」
熱いのも気にせずキッシュにかぶり付く。
口の中でその旨さが広がる。これは間違いなく人生で1番美味い。 普段は少食で、1度に少しづつしか口に運ばない小嶋だったが、こらはもう、手を止めることが出来ずそのまま一息に全てを食べてしまった。
「あぁ、、美味い、、、」
そう声を漏らすと店員はにこやかにその場を後にした。
........
...
.
「ふぅ、、、」
スープも全て平らげ、小嶋は満腹感に満たされている。
「ねえ、美味しかった?」
少し時間が経ったからか、店の中の客はまばらになり、先程料理を運んでくれた店員さんが暇になったのか話しかけてきた。
「はい、ありがとうございます。美味しかったです。」
本当に心の底から美味しいと思ったことがそのまま顔にも出てたのか、その返事を聞いて店員さんも気分を良くする。
「それは良かったよ〜、ところでそれ、どうしたの?」
そう言うと、店員さんは小嶋の右手を指差した。
「あ、これですか、、、これは、、」
「あ、言いづらいならいいよ、、無理しないでさ」
言いづらそうにする小嶋を察したのか、店員は深く聞くことをやめた。
「んー、、、と、、 私ミランダ。この店の1人娘なんだけどね、よかったらまた食べに来てね」
くるりとその場で1回転して、ミランダは笑顔で、少しだけバツが悪そうに厨房へ戻って行った。
(( お前、ああいうの子が好みか??))
「そんなんじゃねえよ!!」
急に声をかけられ少しビクッとする小嶋だが、いきなり好みを聞かれ照れ臭そう答えた。
((ふんっ!まぁ知ったことじゃないな))
少し不機嫌そうにノゾミはそう言うと、本題を切り出して来た。
((んで、、だ、、。この後どうするんだ??))
その問いにすぐに答えられず、小嶋は少し考えてしまう。
(どう、、か、、明日も生き延びれるかわからないのに、、どうすればいいんだろうか、、)
今後の生活はまったくもって暗闇である。
今日だって野宿確定であるし、明日は食事にありつけないかもしれない。
「まず、明日を生きなきゃ、、か、、」
明日のことを考えると頭痛くなる、、、